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Last Revised: August 5, 2016



 東京都知事選の結果に思い出したことがある。
 「インド版東京都知事、デリーの州首相はフツーのおばさんである」というコ ピーを添えてシーラ・ディークシトを日本の雑誌に紹介したことだ。
 ビジュアル系雑誌のインド特集で見開き2ページに、当時の日本では知られざ る「現代インドのトップ著名人」を数名、写真つきでピックアップした企画ペー ジで、他にはアミターブ・バッチャンやサチン・テーンドゥルカルなどを挙げた が、彼らは今でも日本では無名に近い。さらには、今では対インド・ビジネスの 常識になったアンバニ財閥のムケーシュとアニルの兄弟も当時はごく一部でしか 知られていなかった。
 雑誌の発行は2006年、ちょうど10年前。石原慎太郎都知事の全盛期(?)で、 後任都知事が短命政権で次々と交代することや、オリンピック招致、まして女性 都知事が実現する将来を想像していなかった。その06年当時、シーラ州首相はす でに2期目、10年近いキャリアを維持していた。

 シーラ・ディークシトは今年78才のベテラン政治家である。パンジャーブ州出 身で、デリー大学で歴史を学んだ。1980年代から下院議員となり、国民会議派の 有力政治家として各種役職を歴任。デリー州首相は1998年から2013年までの3期 務めた。急拡大する都市規模とそれ以上の勢いで増大する諸問題によく対応し、 任期中にコモンウェルス・ゲーム(イギリス連邦スポーツ大会)を実現した。イ ンドの政治家の中では比較的クリーンな存在で、メディアによる政治家評価ラン キングでは常に上位の存在で、政権末期まで地元の支持率は高かったが、国民会 議派の汚職、腐敗体質に大きな逆風が吹いた2014年の選挙で庶民党に敗れて引退 した。
 夫が上級官僚だったので、シーラ女史自身も官僚から政治家に転身したのだと ずっと思っていたが、この世代のインドの高カースト・高学歴女性にありがちな パターンなのだが、彼女は結婚して大学院から家庭に入っていたらしい。政界進 出のきっかけは夫の父。独立運動の活動家であり、当時は会議派の指導層に名を 連ねる政治家だった。この義父を支える形で政治経験を積むうち、インディラ・ ガンディーの目に留まった。デリー州首相時代、自宅ではごく普通の主婦である という話が伝えられていたが、実像として「フツーのおばさん」と言う表現はあ ながち誇張でもなかったのである。
 インディラ・ガンディー首相から現役ではママタ・バネルジーやジャヤラリター らの州首相にスシュマー・スワラージ外務大臣、等々。本当の要職を託される女 性政治家が少なくないインドだが、同時に、彼女たちは立場に比例するかのよう な華麗な経歴や他を圧倒する外見も伴っている。そんな中でシーラ州首相の良家 のしかし地味目のおばさん感は異彩を放っていた。しかし眼光の鋭さ、スピーチ などから感じられる断固たる意志の強さ。会議派の敗北に連座して地位を去った 後も、デリー市民に「前任者(シーラ)の方がよかった」と後悔させた(後継政 権と後任人事は何かと紛糾しデリーを混乱させた)力量は、フツーではなかった のである。
 そのシーラ女史がこのタイミングで、インドでも再注目されている。来年に予 定されるウッタル・プラデーシュ州の州首相選に会議派の候補として出馬するこ とが決まり、UP州内の遊説に乗り出したのだ。今や80才近い年齢、有力州とは いえデリーという都市とは大きく異なるUP州の政治事情。同州で長らく低迷す る会議派は、到底勝てるとは考えていないから体裁を保つ捨て駒として担いでい るだけではないか、という憶測が飛び交う中、州首相時代から手を抜かなかった 自宅のガーデニングの手を止めても出馬した真意は何だろう。

 インドと日本の政治や社会構造の違いはあるが、都知事選挙戦中に対立候補の 陣営から出た「厚化粧のオバさん」発言や、「女に都知事は無理だからから殺す しかない」という理由の襲撃予告とか…、男尊女卑は日本と比較にならないほど 酷いと考えられているインドだが、逆にこんな見解は表に出そうもない気がする。 何らかの形で社会構造の上位に立つ女性は「女だから」という理由では攻撃され ない。
 「女のくせに」という評価が避けられない日本の女性政治家は、スタートライ ンで学歴・前歴では男性に負けない条件を揃えなくてはならない。政治家になっ てもパフォーマンスが低ければ、まず「やっぱり女はダメだ」と判断される。イ ンドの女性政治家には、シーラ女史のように政治家の親族出身で、これといった 自身の経歴や社会経験がないまま政治に参入する例はめずらしくない。それでも その環境から、リーダーシップを発揮し周囲からも力量が認められる政治家が育っ てくる。階層社会で必然的に育つ、あるいは付託されるようなリーダーシップ (しばしば権力欲に結びつくと批判される)は日本には馴染まないのかもしれな いが、インドに約20年遅れて登場した女性都知事に「女だから」がまず出る論議 だという状況に、シーラ・ディークシトを思うのであった。



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 月刊「インド通信」2012年2月号で通巻400号となりました。
 (400号:301号〜399号掲載原稿目次号(100円)、300号:1号〜299号掲載原稿目次号(150円)をお分けしています(郵送料別途実費)。関口までメールでお問い合わせください)


1.最新号の目次

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2016.8.1発行、第454号


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・新刊情報
・南アジア地誌事典 第229回 「フィールドとの距離 甥っ子の「晴れ舞台」と電子メディア カンヌール」 (竹村 嘉晃)
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