夏維的読書録×あ行

浅倉卓弥我孫子武丸綾辻行人有栖川有栖岩井志麻子歌野晶午浦賀和宏小栗虫太郎小野不由美小野正嗣
浅倉卓弥
「四日間の奇跡」で第1回「このミステリーがすごい大賞」の金賞を受賞しデビューした期待の新人.
四日間の奇跡
君の名残を
我孫子武丸
8の殺人
0の殺人
メビウスの殺人
綾辻行人
新本格といえば綾辻行人,綾辻行人といえば新本格というように,新本格を代表する作家.デビュー作の「十角館の殺人」は”大トリックが残っていた”のキャッチコピーで静かに世を出た.既にこの作品から新本格の新本格たる所以を醸し出している.「十角館の殺人」から始まる館シリーズは現在6作目まで刊行済み.7作目は連載を終えて現在加筆修正中である.また,ホラーにも優れた作品を多く残している.
十角館の殺人
水車館の殺人
迷路館の殺人
人形館の殺人
時計館の殺人
黒猫館の殺人
暗黒館の殺人
有栖川有栖
新本格派の作家とひとくくりにされる場合が多いが,作風はきわめてオーソドックスな王道を行く本格派である.「江神探偵シリーズ」と「火村教授シリーズ」があるが,内容的には「江神探偵シリーズ」が本格としてかなり勝っていると思う.加えて青春小説の趣もあるので2倍楽しめる.長らく新作が出ていなかったが,そろそろ出そうである.両シリーズで作者と同じ名前の有栖川有栖がワトソン役を務めている.両者の関係は両シリーズを読んでいけば自ずと明らかになっていく.
月光ゲーム
孤島パズル
双頭の悪魔
岩井志麻子
trai cay チャイ・コイ
歌野晶午
長い家の殺人
白い家の殺人
動く家の殺人
ガラス張りの誘拐
死体を買う男
さらわれたい女
ROMMY
正月十一日、鏡殺し
ブードゥー・チャイルド
放浪探偵と七つの殺人
安達ヶ原の鬼密室
生存者、一名
世界の終わり、あるいは始まり
館という名の楽園で
葉桜の季節に君を想うということ
浦賀和宏
記憶の果て
彼女は存在しない
ファントムの夜明け
小栗虫太郎
黒死館殺人事件
小野不由美
 黒祠の島
小野正嗣
水に埋もれる墓
にぎやかな湾に背負われた船
 
四日間の奇跡(浅倉卓弥)
癒しと再生のファンタジーミステリー

 この小説に出会えたことが奇跡かもしれない・・・,そう思えるほどの感動を与えてくれた作品.しかもこれが氏のデビュー作である.挫折した音楽家の青年と脳に障害を持ったピアニストの少女の二人が織りなす物語は最終章に向かってどんどん加速していく.最後の方では時間が止まって欲しいと願うほど,なのに,最終章はやってきてしまう・・・.主要な登場人物はこの二人に療養所の職員の岩村真理子を加えた3人.この3人にどんな結末が待っているのか最後まで読めなかった.僕の予想は裏切られたが,心に暖かい物が残るラストだった.この物語の本当の主人公は岩村真理子ではないかと思う.ほとんどすべての登場人物は彼女と結びついている.彼女の人となりがこの物語の屋台骨であり,作者がもっとも書きたかったものではないだろうか.

君の名残を(浅倉卓弥)
時空ファンタジー

 歴史的に見てよく知られた話を用いて物語を紡ぐ,その困難な課題をうち破って新たな歴史物語をここに誕生させてしまった作者の手練れは非常に高い.前作とはうってかわって平安末期の源平動乱の時代を舞台に,分かり切った歴史をなぞる運命を押しつけられた主人公たちがどのように生きたかを書ききっている.前作よりも感動という点では物足りなさが残るが物語の構成力は格段に進歩してる.

0の殺人(我孫子武丸)
新本格ミステリー

 我孫子武丸の新本格作品の最高傑作はこれでしょう.タイトルの意味を知ったとき,思わずやられた!と思いました(^-^;.この遊び心が新本格の神髄.

十角館の殺人(綾辻行人)
新本格ミステリー

 新本格の旗手,綾辻行人の記念すべきデビュー作.当時大学生で海外の本格推理に傾倒していたσ(^-^;)が国内の本格物を読むきっかけになった作品.たまたま実家に帰って隣町のデパートの本屋に行って見かけて手にしただけなんだけど,運命って恐ろしい.登場人物が記号化されているので感情移入しにくく読みにくい作品であったが,この作品では作者がそれを意図したかどうかは不明であるがそれが大いなるミスリードになっている.
 フェアーかアンフェアーか議論が分かれるだろうが,この驚愕のラストで明かされる大トリックはまさに新本格の幕開けにふさわしい物であると断言できる.

時計館の殺人(綾辻行人)
新本格ミステリー

 綾辻行人の最高傑作は間違いなくこの作品だろう.このトリックは前例が無く歴史に残るべき物である.作品中に散りばめられた大胆な伏線を見破れる人はいるのだろうか?よくもまぁこんなことを思いついたとうならされた作品である.曲者揃いの館シリーズにあって,珍しいくらいの直球一本勝負なトリックをメインに据えた作品である.

暗黒館殺人(綾辻行人)
新本格ミステリー

 昔,綾辻さんから直接次の作品のタイトルをお聞きしてから10年以上の歳月を経てようやく読むことが出来ました.質,量,共に館シリーズの最高傑作といって間違いないでしょう.この作品は6作品目までを読んでから読むことをオススメします.そうすれば面白さ10倍,かつ心地よく騙されるでしょう.しかも,驚愕のラストは館シリーズを読んでいなければ驚愕には成り得ない面もあります.とにかく長い長いこの作品,ノスタルジックな気分にも浸れること請け合いです(^-^)b

月光ゲーム(有栖川有栖)
本格ミステリー

 有栖川有栖のデビュー作.サブタイトルは”Yの悲劇’88”とはなんとも魅力的である.この作品を読んでもわかることであるが,トリックよりもロジックという作風である.恐るべきはデビュー作にして文章も作品の構成もうまいということ.冒頭の噴火のシーンから作品に引き込まれてしまった.この作品は英都大学の推理小説研究会の面々が大活躍する江神探偵シリーズの第1作でもある.ミステリーとしても優れた作品であるが,青春小説の趣も多分にある.このシリーズでは有栖の恋愛模様がいいアクセントになっている.噴火により陸の孤島と化した山中で起こる連続殺人.限られた登場人物のだれが犯人なのか?すべての材料がそろったとき,”読者への挑戦”が叩きつけられる.σ(^-^;)には解けなかった謎・・・.
 物語のラストはほろ苦く締めくくられた.このときからσ(^-^;)は有栖川有栖の呪縛にはまってしまったのかもしれない.

孤島パズル(有栖川有栖)
本格ミステリー

 「月光ゲーム」の続編.英都大学の推理小説研究会に待望の女性メンバー麻里亜が加わった.その麻里亜の伯父が所有する孤島が今回の事件の舞台である.前回に引き続いて外界から隔絶された舞台での連続殺人を扱っている.まさにミステリーの王道!有栖と麻里亜が孤島の沖に漕ぎ出すシーンはムード抜群である.全編に散りばめられたこの二人の掛け合いだけでも物語を楽しめてしまう.

trai cay チャイ・コイ(岩井志麻子)
官能小説

 岩井志麻子といえばホラーと思っていたが,この小説は官能小説でした.意表をつかれた感じです.官能小説には不要といわれるかもしれませんが,物語の起承転結があまりないというか,起伏が乏しいのはちょっと読んでいて寂しい感じがしました.

長い家の殺人(歌野晶午)
新本格ミステリー

 歌野晶午のデビュー作であり,新本格度の高い作品でもある.はっきり言って文章はへただし,トリックもかなりばれやすい類ではあるが,前例が無いだろうこのトリックは良く思いついたなと関心してしまう.そしてそれ以上にこの時点で無名の歌野という才能を拾い上げた島田荘司の慧眼に感服する.

葉桜の季節に君を想うということ(歌野晶午)
本格ミステリー

 すっかり騙された作品.どこかで騙されてるんだろうなと思いつつ,それがどこかわからないまま読み進めていって,最後の最後で”あ〜”とうならされてしまった.なるほど,そういうことですか.でも,これはやっぱり騙されちゃうでしょ.伏線はしっかり張ってあるけど.真相を見抜けた人がいたらすごいよ.このタイトルも読み終わってから見るとかなり意味深ではある.ただ,このタイトルからいくら考えても騙されることは間違いないからあんまり気にしない方がよいかも.

彼女は存在しない
本格ミステリー

 浦賀氏の作品の中ではもっともミステリー然とした作品.騙されないように慎重に読んでいても騙されてしまった.ライトな語り口に精緻な構成で浦賀氏の新境地をかいま見た気がする.

ファントムの夜明け
本格ミステリー

 「彼女は存在しない」に続いて再びミステリ的な作品.モノローグは近未来のSFのような設定を思わせたが,妙な緊迫感のある文章で綴られるホラータッチのミステリーで,ラストは確かに切ない大どんでん返しの幕切れ.何下に油断してたら騙されました.

黒死館殺人事件(小栗虫太郎)
本格ミステリー

 私が国内ミステリーの最高峰を極めたと考えている作品.衒学趣味が甚だしく,それが災いして読み進めにくい作品でもある.かくいう私もこの本に関しては4回目の挑戦でようやく最後まで読むことが出来た.そして最後までたどり着いたモノにのみ驚愕の真相が明かされる.
 これほどまでに大仰しい謎また謎に対してこれだけきちんとした形で解決が提示されるとは途中では思いも寄らなかった.破綻しているように見えてミステリーの部分に関して言えば端正なそして本格の名に恥じない作品である.この作品が戦前に書かれたものだとは信じられないくらいに.これを読まずして日本のミステリーを語るなかれ.

黒祠の島(小野不由美)
本格ミステリー

 小野不由美というとファンタジーとかホラー系の作家という印象だったが,本作は紛れもないミステリーであった.読みながら,獄門島の舞台というか撮影に使われた島に行ったときのことを思い出した.タイトルや表紙の黒色からもっと禍々しい話を想像していたが,どちらかと言えば,非常にクラッシックで端正な印象が後に残った.連続殺人の謎解き以外にでは,意外な結末というか,最後の場面も印象的だった.新本格に通じる感性を感じる.また,ミステリーを書いて欲しいな.

にぎやかな湾に背負われた船(小野正嗣)
小説

 実に不思議な小説というか,つかみ所のない話であった.記憶が記憶を呼び起こし,少しずつある湾内の人と人とのつながりが浮かび上がってくる.過去と現在が入り交じって同時進行で話が進んでいくので気を緩めてると話の筋が入り交じってしまう.熱に浮かされたような文章のようでありながら,吐息がっこえてくるようなリアルな感触も併せ持つ小説である.