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グローバル時代の企業経営

平成171月22


目   次
T.変わる経営目的
U.日本企業の環境変化
V.グローバル化がもたらす日本企業への影響
W.求められるグローバル経営 【1】株主価値創造経営
【2】会計ビッグバンが目指したもの
【3】これからの企業業績評価
X.まとめ

T.はじめに 変わる経営目的

企業の存在意義と経営目的は何か。
企業とは経済主体の1つである。社会に財(モノ)と役務(サービス)を提供する唯一の主体である。それともう一つ、雇用を提供する主体である。企業の存在意義はこの2つである。
企業は社会に不可欠なこの2つを提供するために、事業活動を通じて「利益」を出して存続し続けなければならない(ゴーイング・コンサーン)。これが経営の目的である。
経営手法は、時と共に刻々と変わろうとも、この経営の目的と企業の存在意義は不変であった。

しかし平成不況の後半、21世紀に入ろうとする頃、グローバルな経営環境の大変化に伴い、経営目的に画期的な変化が顕れた。
一連のニュートレンドを一言で表すと「株主価値創造経営」。
この株主重視経営は、事業活動の目的を「利益」に置かず「株主へのリターン」に置くという、経営の目的そのものを変えてしまったところが極めて画期的であり、今までとまったく違う時代が来たといえる。
目的が変われば当然に経営手法も見方も判断も評価も大きく変わる。
株式非公開の中小企業においても、世の中の企業評価基準が変われば取引先や融資銀行の評価も変わるから決して無縁ではない。

U.日本企業の環境変化

1.世界市場のボーダレス化

1989ベルリンの壁崩壊、同年米ソによる東西冷戦終結宣言。
政治の壁が取り払われると経済の壁も同時に取り払われ、世界市場がボーダレス化した。
これにより企業環境は世界企業間の大競争時代を迎えることとなった。
あらゆる産業と
,産業の枠を超えて巨大企業同士の合併・提携・買収など、グローバルな統合・再編が想像を超えるスピードと規模で進んだ。

2.IT革命の進展

1990年代、IT技術とその普及は飛躍的に進んだ。
日本では
1995Windows95の発売がインターネット時代の到来を強く印象付ける出来事であった。
IT技術の目覚しい進歩は、時空を超えて世界中のあらゆる企業、個人、規模、業種、業態を問わず、新しいビジネスモデルを創り出し、アライアンスを組むことを可能にし、グローバルネットワークを通じた競争と協調の時代をももたらした。

3.金融の自由化・グローバル化

バブル崩壊後、日本の金融市場はその影響で取引量が激減した。
同じ頃、外国からの参入に対する様々な規制や障壁、ローカル基準の企業決算のため「日本市場は使い勝手が悪い」と評判が立ち、 次々に東京市場に参入していた外国金融機関が撤退していった。
この「東京市場の金融空洞化」に対して、日本の金融市場をロンドンやニューヨーク並みの国際金融市場に発展させようと、199611月、当時の橋本首相により「日本版金融ビッグバン」が宣言された。
金融ビッグバンは、@フリー、Aフェア、Bグローバルの3つをテーマに金融制度改革を行った。主な改革の内容は(1)対外的な金融規制を撤廃(フリーでグローバル)、(2)国内会計制度の国際基準化(フェアでグローバル)であった。

4.会計のグローバル化

金融ビッグバンの一環として国内会計制度のグローバル化を目的に、「国際会計基準」の導入が決定された。
これをきっかけに会計業界に起きた大きな会計制度変革のうねりは「会計ビッグバン」と呼ばれた。
会計ビッグバンで改革された主な制度は次のとおりである。
連結決算 グループ企業全体の決算を作成、開示する。
キャッシュフロー計算書 現金収支の報告書も作成、開示する。
退職給付会計 将来の退職給付債務を費用計上する。
税効果会計 税負担の決算書の影響を各年度均等化する。
時価会計・減損会計 資産を時価評価する。
この一連の改革は20003月より順次施行され、20063月で総仕上げとなる。

V.グローバル化がもたらす日本企業への影響

1.多様化する資金調達手段 〜間接金融から直接金融へ〜

金利の自由化が進むにつれ、投資家は利回りに敏感となり、従来の預金中心の運用から、証券投資を重視するようになってきた。
これを受けて企業の資金調達も銀行借入(間接金融)から、直接金融へとシフトしてきた。
日本の金融市場をグローバル・スタンダードな金融市場にしようとしたのが、金融ビッグバンであった。
その金融市場から資金を調達しようというのであるから、日本の企業はグローバル・スタンダードなビジネスプロセスを構築することが当然に求められることとなった。

2.変わる株主構成

資金調達方法はこのように間接金融から直接金融へシフトしてきた。
直接金融とは株式や社債を発行して、投資家から資金を集めることである。
投資家から見れば株式を購入して株主になることであり、この流れの中で株主構成は、従来のメインバンク、グループ会社、取引関係会社のいわゆる「持合い株主」が中心だったものが、個人、機関投資家、外国人投資家へ徐々にシフトし、持合い株式の解消に拍車がかかっている。

W.求められるグローバル経営

1】株主価値創造経営

かつて大株主であった持合い株主は、投資にリターンを求めていなかった。
主に企業グループや取引関係先との持合いは、親会社社員の雇用確保、事業上の互恵取引、安定株主工作などを主な保有目的としてきた。
だから経営者は株主へのリターンを重視することなく、利益を追求していればよかった。ひとことで言えば、「安定継続経営」が達成されていれば良かった。時には利益より何より「銀行からの継続融資」が一番大事であった。
しかし、純投資家が株主の多くを占めるようになれば、投資の目的は本来のリターンである。経営者は経営の目的を「会計利益の最大化」から「「株主リターンの最大化」に置かざるを得なくなる。そういう会社にしなければ資金調達が困難になるからである。
こうした株主構成の変化によっておのずと求められてきたものが、株主の利益を重視する「株主価値創造経営」である。
「株主価値」とは「株式」の価値である。
株式の価値とは「株価」と「配当」である。
「株主価値創造経営」とは株価を向上させることを目的とする経営である。
それでは株価は何が原因で上下するのか。
株価は、買い手の数と売り手の数で決まり(買い手が増えると株価は上がる)、買い手の数はその株価の上昇期待感の大きさで決まる。
市場でその銘柄が「将来値上がりしそうな株」と評価されれば買い手の数が増えて株価が上がる。

「将来値上がりしそう」とは、提供する商品・サービスが、将来、今より、売れるであろう・流行るであろうという予感である。
この予感を分析評価する主な視点は次のとおりである。
成長性 企業業績が順調に伸びており、将来も伸び続けるであろうと予想される。
安全性 財務体質が優良である。借入金が多すぎない。キャッシュフローがよい。
悪い事件、スキャンダルのない会社であり、現在も悪い噂話がない。
技術力 特殊、優良な技術を保有している。過去に画期的な発明があった。研究開発に熱心である。
企画力 良い商品、ヒット商品を出しており、将来も出し続けるであろうと予想される。
先見性 時代のニーズに合った業種、業態、経営手法、サービスを取り扱っている。
話題性 ファッション、トレンド、社会貢献、環境保全等人々の興味をひくようなニュースや商品を発信している。
従来の経営目的は、利益を出して安定継続させることであった。
これからの経営目的は、株主価値の向上であり、そのための視点は、自社の株を、市場で買いたいと思うような優良株にすることである。
そのための具体的な手法は次のとおりである。

1.付加価値創造経営

投資家はリターン(株価値上がり益と配当)を期待して企業に投資する。
仮に投資した企業の決算で最終利益が黒字であったとする。しかし株主へのリターンが投資額と同額を預金した場合の利息額より少なかったらどうだろうか。
これで経営者は黒字だと言って胸を脹れるだろうか。

経済利益=会計利益−株主資本コスト(株主期待収益額)

経営の目的は利益を黒字にすることでは足らない。株主に期待収益額を与えてなおかつ黒字としなければならない。そうでなければ株主は投資資金を引き揚げるだろう。
この経済利益(エコノミック・プロフィット)を広義で付加価値ともいい、経済利益を目指す経営を付加価値創造経営、EVA経営などと呼ぶ。
また、会計上の利益は合法的に粉飾が可能であることから、利益ではなく、(株主に還元するための)キャッシュの極大化を目指した経営をキャッシュフロー経営といい、これもまた付加価値創造経営の一つの手段である。
さらに経営とは株主から預かった資本を元手に事業を行って収益を上げるものであるから、ROE(株主資本利益率)、つまり資本効率の向上が最重要であるということでROEの向上を目指すものをROE経営といい、これもまた付加価値創造経営の一つである。

2.CSR(企業の社会的責任)

(1)CSRの意義
企業はステークホルダー(利害関係者)に配慮した経営を行わなければ順調な経営は行えない。大口得意先や融資銀行に対して配慮を欠いた政策を採ったら企業はいっぺんに傾く。
このステークホルダーに配慮した活動をCSR活動、重視した政策を採る経営をCSR経営と呼ぶ。
なぜ、これだけを持って社会的責任などという仰々しい言葉を使うのか。
それは近年情報量が飛躍的に増え、社会が成長期から成熟期へ移行するに従い、企業活動は社会の様々な個人や事象に影響を受けるようになった。利害の程度の差はあるものの、ステークホルダーの範囲と利害の範囲が極めて幅広いものになってきた。
いわば社会全体がステークホルダーとなったため、社会全体に配慮した活動を行うことが経営にとって必要となってきたからである。
利益だけを追求して好成績をあげていた企業が、不正、不祥事、企業犯罪、事故などの報道発表でいっぺんに傾き、株価は急落、場合によっては廃業となるケースが相次いでいる。多くのステークホルダーの信頼を損ねた結果である。
株主リターンの最大化を目的とした付加価値創造経営。
その達成のためには利益だけを追っていたのでは、不十分である。
付加価値とは、当期だけでなく将来にわたる継続的な経済利益が計上できる企業価値を言うものであり、そのためにはすべてのステークホルダーを満足させる経営を行わなければならない。これがCSR経営である。
(2)ステークホルダーとCSR政策
企業が配慮すべき主なステークホルダーと具体的なCSR政策は次のとおりである。
ステークホルダー 企業(経営者)の利害 配慮の効果 配慮の中身 CSRの具体的手段
適法経営 環境配慮 社会貢献 ディスクロージャー(情報開示) 就業環境整備 製品・サービスの多様なニーズ対応 コーポレートガバナンス(企業統治) コンプライアンス(法令遵守) ISO取得 社会貢献活動 IR活動
1 政府・行政 規制 リスクマネジメントの強化 - - - - - - - -
2 地域社会・NGO・NPO 評判 ブランド価値の向上 - - - -
3 従業員・求職者 雇用 優秀な人材の確保 - - - - -
4 販売先・消費者 売上 売上拡大 - - - - -
5 仕入先・取引先 事業活動 安定供給 - - - - - - -
6 金融機関・投資家 資金調達 安定資金供給 - - - - - - - -
          
7 株式市場関係者 企業価値 株価の向上
         ↓
8 株主 コミットメント(経営責任) 高額報酬、契約継続
(3)コーポレートガバナンス(企業統治) 〜外部監視の重要性〜
持ち合い株主は「物言わぬ株主」と言われた。
彼らが多数を占めた時代、経営者への期待は安定継続経営であったから、それさえ達成されていれば株式の持ち合いということもあって互いの経営には口を挟まなかった。
株主総会は白紙委任状を提出することにより、社長に全権限が与えられ、現実の会社の主人は社長であった。
経営権が社長一人に集中すれば、牽制機能が存在せず、経営責任を追及する仕組みも存在しない。失敗しても責任を取ることなく社長を続けることができた。
それが株主構成の変化により、「物言う株主」たる外国人投資家、個人投資家等が多数を占めるようになると会社の実質的主人も社長から株主に移っていく。
1993年(H5年)の商法改正で株主代表訴訟が起こしやすくなり、株主はリターンをもたらせない社長を交代させることができるようになる。
経営者はこの自分の処遇の危機に際して、企業内部から統治機能を持たせようとしたのが、「コーポレートガバナンス」である。
コーポレートガバナンス、企業統治とは、「企業がみずから経営者を管理監督する有効なしくみ」のことである。
具体的なものが「社外取締役の導入」と「執行役員制度」である。
コーポレートガバナンスが株主価値創造経営にとって何故必要か。
それは十分なリターンをもたらさない、不祥事・汚職・違法行為・私利私欲の乱脈経営の発覚によって株価を急降下させるでたらめな社長を交代させるためである。

2】会計ビッグバンが目指したもの

会計ビッグバンは前述のとおり金融ビッグバンの一環であり、金融ビッグバンが目指したものは日本金融市場を「フリー」「フェア」「グローバル」に改革することであった。
このうち主に会計に託された課題は「フェア=透明で公正」であった。
反対に言えば、これまでの日本の企業経営は実に「クローズでアンフェア」であった。
経営者とかつての株主は、株式持合いの関係でお互いに厳しいことは言えず、親会社子会社の関係で利害を同じくしており、一蓮托生となって都合の悪いことは隠し、好業績に見せかける粉飾を行い、経営者個人の権力の座の安泰を保守しながら経営を続けてきた。
今までそれが許されるルールだった。「クローズでアンフェア」な経営が許されていた。
この状態でグローバル化の波を受け、厳しい監視の元で正常な経営を続けてきた海外企業と競争することになり、このままでは勝ち目がないことは火を見るより明らかとなった。
さて、そこで会計ビッグバンが目指したものは「フェアな会計報告書を作り、それをディスクローズすること」であった。
新会計制度の導入により、経営の方向は次のようにおのずとよい方向に修正されていく。
連結決算 グループ全体の効率性が意識される。
キャッシュフロー計算書 キャッシュの増加こそが真の利益と意識する。
退職給付会計 退職金負担を意識し、適切な退職金制度を再構築する。
税効果会計 不良債権の早期償却が行いやすくなる。
時価会計・減損会計 保有資産の効率化が意識される。持ち合い株の非効率性が意識される。
新会計制度による決算書を作成する過程で、「グループ連結経営」「キャッシュフロー経営」「資産効率重視経営」がおのずと推進されるようになっていく。

3】これからの企業業績評価

これまで見てきたように、企業を取り巻く環境はグローバル化の波を受けて一変した。
競争は一段と激化し、経営効率の向上が一段と重要性が増してきた。
かつて企業は社長の排他的独裁体制にあったが、これからは株主や外部登用の役員がしっかりと監視する体制がとられつつある。
これまで外部からの評価を企業が気にする相手は金融機関ぐらいのものであった。
しかしこれからは会社を取り巻くすべての関係者がステークホルダーとなってきたから、企業は彼らの評価を無視するわけにはいかなくなった。
このようにして社会全体がそれぞれの立場で企業を評価し、企業の命運もその評価いかんにかかることとなった。
つまり企業業績の評価指標は、企業が決めるのではなく、社会や市場が決めるのである。
社会や市場の評価指標を無視して、企業の中で指標を決めて、その指標を見て儲かっただの、業績が上がっただのといくら論じてももはや経営管理の意味はない。
社会や市場が決める業績指標にはどんなものがあるか。
社会の中で実に多くのステークホルダーが存在し、彼らが企業に期待するものも実に多様であり、それらにかかる評価は数値では出せない分野もあるが数値で出せるものとしては主に次のような指標がある。
業績指標 計算式 視点 経営志向
EVA(経済的付加価値) 税引後営業利益−資本コスト 経済利益を重視する EVA経営
ROE(株主資本利益率) 当期純利益/株主資本 資本効率を重視する ROE経営
ROA(総資産利益率) 当期純利益/総資産 総資産効率を重視する。 ROE経営
営業キャッシュフロー 営業キャッシュフロー 現金の増加を重視する。 キャッシュフロー経営
営業キャッシュフローマージン(CF版売上高営業利益率) 営業キャッシュフロー/売上高 収益率をCFベースで重視する。 キャッシュフロー経営
一株当たり利益 利益/株式発行総数 資本効率を重視する 株主重視経営
PER(株価収益率) 株価/一株当たり利益 市場での支持率を重視する。 株主重視経営
一株当たり配当金 一株当たり配当金 株主還元を重視する。 株主重視経営
配当利回り 一株当たり配当金/株価 配当収益率を重視する。 株主重視経営
売上高 売上高 従来型指標であるが、引き続き投資家は重視している。 (株主重視経営)
経常利益 経常利益 従来型指標であるが、引き続き投資家は重視している。 (株主重視経営)

X.まとめ

(グローバル経営)
グローバル経営とは、常に世界の動きを見ながら、経営判断を行っていこうとする経営姿勢のことである。

(株主価値創造経営)
グローバル社会下において、企業経営の目的は、会計利益の最大化ではなく、株主リターンの最大化である。
株主価値創造経営とは、株主リターンの最大化、つまり株価を上げ続けることを目的とする経営姿勢のことである。
株価を上げ続けるためには、@付加価値創造経営、ACSR経営、を心がける必要がある。

(付加価値創造経営)
株価を上げ続けるための源泉は、売上であり、利益である。
しかしここにいう「売上」「利益」という言葉は、真の「売上」「利益」であって、従来会計制度下の会計用語のそれとは違う。
すなわち@キャッシュとしての「売上」「利益」であり、A株主還元を行った後に残る「利益」である。
この真の「売上」「利益」は広義の「付加価値」であり、付加価値を向上させることを重視する経営姿勢を付加価値創造経営という。
付加価値創造経営には、最重視する業績評価基準を何にするかによって、@キャッシュフロー経営、AEVA経営、BROE経営なと゜がある。

(CSR経営)
グローバル社会下において、株価を将来にわたって上げ続けるためには、売上高、得意先など営業面だけに傾いた経営政策では足らない。
今や社会全体がステークホルダーと化し、企業評価に影響力を持ちつつあるからである。
この社会全体に広がったステークホルダーに配慮した経営を総称してCSR経営という。
CSRが要求する範囲は多岐にわたっており、それこそ社会全体との調和が求められている。
現在のところ、CSRの具体的手法として@コーポレートガバナンス、Aコンプライアンス、Bディスクローズとアカウンタビリティー、C社会貢献活動、D環境経営などが重視されている。
グローバル経営
T.株主価値創造経営 1.付加価値創造経営 (1) EVA経営
(2) ROE経営
(3) キャッシュフロー経営
(4)
2.CSR経営 (1) コーポレートガバナンス
(2) コンプライアンス
(3)
U.…