夏維的読書録×さ行

佐々木丸美佐藤正午重松清篠田真由美島田荘司島本理生殊能将之白石一文
佐々木丸美
雪の断章
忘れな草
花嫁人形
佐藤正午
ジャンプ
重松
ビタミンF
篠田真由美
琥珀の城の殺人
祝福の園の殺人
島田荘司
異邦の騎士
龍臥邸幻想
島本理生
生まれる森
殊能将之
ハサミ男
美濃牛
黒い仏
鏡の中は日曜日
樒/榁
子供の王様
キマイラの新しい城
白石一文
不自由な心
僕の中の壊れていない部分
ジャンプ(佐藤正午)
恋愛小説

 恋愛小説の名手による待望の最新長編と銘打ってあるが,作品は重苦しいというか,あまり楽しい話ではなく,どちらかといえば暗い話である.登場人物に嫌な奴が多く,それがちょっと入り込めない原因かも.
 作品の構成自体はミステリーと言っても良いものである.

ビタミンF(重松清)
家族小説

 直木賞受賞作である本作品は,子供を持った父親の悲哀というか苦悩のお話集だった.読んでいて,家族を持つことが逆に怖くなってしまうのは僕が臆病だからだろうか?親の気持ち子知らず,子供の気持ち親知らずとうのはいつの時代も真理.世代が時代が違うモノ同士の相互理解はなかなか難しいのかもしれない.

琥珀の城の殺人(篠田真由美)
推理小説

 篠田真由美というと建築家探偵シリーズが有名だが,私は創元社で出版された本作を含む外国を舞台にした本格推理小説の方が好きである.なにより純粋に本格推理と向き合っている作風が良いと思う.

異邦の騎士(島田荘司)
推理小説

 島田荘司の処女作でありながら,発表の機会に恵まれず後に第25番目の作品としてようやく日の目を見た作品.「占星術の殺人」と1,2位を争う人気作である.記憶をなくした男に降りかかる厄災.彼は一体誰なのか?とびっきりの謎と驚愕の真相が待ってる.初めて書いた作品で既にこれだけの不可解な謎の提示と合理的な解決を結びつける構想力を発揮していたことに島田荘司の才能を再確認した.

龍臥邸幻想(島田荘司)
推理小説

 龍臥邸事件の続編.島田荘司ならではの,不可解な謎と合理的?な解答の醍醐味を存分に味わうことが出来る作品.龍臥邸事件から8年の歳月を得て再び起こる殺人事件.そこには深い悲しみがあった.伝説の魔王が奇跡を起こす!
 もう,トリックというか,この作品のネタに関しては驚愕天地爆裂級の内容で,島田先生の筆力がなかったら書ききれないと思う.

生まれる森(島本理生)
恋愛小説

 野間新人賞受賞作である本作品は,日常的な出来事をさらりと書いた恋愛小説もどきな話.淡々と進んで行き,す〜っと終わってしまうため,非常に物足りない.じゃぁ,何がいいたいの?と作者に問いかけたくなった.

ハサミ男(殊能将之)
推理小説

 メフィスト賞受賞のデビュー作.いわゆるシリアルキラー物だが,すっかり騙されてしまった.まさかこんな仕掛けが待っていようとは.

美濃牛(殊能将之)
推理小説

 殊能の最高傑作はこの作品だと思う.作品の雰囲気も登場人物もどれをとってもちょっと枯れている感じが素晴らしい.メインの仕掛けは,こんなのあり?って代物だけど,その発想はまさに奇想天外奇妙奇天烈で一発ノックアウトをかましてくれる.デビュー作と同じ作家とは思えないほど作風を変えている,この人はただ者ではない才能の持ち主である.

キマイラの新しい城(殊能将之)
推理小説

 750年前の亡霊が語る殺人事件と現実に起こる殺人事件.この二つの謎に自称名探偵の石動が挑む.挑んでいるが・・・.今回も「黒い仏」で見られたブラックな部分がちょっと顔をのぞかせている.アントニオっていったい・・・.今回も真の名探偵水城が登場します.が,私が殊能さんに求めているモノはもっと高いレベルなのです.

不自由な心(白石一文)
短編小説集

 連作短編集である.いつも通り,急に話が終わるのが白石さんらしい.どれも後日談がありそうな話ばかりである.
「天気雨」
 さらりと不倫話.で,男の方から見てすごく都合のいい女が登場する.ちょっとうらやましいのかも.
「卵の夢」
 中年男の癒しと再生の話.
「夢の空」
 堰き止められていた想いがあるきっかけで一気にあふれ出す話.ちょっと胸が熱くなった後にブラックな幕切れはちょっと意表をつかれた.金親さんって結構好みな性格かも.
「水の年輪」
 私だったら耐えられないだろうなというブラックな結末が待っている話.末期癌で幾ばくもない命を自分の為だけに使おうとした主人公の行動とは・・・?
「不自由な心」
 文体とか話の筋は全然違うけど村上春樹の「ノルウェイの森」を思い出した.

僕の中の壊れていない部分(白石一文)
長編小説

 なにげに手に取った本だが,なかなか面白かった.最初はつかみ所が無く,どんな話かよくわからなかったが,最後まで読むとかなり深い小説であることがわかる.主人公は一般常識からは逸脱した性格を有しているが,それでも人を引きつけてやまない魅力を放っている.壊れていない部分は何だろう?壊れてることを自覚しているようにも見える主人公の言動,行動は期待を裏切り続けてくれる.散文的に展開する出来事の中で,人と人とのつながりやその他普段何気なく見落としている重要なことを自らに省みさせる小説である.