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雇用保険給付(失業等給付)の概要
平成15年05月25日公開
平成18年03月21日更新
平成20年01月21日更新
平成20年10月29日改装
平成21年04月06日更新
| 第1章 雇用保険制度の俯瞰 | T.雇用保険の全体像 |
| U.雇用保険制度の主な使われ方 | |
| V.給付対象者の用語の定義 | |
| 第2章 基本手当 | T.基本手当とは |
| U.受給資格 | |
| W.給付額と給付日数 | |
| X.その他の受給ルール | |
| 第3章 最後に(雇用保険制度の意義の再考) | |
雇用保険給付体系
特定受給資格者
特定理由離職者
所定給付日数
雇用保険の目的は、労働者の職業の安定に資することである。【法第1条】
具体的な手段と目的は次のとおりである。
手段
目的
1
失業等給付
必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図る
2
雇用安定事業
必要な事業を行うことにより、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大を図る
3
能力開発事業
必要な事業を行うことにより、労働者の能力の開発及び向上を図る
失業等給付の種類(大分類)として、次の給付がある。
種類(大分類)
趣 旨
法令根拠
失業給付
求職者給付
労働者が失業した場合、失業者の失業期間中の生活を保障するために行われる給付。
法第3章第2〜4節
就職促進給付
失業者の就職を促進するため、早期に再就職した者に対して行われる報奨金的性格を有した給付。
法第3章第5節
失業給付以外の給付
教育訓練給付
労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に行われる給付。
法第3章第5節の2
雇用継続給付
労働者が生産年齢期間中、職業生活が途切れることなく雇用の継続を促進するための給付。
現行制度では労働者の雇用の継続が困難となる場合として、高齢者と育児期間中の労働者を対象とした制度を設けている。法第3章第6節
具体的な給付の種類は、さらに細分化されている。給付の種類(細目)とその対象者は別表「雇用保険給付体系」のとおりである。
雇用保険法は、改正前のその昔は「失業保険法」であった。
また、失業等給付のうち失業給付以外の給付は近年の改正で、新たに加えられたものである。
そして雇用安定事業と能力開発事業は、多くの失業者にはほとんど関係がない。
つまり雇用保険は、労働者の失業時に生活費として金銭給付を行う失業保険であって、「失業給付」以外は付録であると思って差し支えない。
さらに失業給付の種類細目に絞ってもなおたくさんあるが、このうち大多数の失業者に該当するのは「基本手当」と「再就職手当」の2種類のみである!
さらに「再就職手当」とは、基本手当受給者が早期に再就職できた場合、基本手当として支給されるべきであった金額が残るため、そのうちの一定額をまとめて給付するものであり、基本手当が形を変えたものに過ぎない。
別表「雇用保険給付体系」における、給付が受けられる「対象者」の定義は、次のとおりである。
(1)被保険者の種類
種 類
定 義
法令根拠
(一般)被保険者
下記以外の労働者。
・高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者
・一定の期間労働者またはパートタイマー(1週の所定労働時間が20時間未満、または1年未満の雇用期間である者)
・その他(公務員、船員保険の被保険者、日雇労働被保険者でない日雇労働者、経営者、65歳以後に雇用された労働者など)第4条@、第6条
高年齢継続被保険者
同一事業主の適用事業に65歳以前から65歳以後引続き雇用されている者。
法第37条の2
短期雇用特例被保険者
季節的に雇用される者、または短期の雇用に就くことを状態とする者。
法第38条
日雇労働被保険者
雇用保険の被保険者である日雇労働者。
法第43条
(2)受給資格(者)の種類
種 類 定 義 法令根拠 受給資格(者) 基本手当の支給を受けることができる資格(を有する者)。 法第13条〜15条 受給資格は、「(一般)受給資格」と「特定受給資格」に分けられる。 (一般)受給資格(者) 特定受給資格(者)以外の受給資格(者)。 特定受給資格(者) 離職理由が、倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされたと判断されたことにより、決定された受給資格(者)。具体的には「別表 特定受給資格者とは」のとおり。 特定理由離職者 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者または離職理由に正当な理由のある者。具体的には「別表 特定理由離職者とは」のとおり。 高年齢受給資格(者) 高年齢求職者給付金の支給を受けることができる資格(を有する者)。 法第37条の3 特例受給資格(者) 特例一時金の支給を受けることができる資格(を有する者)。 法第39条 日雇受給資格(者) 日雇労働求職者給付金の支給を受けることができる資格(を有する者)。 法第45条、56条の2
基本手当は、失業者が失業期間中の生活費に充てるための金銭給付であり、雇用保険給付の中で最も中心的な給付である。【法第13条〜35条】
基本手当は、失業している日ごとに日額で計算され、28日分ごとにまとめて1回支給される。
日額は、これまで得ていた賃金の額を元に計算される。
給付される日数は限定されている。これまで雇用保険に加入していた期間を元に給付日数が決められて、その日数分に限り支給される。
基本手当のポイントは次の3つである。
@受給資格(誰がどんな条件を満たしたときもらえるのか)
A給付制限(いつからもらえるのか)
B給付額と給付日数(いくら、いつまでもらえるのか)
(1)「一般受給資格(者)」の要件【法第13条@】
算定対象期間内に被保険者期間が12ヶ月以上あること(者)。
(2)「特定受給資格(者)」及び「特定理由離職者」の要件【法第13条A】
算定対象期間内に被保険者期間が6ヶ月以上であって、特定受給資格又は特定理由離職に該当する離職理由を有すること(者)。 「別表 特定受給資格者、特定理由離職者とは」参照。
※算定対象期間 原則として離職の日以前2年間(特定受給資格者は1年間)のこと【法第13条】。
※被保険者期間 雇用保険の被保険者として会社に雇用されていた期間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を「被保険者期間1ヶ月」として計算した期間のこと。
月の区切り方は、被保険者であった期間を、離職日を基準に1ヶ月ごとに遡って計算する【法第14条】。
※賃金支払基礎日数 賃金が支払われる根拠となった労働日数のこと。ただし実際に労働していたかどうかは問わず、有給休暇や休業手当の対象となった日数も加えられる【行政解釈例規】。
(1)給付制限【法第33条@】
給付制限とは、本来受けられる給付時期を3ヶ月間遅らせる罰則的措置のことである。
給付制限がかけられるのは、離職理由が次の場合である。
@重責解雇。
A正当な理由がない自己都合。(具体的には別表「特定受給資格者とは」のVの各号に掲げる離職理由以外の自己都合。被保険者期間は問わない。)
★中途退職が一般化している現代の労働事情を勘案すれば、「罰則的措置」たる給付制限の意義は正しくない。
給付制限がある方が通常であり、それに対して給付制限がない場合は優遇措置をされている、という方が感覚的には正しい。
(2)離職理由
離職の理由は、人それぞれケースごとに違う。人が離職する理由は星の数ほど存在し、それを分類しようと言うのは、困難である。しかし、雇用保険制度は、離職理由によって、給付時期や給付日数に差をつけるという、荒療治を取り入れている。荒療治がために常にグレーゾーンが存在し、失業給付の給付条件の決定にあっては、常に不満・トラブルの種となり続けている。
この問題については、「自己都合退職のページ」で細かく触れているので、そちらをご参照いただきたい。
(3)離職理由と給付制限の関係
離職理由と給付制限との対応関係を具体的に区分すると次のとおりである。※グレーゾーンの判断は、個別にハローワークが決定する。
給付制限の有無
離職理由
給付制限なし
契約満了(当然に「定年」も含む。)
倒産等(特定受給資格者Tの各号に掲げる離職理由)
解雇等(特定受給資格者Uの各号に掲げる離職理由)
正当な理由がある自己都合(特定受給資格者Vの各号に掲げる離職理由。被保険者期間を問わない。)
給付制限あり
重責解雇
正当な理由がない自己都合(特定受給資格者Vの各号に掲げる離職理由以外の自己都合)
基本手当は、基本手当日額を所定給付日数につき支給される。
(1)所定給付日数【法第22条@、A】
所定給付日数とは、基本手当が支給される日数のことをいう。受給資格(一般と特定)、算定基礎期間及び年齢ごとに定められている。具体的には、別表「所定給付日数」のとおり。
※算定基礎期間(被保険者であった期間) 離職の日まで引き続いて同一の事業主の適用事業に雇用保険の被保険者として雇用された期間。ただし、その前の1年以内に被保険者であった期間があり、その期間について基本手当又は特例一時金の支給を受けていない場合はこの期間も通算される。【法第22条B】
(2)基本手当日額【法第16条】
基本手当日額とは、賃金日額に、賃金日額の区分に応じ50%(60歳〜64歳の方は45%)〜80%(「給付率」という。)を乗じた額とする。この乗率は、賃金日額が低くなるほど高くなる。
具体的には次のとおりである。
1. 60歳未満の受給資格者の基本手当日額【法第16条@】
賃金日額
給付率
2,140円以上4,210円未満
80%
4,210円以上12,220円以下
50%〜80%までの範囲で賃金日額の逓増に応じ、逓減
12,220円超
50%
2. 60歳以上65歳未満である受給資格者の基本手当日額【法第16条A】
賃金日額
給付率
2,140円以上4,210円未満
80%
4,210円以上10,950円以下
50%〜80%までの範囲で賃金日額の逓増に応じ、逓減
10,950円超
45%
※賃金日額 被保険者期間として計算された離職日前6カ月間に支払われた賃金の総額を180で除した額。上限と下限が設けられている【法第17条】。
賃金日額の区分及び基本手当日額の上限と下限は毎年平均給与を基礎にして自動変更される。(上記の賃金日額は自動変更前)
(1)受給手続
@受給資格決定
ハローワークに「求職の申込」と「離職票の提出」を行う。(これらを行った日を「受給資格決定日」と呼ぶ。)
A受給者説明会
その後指定された日時の「雇用保険受給者説明会」に出席。その際「雇用保険受給資格者証」が交付され、離職者ごとに今後の認定日が決定・通知される。
B待期(期間)【法第21条】
待機(期間)とは、最初に求職の申込みをした日以後、通算して失業している7日間のこと。失業状態であることを確認するための期間。この期間についての基本手当は支給されない。待期はすべての受給資格者に課せられる。
初回認定日には、待期満了の認定が行われる。
C失業の認定と現実の支給【法第15条第1項及び3項】
失業の認定とは、失業状態にあることを確認すること。2回目の認定日から行われる。
「失業認定申告書」を提出し、当該申告書により前回認定日から今回認定日の前日までの各日について失業の認定を受ける。このとき、アルバイトで収入があった場合、収入があった日の基本手当日額は収入金額によって減額され、あるいは支給されない。
(アルバイト収入を申告せず、満額の基本手当日額の支給を受けることは「不正受給」とされ、発覚した場合以後の支給は停止され、不正額の返還及び不正額と同額の罰金が課せられることがある。)
認定を受けた当該日数分の基本手当は、約1週間後、後払いで金融機関の指定口座に振り込まれる。
※失業 労働の意思および労働の能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態【法第4条第3項】)。
離職して受給資格を満たす者であっても、自営業を始める予定の者、結婚して主婦となる予定の者、病気や怪我で働けない者などは雇用保険上、失業とは言わない。
※認定日 失業の状態にあったことをハローワークが確認する日のこと。失業している日を28日ごとに1回まとめて認定する。
(2)受給期間【法第20条】
受給期間とは、雇用保険の基本手当を受けられる期間のこと。原則として離職の日の翌日から1年間。基本手当はこの期間内の失業している日について所定給付日数分を限度として受給することができるものであり、この受給期間を過ぎると、たとえ所定給付日数の残日数が残っていても、それ以後基本手当は支給されない。(決められた認定日どおりに失業の認定を受けずに、所定給付日数を残して1年が経過してしまった場合など。)
雇用保険制度は、社会保険制度の一つであり、社会保障制度の一つである。
つまり雇用保険制度は、国民の生存権を実現させるための制度の一つである。
労働者が唯一の生活手段である雇用を失った時、それは即、生存が脅かされる事態となる。
そんなときの雇用保険、であったはずだ。
しかし現実はどうだろう。一般受給者は20年勤めてもたったの5ヶ月しか保障されない。多くの受給者はたったの3ヶ月の保障で給付は終了する。(H20年現在)
これでセーフティーネットなどと言えるだろうか。とても生存を保障する制度にはほど遠い。失業給付は、「失業見舞金」と名前を変えたほうが良さそうだ。
再就職環境は、バブル崩壊以後実質的に悪化し続けているのに、給付内容は、削減の一途を辿っている。
かつて、ほんの15年ほど前(H5年頃)の資料と比べてみると、所定給付日数は半分までに削減されている。一般的な給付率も6割から5割に削減されている。
それに加えて、いたずらな「給付制限」。自己都合退職者は悪者とばかりに3ヶ月もの給付制限を課している。厚生労働省は、離職者に対しては、このような罰則を設けながら、企業が労働者に対して行う、パワハラ、いじめ、嫌がらせ、不当命令(サービス残業など)、不当処遇(不当解雇など)などありとあらゆる人権侵害、労働法違反には目をつぶったままである。
特定受給資格者などという救済制度を設けたところで、そもそも星の数ほど存在する離職理由で給付内容を区分することなどどだい無理な話であり、小手先のポーズに過ぎない。
現に特定受給資格者と認められなかった失業者の不満は日本中にくすぶっている。
雇用保険法の最初に戻ってみよう。雇用保険の目的は、「職業(雇用)の安定に資する」ことである。【法第1条】
日本中にこれだけ中途退職者が増えたのは何故か。
雇用の安定のための最も重視すべき施策は、失業給付を支給することではなく、労働者が中途退職しないように、労働法や憲法、民法などに照らして違法な企業を厳しく取り締まることに尽きるのではないだろうか!!