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平成19年9月3日(ページを2分割)

労働基準法の精神

〜私たちは、よりよく働く権利があります〜
私たち日本国民は、憲法第27条により勤労の権利を保障されています。
さらにその勤労について、労働基準法第1条で
「人たるに値する生活」を営むための労働条件が保障されています。

T.沿革 〜むかしむかし、こんなひどいことが行われていたのです!〜

18世紀、イギリスでは、産業革命によって貧しい地方の農民が職を探して都市へ流れ、大量の労働者が生み出された。当時の社会福祉は皆無、労働基準もなく、労働時間は1日16〜19時間だったといわれている。貧しさゆえ子供を働かせて賃金は親がもらうと言う事もごく一般的に行われていた。資本家絶対優位の時代であるから低賃金はいうまでもない。労働災害にあった場合でも多くの場合保障がなく、職も元気な体も同時に失うこととなった。

このような貧しい生活と過酷な労働環境の中で、労働者は環境改善のため団結して労働運動や機械打ちこわし運動を起こすようになったが、厳しい弾圧を受けた。
そんな繰り返しの中で労働運動の高まりとともに1802年、イギリスにおいて世界で初めて労働基準法(工場法)が施行された。

日本では近代国家として資本主義経済が根づき始めた明治時代より労働者階級が生まれ、労働環境の劣悪さが徐々に問題視されるようになってきた。「野麦峠」「女工哀史」といった映画や小説が当時を良く物語っている。田舎から一家の稼ぎ手として全寮制の工場に入った女工たちは1日15時間以上の立ち仕事で酷使され、過労から結核やコレラにかかる者も多く、病死したり、自殺したり、なかには無理やり毒薬を飲まされて殺されるという今では信じられない事も行われていた。1920年代中頃(大正年間)の話である。

実はこのとき日本で初めての労働基準法(工場法)がすでに実施されていた(1916年(大正5年))が、今でもそうであるように、その力ははるか遠く及ばなかった。
日本でも労働組合運動は昭和に入ってますます激しくなったが、時に政府は死刑をもって臨むなど、長い間厳しく弾圧された。

そんな歴史的経緯を経て、敗戦後まもない昭和22年、日本国憲法とほぼ時を同じくして現在の労働基準法が制定された。憲法前文には、崇高な理念として戦争による惨禍を二度と繰り返す事のないよう平和主義が高々と掲げられ、労働基準法総則には「人たるに値する生活を保障する」とした労働憲章を掲げている。その他総則の中に、「強制労働の禁止」、「中間搾取の禁止」、「賠償予定の禁止」「前借金相殺の禁止」「強制貯金の禁止」「金品の返還」など、今の我々が考えるとどうしてそんなことをと疑問に思うようなことが定められているが、これらは我々の先人たる労働者が労働の現場で最も脅えていたことだったからである。

このように労働基準法は、私たち労働者の先人たちが命懸けで後世に残してくれた財産なのです。
そして、私たちはこのようにしてできた労働基準法と現在の労働環境をどう捉え、そして後世にどうつないでいくか……。
それが今に生きる私たち労働者の役割です。

U.原則

1.労働条件の原則

(第1条)労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
     この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者はこの基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上に努めなければならない。
労働者と会社は弱者と強者の関係にあります。
よって強者である会社に一定の制限を設けて、労働者を保護する規制を定めた法律が、この労働基準法なのです。

そして、この第1条は大原則として「人たるに値する生活を営むための労働条件」を保障した労働憲章と呼ばれています。

さて、「人たるに値する生活を営むための労働条件」とは具体的にどんなことでしょうか?
詳しくは以下に触れてありますが、例えばこのご時世で1ヶ月丸々働いて月給8万円では、家族の住む家や食費、生活用品の確保が不十分ですね、とか、労働時間が1日15時間で休日が月に1回では、過労となり、疲れ果てて人間として必要なことができませんね、これでは人たるに値する生活が営めません、ということです。


私たちには、よりよく働く権利が保障されているのです。

2.均等待遇の原則

(第3条)使用者は、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしてはならない。
憲法(第14条)では「すべての国民は法の下に平等」と定め、差別を禁止しています。
この思想を労働現場にも適用したものが本条です。

日本は古来から身分差別の国、排他社会の国でした。
現在では一見少なくなりましたが、部落差別や朝鮮人差別はひどいものでした。
女性差別は今でも残ってますが、差別している体制側、男性側がしていると意識せずに自然とやっていることに日本文化の根深い問題がありました。
だから憲法制定後もこれらの差別は根強く残りました。

現在では少しずつ解消されていってはいるものの依然残っています。
あってはならないことです。

3.男女同一賃金の原則

(第4条)使用者は、労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。
性別についての差別がごく一般的であった社会と労働現場において、賃金に対する差別の弊害が特に顕著であったことから、賃金について男女の差別を禁止したものです。

これに対して会社は、与える仕事自体に差をつけることで、男性に対する女性の低賃金政策を長い間正当化してきました。

なお、本条と前条は近年、雇用機会均等法の成立によって、実質性差別の解消を目指し、その成果が少しずつ少しずつ現れ、改善されてきています。

V.労働契約

1.法律違反の契約

(第13条)この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。
この場合にあいて、無効となった部分は、この法律で定める基準による。
労働基準法は、人たるに値する生活を営むための「最低の」労働条件を定めたものです。
従って労働基準法の最低基準に達しない労働契約は、その部分だけが無効となり、自動的に労働基準法の最低基準が適用される、ということです。
(具体例)
私は会社と1日10時間働きます、月給は8万円です、という約束をして働きはじめました。  
                                                                   
労働基準法では1日の最大労働時間は8時間まで、月給の最低額は、例えば12万円(※)などと決まっています。
                                                                   
私は1日8時間働いた後、退社してよいことになります。
月給も8万円しか支給されなければ、行政官庁に報告することにより、12万円が支給されることになります。
※地域や会社の労働時間によって違いがあり、毎年変更になります。

2.労働契約の明示

(第15条)使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
   明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
会社は社員を採用するに当たって、給料や残業時間などはっきりとした労働条件を示さず、後になってから、あなたには○○万円しか払えない、仕事は毎日夜9時までみんなやってもらっているなどと言い出すことがよくあります。

このように労働者が予期しない不利益を被ることのないように、労働条件は会社が文書で通知することを義務づけたものです。

3.解雇

(第18条の2)解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労働者にとって解雇は、生活のための収入手段を奪われる大変な事態です。
今までは民法1条3項の権利の濫用として禁止されていましたが、平成15年の改正で労基法本文に明文化されました。
明文化の前と後で法的に何ら変わるものはありませんが、近年、不当解雇の続出という企業の横暴を受けて、企業の暴走を抑制するために敢えて明文化されたものです。

W.各論

1.賃金の支払

(第24条)賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
ただし、法令もしくは労働協約、労使協定に別段の定めがある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
給料は、早く確実に働いた労働者本人の手にその全額が渡らなければなりません。
ここの規定は具体的にこんなことを禁止してします。
会社が給料から勝手に控除してよいのは原則として税金・社会保険料だけです。協定のない社員互助会費の控除がよく見られますが違法です。
また退職・解雇に当たっては、損害賠償などと称して勝手に最後の給料から控除する例も見られますが、これも当然違法です。

2.労働時間

(第32条)使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
   使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除いて1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
労働者が人たるに値する生活を営むためには、健康を維持しなければなりません。
長時間にわたる労働は、労働者を疲労させ、その積み重ねが労働者の健康を阻害します。
さらに強化された労働がそれを倍加します。
そこで労働時間の長さと労働の強度との相関関係を考慮して、労働者の健康を守るために適正な労働時間として保障したものが本条です。

適正な労働時間は原則として1日最大で8時間です。

3.休憩

(第34条)使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
    休憩時間は一斉に与えなければならない。
    使用者は休憩時間を自由に利用させなければならない。
休憩の目的は、疲労の回復、食事またはその他の生理的・情操的な要求を充たすことです。

4.休日

(第35条)使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。
休日の目的は、労働による疲労の完全な回復と家庭人・個人としての最低限必要な活動を労働者に保障することです。
休日は労働者が使用者の労務指揮権から開放される日ですから、休日を自由に利用できることは当然です。
会社が休日に会社行事を行う場合、業務命令で強制的に出席させることはできません。

5.時間外、休日及び深夜の労働と割増賃金

(第36条)使用者は、三六協定を締結し、これを行政官庁に届け出た場合においては労働時間を延長し、または休日に労働させることができる。
(第37条)使用者が、労働時間を延長し、または休日に労働させた場合においては、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の命令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
   使用者が深夜に労働させた場合においては、その時間の労働については通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
会社は経営上の都合から臨時の必要のため、一定の要件の下に労働者に対して残業・休日労働を命じることができます。
しかし、その要件がゆるやかであれば長時間労働規制の意義が失われることにもなるため、厳しい要件が求められています。

その要件とは、労働者の過半数を占める労働組合もしくは労働者代表と残業に関する協定を結び、行政官庁に届け出ること、および現に行なった残業時間について一定の割増賃金を支払うことです。

割増賃金の趣旨については、通常の労働時間が延長され、あるいは睡眠最適時間中に労働させられることによって労働者が被る特別な疲労、さらにはそのために本来労働者が社会的文化的生活を営むために自由に使いうるはずの余暇時間の喪失に対して、会社が相当な代償を払うということです。

しかしながら現実の労働現場では多くの場合三六協定の締結さえなく、長時間の残業が強制されているのが実態です。
しかも割増賃金はおろか通常計算による残業時間賃金さえ支払われない会社も数多く見られます。
これは当法を管理監督する行政官庁の怠慢としかいいようがありません。労働基準法がザル法と呼ばれるゆえんです。
このことにより多くの過労死者を出している現実は残念でなりません。

6.年次有給休暇

(第39条)使用者は、その雇い入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。

    使用者は、1年6ヶ月以上継続勤務した労働者に対しては、前項の日数に、6ヶ月を超えて継続勤務する日から起算した継続勤務年数1年ごとに、別表に掲げる日数を加算した日数の有給休暇を与えなければならない。
6ヶ月経過日
から起算した
継続勤務年数
労働日
1年 1労働日
2年 2労働日
3年 4労働日
4年 6労働日
5年 8労働日
6年 10労働日

    使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなけばならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
年休の目的は、休日と同様、労働者の心身の疲労を回復させることです。
ただ、休日の方は週に一度定期的に労働日を中断して、その間の肉体的疲労の回復を図らせるところに主な目的があるのに対し、年次有給休暇の方は、1年という長期間の中で労働者の希望する時季にできるだけまとまった休みを与え、その間の賃金を保障し、これによって労働者の心身両面の新たな活気を得させようとすることに主眼が置かれているところに違いがあります。

ただし、労働者の年次有給休暇の希望日に対し、会社はその日が経営の都合上、事業の正常な運営を妨げると判断した場合、希望日を変更させることができます。

年次休暇を取得させずに買い上げることは、その趣旨に反するところから原則として禁止されています。

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