≪特別企画≫
ホワイトカラー・エグゼンプションに関する緊急逆提言
〜ホワイトカラー・エグゼンプション・パート1〜
平成18年12月17日
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| T.はじめに | |||
| U.経 緯 | |||
| V.検 証 | (1)「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」(日経連)の検証 | ||
| (2) 労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」(厚生労働省)の検証 | |||
| W.逆提言 | |||
| X.おわりに | |||
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ホワイトカラー・エグゼンプションの論議が急加速している。
新聞に踊る「ホワイトカラー・エグゼンプション」の文字を何度も見て、経団連は一体どういう理屈で推し進めようとしているのか、詳しく分析してみたのがこの検証レポートである。
事の発端は2005年6月21日、(社)日本経済団体連合会が「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」を発表したことに始まる。
これを受けて厚生労働省は2006年6月13日、「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」を示した。
そして2006年暮れの現在、来年にも法案を提出すべく調整が大詰めを迎えているところである。
上記の全内容は次のとおりである。
ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言
労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)
(1)「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」(日経連)の検証
「はじめに」の章は当該提言の精神や主旨が記載されている一番重要な章である。
この中で一定のホワイトカラーの働き方は、次のようにあるべきだと述べている(原文より抽出)。
・効率的で自らが納得できる働き方
・主体的な働き方
・労働時間にとらわれない自由な働き方
・働き方の選択肢を増やし、労働者の勤労意欲に十分応えつつ、(中略)ホワイトカラーに適した労働時間制度
この限りにおいては、妥当な意見である。
しかし、論理はここから突然に飛ぶ!!
だから「一定のホワイトカラーについては、労働時間規制の適用除外とする制度を整備すべきである」と。
とんでもない論理飛躍である。最初に結論があったことが強く推定される。
「労働基準法の適用除外とする」とは何たる暴言であろうか!!
労働者保護法の中心をなす邪魔な労働基準法を撤廃しろ、という発言に等しい。
この提言はそういう精神の下で作られたことが次の2つの文章からも明白である(原文より抽出)。
・(労働基準法の)労働時間規制の考え方は、(中略)現在のホワイトカラーの就労実態には必ずしも合致していない。
「現在のホワイトカラーの就労実態と合致していない」とは、労働基準法違反の労働を強要し、または現認しながら是正していないことを裏付ける発言である。
・(労働基準法で労働時間の適用除外を受ける管理監督者の)範囲が、判例・通達の解釈によれば、極めて狭い範囲に限定されており、現在の企業の実態に鑑みると、大いに疑問が残る。
労働基準法で管理監督者を労働時間規制の適用除外とした理由は、「管理監督者が経営者と類似する働き方をする者である」からである。
したがって労働基準法上の「管理監督者」とは、「経営と一体的な立場にある上級の管理職」のことである。
それが昨今では、平社員から一歩出世しただけの主任という役職がついた下級労働者まで「管理監督者」として時間外手当を支給せず、しかもタイムカード等で勤怠をしっかり管理し、遅刻、早退、欠勤をチェックしている。遅刻早退にはうるさいくせに定時で退勤するなという。まったくおかしな話だ。
これも時間外手当不払いの労働基準法違反を犯していることを認識しての発言であり、確信犯であり、自らの労働基準法違反を提言に盛るとはあきれた団体である。
これでは提言の中身を詳細に検討するまでもない。
中身について一言だけ触れるが、やはり「はじめに」の章と同様に「最初に結論ありき」の推定を更に強化せざるを得ない論調となっている。
日経連が行った「労働時間問題に関するアンケート調査」というものを基調として論理を展開しているが、この調査は企業を対象として行った経営者の立場からの一方的な意見だけであるのに、それをもって強引に「一定のホワイトカラーには労働時間規制を撤廃するべき」という結論を導いている。
(2) 労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」(厚生労働省)の検証
「第1 検討の主旨」の章の中で次のような現状認識が述べられている。
・産業構造が変化し、就業形態・就業意識が多様化する中で、創造的・専門的能力を発揮して自立的な働き方をする労働者が見られるようになっている。他方で、長時間労働者の割合が高止まりしており、過労死の防止や少子化対策の観点から、長時間労働の抑制策を講ずることが喫緊の課題となっている。(原文のまま)
この現状認識は極めて妥当である。
そして各論の本文である「第2 検討の方法」では、「労働契約法」と「労働時間法制」の2大項目に分け、上記の現状認識から、その対策として全体としては概ね妥当な具体的方策が述べられている。
この提案に挙げられた方策が完全に実行されたと仮定すると、少なくとも現状認識の問題点の解消に大きく寄与するであろうと思われる。
@ホワイトカラーが本人にとっても会社にとっても真によりよく働ける制度を模索すること、この命題に総論として異論はないが、それ以前にやるべきことがある。
このことを論じる前に、一番の問題は、「現行の労働基準法とりわけ労働時間法制が99%の企業で遵守されていない」ということである!!
過労死が何故起きるのか、なぜ少子化になったのか。この原因の大部分は、企業の法令違反とりわけ労働基準法の労働時間法制の違反・強制にあり、厚生労働省がそれらの違反を野放しし続けたことにある!!
問題の解決に当たり最も効果のある方策は、現行法を企業に遵守させることである。
「法律を守れ!」
この当たり前のことができない企業社会にどんな制度を作っても絵に描いた餅である。
ホワイトカラーの働き方の制度的模索は、二の次である。
A次に私は「ホワイトカラーエグゼンプション」という考え方そのものに反対である。
「労働基準法の適用除外」などというのはとんでもない暴挙的提案である。
適用除外者を多数の労働者に当てはめて、実質的に労働基準法を亡き者にしようとする者の謀略以外の何者でもない。
新たな方策を講ずるにしても「裁量労働制」など法律の適用範囲の中で講ずるべきである。
(この点について厚生労働省の提案についても、経団連の提言に引きづられたかように、裁量労働制ではなく、適用除外制度を導入する内容となっている。)
経団連は併せて現行法の適用除外者である管理監督者の範囲を広げようと目論んでいる。
このことは先に述べたが法の精神から鑑みて、決して許されるものではない。
更にホワイトカラーエグゼンプション制度と併せて、現行の「裁量労働制」についても問題があることを喚起したい。
裁量労働制の適用労働者とは次のような者である。
・業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的指示をしない業務に就く労働者。(労働基準法第38条の3及び4)
裁量労働制の一番の問題点は、業務の量や完成期限については、使用者の指示によりその達成を命じられる、ということである!!
このことにより、裁量労働制で働く多くの者は、いかに自己裁量でやり方や時間配分を効率的に行ったとしても、過度の業務量やタイトな納期限を押し付けられて、長時間労働を強いられる結果となっている。
一定のホワイトカラーに新しい制度を導入しようとするとき、この問題について改めて論議されなければならない。
以前にも経団連はとんでもない報告書を出している。
平成不況が長びく1990年代後半から各地で個別的労働紛争が頻発した。これを受けて2003年以降、厚生労働省は各地でサービス残業の取締りを強化した。
このことに触れて経団連は「2005年版経営労働政策委員会報告」でこの取締りの強化を次のように批判した。
「行政による規制的な指導は、労働者の自律的、多様な働き方や生産性向上、日本企業の国際競争力の維持・強化の阻害要因となりかねない」と。
多くの労働者が企業の違法行為で損害を受け、怒って訴えが多発しているにもかかわらず、「労働者の自律的働き方」などと事実を捻じ曲げた表現を使っている。
しかも国家が法律に則って無法者を取り締まることを非難するとは、言語道断の極みである!!
経団連の提言や報告ものは、もはや無法者の言い分として聞くに値しない。
今回の提言も、現在の労働基準法の違反状態を追認させることが目的であること明白である。
こんな無法者団体である経団連であるが、その力強大で厚生労働省も無視するわけにもいかず、対応を余儀なくされている。
私がどんなに叫んでも強大な力を持つ経団連にとっては、小さなゴミがついた程度の影響さえもない。
厚生労働省と労働者団体がどれだけ「労働基準法の精神」に基づいた改正法を作ってくれるのか只々期待するばかりである。