警察大学校跡地開発計画でいう中野区の「産業活性化」について検証してみよう
このコーナーで、なぜこの問題をとりあげるようになったかは、「中野駅周辺まちづくり計画」に言う「産業活性化」とは、どういうこと?で書いています。
すなわち、もともと中野区が警察大学校跡地をもともと公園にしない理由を財政問題に求めることには理屈の上で無理がありました。しかし、だからといって「産業の活性化」で大規模開発を理屈づける点にも無理があります。その点を、はっきりさせる必要がありました。工場跡地、公有地をなどをつかった大規模開発をすすめる自治体は、どこも「まちの活性化」「にぎわいの創出」などが決まり文句です。
情報関連ビジネスは、新設企業も多いが、淘汰されていく企業も多い
中野区は、事業所の統計分析をどうしてしないのだろうか。ここでも、問題提起したが、1300万円も出して委託調査させた三菱総研さえも、ふれていない。
区長が「まち活性化戦略」といったなかで、産業の発展をめざすとして例示した情報関連ビジネスは、事業所統計を見れば、一目瞭然だが、新設事業所も一番多いが、淘汰される事業所も一番多い産業であるということを知っているのだろうか。従って、「区民の雇用拡大」といっても必然的に雇用も不安定になる。自ら調べるのが、面倒であるというなら、こちらを参照してもよく分かる(6/14頁参照)。
情報関連ビジネスは、それ自体は産業の発展に欠かせない分野であっても、非常に不安定であり、情報ビジネスを必要とする基盤産業の発展あっての産業であるという視点が必要だということだ。それを、はっきりさせずに「産業の活性化」と何回言っても、始まらない。
既存商店街の売上げを奪いかねない大規模商業施設の誘導は、だれからの要望か
商店街活性化にしても、「都市計画マスタープラン」と矛盾する、警大跡地・区役所周辺への大型商業集積施設を、あえて導入しようとする意図がわからない。いったい、だれからの要求なのだろうか。
中野通り、サンモールを中心に商業施設が集積していながら、警大跡地・区役所周辺に大規模な商業集積施設を導入することが、既存商業施設の売上げを犠牲にしかねず、既存商店街の存立基盤と競合しかねない。また、消費者の限られた財布の中味を、既存の商店街と、奪い合いになりかねない。そうした大規模商業施設をあえて誘導しようとの要望が、どこから出ているというのか。
三菱総研報告書のグランドデザインにしても、あちこちに誘導しようとする商業集積施設を、だれが望んでいるかとの分析はない。おまけに既存商店街の売上げへの影響の分析もない。委託調査経費1300万円は区民の税金であるのに、区民が受けるこうした痛みの影響分析を、あえて避けたのは、どういうことか。
市場経済下で、市場を管理??
集積すべき産業として、その構想を描いているが、市場経済の下で、ある産業を誘導するために市場を管理できるというとでもいうのだろうか。経済として矛盾することではないのか。(もちろん、異常な大企業野放しの弱肉強食社会にルールをつくり効率的な経済運営をするということは当然ありえることだが。)その誘導しようとする産業自体も、その根拠がよくわからない。中野というまちが、ものづくりの大田区、国際ビジネスの港区などと、肩を並べるようなまちに誘導することが、経済社会として求められているのだろうか。単に、多くの住民税など税収を望んでいるだけだとうなら話は別だが。
仮に誘導するとすると、そのためのインセンティブあたえるために手法が、取られることになる。それは、一例として三菱総研は、「行政によるインセンティブの付与」として、いくつかの事業を想定しているようだが。その税金の支出はどう見ているのか、さっぱりわからない。
また、民間による施策なのかハッキリしないが、「中野産業プロモーション」「街区への目標産業導入計画」「中核企業、取引連鎖企業の候補設定」「分野別集積プロセス計画」など様々な手法が書かれている、利権と裏腹のきわどい誘導策を、構想しているようだ。
くどいようだが、市場経済下で、一方では何らかの力で青写真の実現に向けて経済を管理しようとでもいうのだろうか。
どうして中野区が元気になるの?
中野区の構想が描く「中野が元気なまち」の状態の主人公はだれなのでしょうか。
たとえば、既存の商店街でがんばっている店主さんたちでしょうか。それとも、新たに誘導しようとしている大規模商業施設の社長さんたちでしょうか。大型商業施設は進出も早いが、儲からないとなれば撤退も早い。売上げは本社に行ってしい、地元に落ちない。いつも振り回されるのは、どこでも地元商店街だ。それを「元気な中野」と描くというのだろうか。
多額の税金を投入して民間大手コンサルへ調査委託を繰り返しながらつくられる「まちづくり」構想の一方で、区民参加のまちづくりを軽視する。そんな「まちづくり」が成功するのだろうか。
<資料>
2006年2月17日 中野区議会 区長所信表明
まず、「まち活性化戦略」です。
警察大学校等跡地は、活用方法によって中野区を大きく発展させる可能性を秘めており、現在そして未来の中野区民の大きな財産です。中野を元気で生き生きとしたまちにしていくためには、産業を活性化し、人々の活動と文化を生み出すことが不可欠です。中野駅周辺は、区全体の活性化を牽引する業務・商業や都市型居住、文化発信、防災広場の機能などを集積し、東京を代表するまちの一つとして、多くの人々が訪れ、交流する拠点となることを目指す必要があります。平成18年度は、具体化に向けて警察大学校等跡地地区の地区計画の決定を目指します。
また、IT・コンテンツ産業など情報関連ビジネス、人材サービスなど、多様な都市生活のニーズに対応した産業の発展を目指しています。こうした都市型産業の集積は、区民の雇用機会を拡大するとともに、新たな産業の創造、商業や文化の活性化につながります。区は、これらの産業の立地のための必要な施策を実施していきます。
地域商店街は、売り上げの減少など依然として厳しい状況にありますが、地域で生活する高齢者や子育て家庭などのニーズに対応できる地域商店街は今後なくてはならないものであり、区は地域コミュニティの核としての商店街の活性化を支援していきます。
中野区は、「中野の地域環境に適合する都市型産業の動向を把握するとともに、中野区内への立地環境・区内産業を調査し、区内立地を促進する施策を導きだす」ことを目的に、「中野区産業環境基礎調査」の受託事業者の募集を開始した(2006年4月3日)。
ただし、中野区はそこで言う「都市型産業」の定義を明らかにしていない。では、にわかに調査を開始する「都市型産業」とは何か、どんなことをねらっているのか検証してみたい。
東京都は「都市型産業」という言葉を使ったことはあるか?
2002年8月の東京都中小企業対策審議会答申では、「都市型ものづくり」という言葉を作り出したが
近年は、製造業においても自社では研究・開発や企画、設計に止め、製造はアウトソーシング(外部委託)する「ファブレス企業(注2)」が増加している。またデジタル化が進む印刷業では、ホームページの作成などを請け負う企業が増え、ソフトなものづくりとの垣根がなくなってきている。このような製造業は、ソフトなものづくりと同様、市街地に事務所を開設し、都市の特性を生かしながら成長できる「都市型ものづくり」と言えよう。
東京において都市型ものづくりを育成するには、東京にある様々な産業や大学、研究機関、情報の集積、豊富な人材などを活かしていくことが必要である。研究開発型の新産業が東京に創出され、それが生産に結びつけば、経済効果は全国に波及する。研究開発型の新産業としては、情報通信や生命科学、環境・エネルギーなどの分野が期待でき、それらを支える技術として、ナノテクノロジーやバイオテクノロジー、光技術などが重要である。また、東京のものづくりの発展のためには、東京の魅力や特性を活かして、外資系企業も含め企業を誘致することも必要である。
国は「都市型産業」という言葉を使っているか?
中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、都市の中心の市街地が地域の経済及び社会の発展に果たす役割の重要性にかんがみ、都市機能の増進及び経済活力の向上を図ることが必要であると認められる中心市街地について、地域における創意工夫を生かしつつ、市街地の整備改善及び商業等の活性化を一体的に推進するための措置を講ずることにより、地域の振興及び秩序ある整備を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。(定義)
第四条 この法律において「都市型新事業」とは、中心市街地に集まる一般消費者等の多様かつ高度な需要に即応して、新商品の生産若しくは新役務の提供又は商品の生産若しくは販売若しくは役務の提供の方式の改善を行う次に掲げる事業であって、中心市街地における事業の構造の高度化又は国民生活の利便の増進に寄与するものをいう。
一 主として一般消費者の生活の用に供される工業製品の製造又は加工の事業
二 役務をその媒体である物の提供を通じて提供する事業
中野区自身は使ってきたのか?
「産業ラーニングシティなかの」・・・“学習する都市”、“学習する人々が活発に展開する創業や経営革新”、“人材と情報を基盤とする新たな産業分野が発展をリードする都市”といった内容を表現したものであり、「人材と情報」の有効活用の促進によって新たな産業づくり、まちづくりをめざそうとするものである。・・・・・・中野駅周辺には様々な事業所が集まり産業集積の中心となっており、交通利便性がよく市場性も高いことから、起業する際にも適している。多くの事業所が集まるこの場所に大学などの教育研究機関があれば、連携が創出されやすく、共同での技術開発による新たな成長産業の誕生も期待される。
どうも、想像するに、警察大学校跡地に進出する高層ビル群に「都市型新産業」として、新事業を営もうとされる方、施設を運営する方などの引き合いを調査するのが目的のようだ。また、中野区は、まるで警察大学校跡地の大規模開発をすれば、産業が活性化するという構図らしい。
あるいは、まさか進出するデベロッパーに成り代わって市場調査をして、安心して開発してくれということではないだろうな。過去には、こんなこともあったからな。
あなたはどう分析しますか?
都内23区の中小企業、商業など産業振興に関する条例制定状況について
中野区など7区に条例がありません。
区名
中小企業、産業、商業関連の条例の有無
千代田区 中小企業振興基本条例 中央区 中小企業の振興に関する基本条例 港区 中小企業振興基本条例 新宿区 無し 文京区 商店街の振興に関する条例 台東区 中小企業振興に関する基本条例 墨田区 中小企業振興基本条例 江東区 無し 品川区 無し 目黒区 中小企業振興基本条例 大田区 産業のまちづくり条例 世田谷区 産業振興基本条例 渋谷区 新たな商業振興のための条例 中野区 無し 杉並区 商店街における商業等の活性化に関する条例 豊島区 無し 北区 無し 荒川区 産業振興基本条例 板橋区 産業活性化基本条例 練馬区 産業振興基本条例 足立区 経済活性化基本条例 葛飾区 中小企業振興基本条例 江戸川区 無し 各区のホームページより見たものですが、もし見落としがあればご連絡ください。
中野区の当初予算に占める商工費の比率が激減したのは2003年度予算から
田中現区長が就任したのは、2002年6月。2003年度予算からは、田中区長が編成したものです。
商工費の当初予算に占める比率の推移 (商工費/目的別当初予算計)%
年度 23区計 中野区 2001 2.0%
1.5%
2002 1.9%
1.7%
2003 1.9%
0.4%
2004 1.8%
0.5%
2005 1.7%
0.5%
(特別区統計情報システムの普通会計目的別歳出当初予算より作成)
2006年2月17日 第1回中野区議会定例会区長施政方針説明
まず、「まち活性化戦略」です。
警察大学校等跡地は、活用方法によって中野区を大きく発展させる可能性を秘めており、現在そして未来の中野区民の大きな財産です。中野を元気でいきいきとしたまちにしていくためには、産業を活性化し、人々の活動と文化を生み出すことが不可欠です。中野駅周辺は、区全体の活性化を牽引する業務・商業や都市型居住、文化発信、防災広場の機能などを集積し、東京を代表するまちの一つとして、多くの人々が訪れ、交流する拠点となることをめざす必要があります。平成18年度は、具体化にむけて警察大学校等跡地地区の地区計画の決定をめざします。
また、IT・コンテンツ産業など情報関連ビジネス、人材サービスなど、多様な都市生活のニーズに対応した産業の発展をめざしています。こうした都市型産業の集積は、区民の雇用機会を拡大するとともに、新たな産業の創造、商業や文化の活性化につながります。区は、これらの産業の立地のための必要な施策を実施していきます。
地域商店街は売上の減少など依然として厳しい状況にありますが、地域で生活する高齢者や子育て家庭などのニーズに対応できる地域商店街は今後なくてはならないものであり、区は地域コミュニティの核としての商店街の活性化を支援していきます。
事業所数、従業者数の推移 事業所・企業統計調査報告より
1999年 2004年 事業所数 従業者数 事業所数 従業者数 23区合計数値 580,531 6,319,406 538,602 6,456,600 2004年/1999年
93%
102%
中野区 15,536 112,397 13,796 107,657 2004年/1999年
89%
96%
杉並区 21,827 154,144 20,621 154,551 2004年/1999年 94%
100%
「中野駅周辺まちづくり計画」に言う「産業活性化」とは、どういうこと?
「中野駅周辺まちづくり計画」には、「区民の雇用の機会の拡大にもつながるような産業の集積、産学連携や譲歩受発信機能を発揮する大学等研究機関の立地を誘導し」とか「IT,コンテンツなど都市型産業の創出や新規創業を促進するとともに、既存産業の経営革新をすすめることにより、新しい時代の要求に十分応えられる新たな産業集積を図ることが必要である」「中野区全体の産業の活性化を推進する必要がある」・・・・と、いろいろ書いてあります。
この内容について、どう理解するかがテーマです。
しかし、その前に、なぜ、ここで、この問題を取り上げるかという説明をしなければなりません。
05年4月23日の「区民参加で中野を変える会」(3年前の区長選で田中区長の選挙母体となった団体)がありました。区長も参加していました。
ここで、警大跡地についての質問がだされ、田中区長は、 「国は一日も早く売りたいといっている。 中野区が買うかどうかは中野の判断に任されている。 中野区が財政的に厳しいから買えなくて民間に売却するのではない。 買おうと思えば買える方法はある。 大事なのは跡地をどう使うことが区民の将来にとっていいのかだ。 国から押し付けられていることではない。 私が跡地で期待することは、将来の中野のために大学をつくる、住宅をつくる、そのことで人が増え、経済活動を活発にすることが大切。区民の雇用が増えることも必要。 また、人が増えることで、人口の構成が変わっていくことも必要。」(参加者にそう受け取れる発言要旨)との発言でした。
多くの区民は、これまで、警大跡地については、中野区が経済的に大変だから買えないので民間に売却する方向だと、区の説明から思わされていなかったでしょうか。しかし、区長の説明が、財政問題よりも警大跡地の開発が、「産業の活性化」「中野の将来のため」ということを強調するようになってきていると思う区民の方がおられるようになったからです。
公園にすれば法律上も、また都の方針からいっても、警大跡地は無償貸与できるわけですから、もともと公園にしない理由を財政問題に求めることには理屈の上で無理がありました。
そこで、民間に売却し、民間の開発業者が利益を得る方向にするためには他の理屈が必要になり、もっともらしい理屈が必要になってきたと言うことでしょうか。それとも、開発によって、区がかぶる負担が思った以上に大きくなって、今のうちに「将来のための投資」などという理屈に方向転換しておこうといういうことにでもなったのでしょうか。
いずれにしても、「産業の活性化」という中野区の理屈が成り立たないことをはっきりさせておかなければなりません。
そもそも、中野区は産業の活性化に力を入れてきたの?
中野区のHPには、中野の予算についての2004年度予算の添付資料がこちら@に掲載されています。2005年度予算が、こちらAに掲載されています。
まず、@の最初のページの下段のグラフには「中野区一般会計当初予算目的別歳出内訳の推移(平成15年度以前)」となっています。中野区が上記のように「産業の活性化」というために使うお金は、このグラフにでている「産業経済費」になるのでしょうか。私には、2003年度まで見る限り、増えているようには見えません。これまで、中野区の産業育成のためにどんな努力をしてきたのでしょうか。その行政努力にたいしてどういう総括をされたのでしょうか。
次のページには、2003年度と2004年度の比較グラフがでています。「産業経済費」というまとめ方で比較ができませんが、「産業の活性化」の予算がはいっている「区民生活費」を比較すると減少しています。
2005年度予算については、Aを見ますが、予算の編成方針、予算の特徴、歳出などをところを見ても、とくに、「産業の活性化」につながるような文言はでてきません。13頁の「区民生活費」のところに、具体的な事業と予算額がでていますが、「区民生活費」は、04年度、05年度ともに、前年と比較すると減少しています。
次は、当初予算を紹介した区報を見てください。下記に一覧にしてありますので、クリックしてください。産業活性化等にかんする事項を説明した見出しをタイトルとして抜粋しておきました。
「中小企業」、「商店街」という文言が、最近になってからは消えてきました。右手に「中野駅周辺まちづくり計画」をかざして、「産業の活性化」は強調するけれど、左手では既存の商店、工場への支援は、もう限界だから切り捨てるということですか。「雇用の機会の拡大」についてだって、たとえば、2003年度末に、区立保育園の非常勤保育士28名全員を解雇《再任用拒否》していませんか。警大跡地の新しい産業集積に努力して、既存の産業と競争させることが産業が活性化するという考えですか。そして、また「限界だ」となったら切り捨てていくのですか。あっちでいうことと、こっちでいうことが違いすぎませんか。わかりやすく区民に説明していただかないと、「中野駅周辺まちづくり計画」の言う「産業活性化」と、既存の商店、工場の活性化の関連が全く分からないというのは、私だけでしょうか。
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