wabisabiland interview

Anthonello



アントネッロ

interview with Yoshimichi Hamada

 アントネッロの存在を教えてくれたのは、マリンバ奏者の北澤恵美子さんでした。おもしろい音楽をやっている友人がいるからと『天正遣欧使節の音楽』のCDをいただいたのです。
 古楽のCDはそれまでにもいろいろ聞いたことがありましたが、端正過ぎる歌や演奏が多く、最後まで興味を持てたアルバムは10枚に1枚もありませんでした。ところがアントネッロのアルバムには、それらとはちがって、ぼくがふだん聞いているような世界各地の音楽と地続きの感覚があり、たちまち好きになってしまいました。
 その後、北澤さんに紹介していただいてリーダーの濱田芳通さんに取材できることになり、さっそく文京区のお宅にうかがってきました。
 アントネッロは1994年に結成された古楽アンサンブルで、これまでに多数のアルバムを発表し、国内外で高く評価されています。メンバーは次の3名ですが、アルバムやコンサートではゲストを迎えることも少なくありません。
 濱田芳通 コルネット&リコーダー
 石川かおり ヴィオラ・ダ・ガンバ
 西山まりえ チェカバロ&ハープ

 音楽一家に生まれた濱田さんは、小さいころからクラシック音楽に囲まれて育ちました。その中で小学校5年生のときブラスバンドのトランペットにはまり、中学ではルネッサンス音楽に出会って、リコーダーを吹くようになりました。桐朋音楽大学で18世紀のバロック音楽を学んだ後は、ヨーロッパに留学して中世とルネッサンスの音楽を専門的に研究しました。


濱田 バロック以前の音楽というと、重箱の隅みたいな印象を受けるかもしれませんが、楽譜の残っているものが11、12世紀あたりからなので、バロックまで7〜800年もあるわけです。その歴史は18世紀から現在までよりはるかに長い。だからひとくちに古楽といっても、スタイルはすごい多様なんですよ。

 といきなり目から鱗が落ちるような話が。言われて見れば、まさにそのとおりです。バロック以前は素朴な音楽ばかり、西洋音楽史のつけ足しのようなもの、などと一括して片付けるにはあまりにも長い時間の蓄積があります。
 人々の日々の暮らしや思いや感情は当時も現在も基本的には共通しているところが多いはず。現代人の耳にはともすれば微小に感じられるバロック以前の音楽の差異も、当時の人々には、そのつど時代の変化を象徴するような大きなものだったことでしょう。


濱田 昔は文化はシルクロードつながりだったと思うんです。地中海に面した南のほうに文化があって、北方のゲルマン民族は最後まで野蛮人だった(笑)。ところが北方で3度の和音が発明されたんです。南のほうでは3度はきれいな和音とは思われず、ドとミの組み合わせは不協和扱いだった。ところが15世紀後半に、北のフランドル地方やブルゴーニュ地方で3度の和音が協和音よりかっこいいということになった。で、それをまぜた即興演奏がビートルズ並にすごいヒットして(笑)、南下してきたんですね。
 音楽は即興がからむと、最初はその民族しかできないので、北方で生まれた人がフランスやイタリアに行って教え、インターナショナルなものになっていった。フランドル楽派やブルゴーニュ楽派というんですが、それがなければ、ヨーロッパの音楽もアラブ音楽とそんなに変わりなかったんじゃないでしょうか。14世紀までは弦楽器のリュートもフレットレスでしたし。

 とこれまたびっくり仰天の発言。しかし、古楽のCDも曲の年代をさかのぼればさかのぼるほど、北アフリカや西アジアの音楽に雰囲気が似てくるというぼくの記憶とも合致するので、すぐに納得しました。以下、近年のアルバムについて、いくつか話をうかがいました。NEXT

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