社会保険総論
平成15年5月25日
平成20年1月19日更新
1.定義
社会保険とは、憲法25条第1項(生存権)を実現させるための、同条第2項で国の努力義務として定められた具体的施策の一部である。
その内容は、保険方式で国が運営するもので、疾病、負傷、分娩、老齢、障害などの理由から国民の生存権を脅かす事故が生じた場合に、一定の保険給付を行うことで、被保険者とその家族の生活を保障する制度である。
2.生存権実現のための社会保険
生存権実現のための施策として、同条第2項では@社会福祉、A社会保障、B公衆衛生と3つの概念に区分しているが、必ずしもこの区分概念が一般に広く使われているというわけでもない。むしろ全部併せて「社会保障」という言い方をする方が多い。
生存権実現のための施策として国家予算の分類区分でそれぞれの区分の比重を見たものが別表であるが、この区分によると「社会保険」が社会保障全体の4分の3以上を占めており、生存権の実現に社会保険がどれだけ重視されているかがわかる。
社会保障給付費 項目 予算 割合 社会保険 141,584 77% 失業対策 4,881 3% 生活保護 13,837 8% 社会福祉 17,218 9% 保健衛生 5,276 3% 合計 182,796 100% ※単位:億円
※資料は2002年度国家予算
1.保険という技術
保険とは、偶発的な事故による経済的な生活の支障を補うため、被保険者が事故発生のいかんにかかわらず、保険料という形で金銭を拠出して蓄え、それを事故に遭った者に対して保険金という形で給付する相互扶助の技術である。
2.強制加入
国民全員の生存権を実現するための国家の社会保障政策という見地から加入は原則的に国民全員に強制されている。
3.国家運営
前項と同様の趣旨で国家が給付費用の一部を負担すると同時に、運営管理または指導監督する。
4.保険原則の例外
保険技術の原則として@保険料額と保険金額の均等、A危険度対応保険料額などがあるが、前項と同様の趣旨で、社会保険はこの原則の例外として「所得に応じた保険料額」と「必要に応じた保険給付」をすることとしている。
現在、社会保険制度として@医療保険、A介護保険、B年金保険、C失業保険、D労災保険の5種類がある。
いずれも生存権(憲法25条)実現のための社会保障としての社会保険であるが、純粋な社会保険としては@医療保険、A介護保険、B年金保険の3つである。
C失業保険、D労災保険は、社会保険のうちでも「労働保険」という名で区分され、生存権と同時に勤労権(憲法27条)を実現させるための具体的施策でもある。国の予算区分では失業保険は社会保険の区分ではなく、失業対策に別区分されている。また、労災保険は国が運営管理するものの、費用の負担はしない。
分類 保険事故 種類 給付対象者 保険料支払不要者 備考 医療保険 病気、負傷、
出産、死亡健康保険 会社員とその被扶養家族 被扶養者 ※保険事故の原因は、業務外のものに限る。
※高齢者医療確保法が老人保健法から移行された。〔H20.4.1施行〕国民健康保険 自営業者、無職者、フリーランスその他 高齢者医療
@75歳以上の者
A65歳〜74歳の障害者共済保険 公務員等とその被扶養家族 被扶養者 船員保険 船員とその被扶養家族 被扶養者 介護保険 要介護状態 介護保険 原則として65歳以上の者 40歳未満の者 ※過去に一定以上の保険料未納がある場合、給付制限される。 年金保険 老齢、傷害、死亡 国民年金 20歳以上の者 原則として60歳未満で国保加入者以外の者 ※国民年金は、他の年金保険に加入している者は、自動的に入っていることにされる。(手続きや保険料納付義務はない。)
※老齢給付の対象は原則として25年以上加入期間のある退職者厚生年金保険 現または元会社員
※船員も含む。
※日雇労働者にはない。共済年金 現または元公務員等 失業等保険 失業 雇用保険 現また元会社員
※公務員等にはない。64歳以上の者 船員保険 船員等 労災保険 病気、負傷、
休業、傷害、死亡労災保険 会社員等 すべての者(事業主が全額負担) ※保険事故の原因は、業務上のものに限る。 船員保険 船員等 ※建前としてはすべての国民が5種類の社会保険にすべて加入することになっている。
※同じ保険分類でも勤め先が民営、公営、船舶事業などによって加入する制度が違う。
※老人保健は他のいずれかの医療保険の加入者のうち75歳以上の者が有利にその給付を受けられる制度である。
※公務員等の労働災害の場合は、保険ではなく、公務員災害補償法で公務災害補償がある。
※公務員等の失業保険は、倒産・リストラがない、退職金等が多いなど民営事業所と比べて著しく労働条件が良好なため、制度がない。
保険料額または給付額の基礎となる額は、本人の月給または日給が元になっているが、各法によってそれぞれ微妙に異なっている。基礎額は以下のとおりである。
用途 算定基礎 法令 用語の定義 保険料算定 標準報酬月額・日額 健保、介保、厚年 原則として4,5,6月の3ヶ月間の賃金(賞与、退職金を除く)の平均月額を一定の金額範囲ごとに区分された標準報酬月額表の区分に該当させたもの。日額は月額を1/30。 標準賞与額 健保、介保、厚年 毎回の賞与額(1000円未満切捨て) 標準賃金日額 日雇健保 毎日の賃金額を一定の金額範囲ごとに区分された標準賃金日額表の区分に該当させたもの。 賃金総額 徴収法(労保、雇保) すべての賃金 給付額算定 標準報酬月額・日額 健保 前述 平均標準報酬額 厚年 各月の標準報酬月額と標準賞与額に再評価率(当時の物価水準を現在価値に換算する等)を掛けた総額を被保険者期間月数で割って計算する。 給付基礎日額 労災 労基法の平均賃金と同じ 算定基礎年額・日額 労福事業 直前1年間の賞与額。日額は1/365 賃金日額 雇保 原則として直前6ヶ月間の、賃金(賞与、退職金を除く)/180 基本手当日額 雇保 賃金日額を賃金日額の50〜80%の水準で構成された基本手当日額表の区分ごとに該当させたもの。 ※ 平均賃金 労基法 原則として直前3ヶ月間の、賃金(賞与、退職金を除く)/総暦日数