≪特別企画≫
ホワイトカラー・エグゼンプション、事務レベル最終決着
〜ホワイトカラー・エグゼンプション・パート3〜
平成18年12月31日
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| T.決着 | |
| U.最終報告の内容 | |
| V.関係者の主張 | 1.労働側の主張 |
| 2.経営側の主張 | |
| W.最終報告の評価 | 1導入の必要性 |
| 2.年収要件 | |
| 3.制度導入の趣旨 | |
| 4.対象者要件 | |
| 5.労働界の不信感 | |
| X. 政界(第2ステージ)の動向 | |
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パート1 「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する緊急逆提言」へ
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長らく厚労省内で行われてきたホワイトカラー・エグゼンプションの論議が12月27日、「最終報告」を取りまとめて決着した。
しかしその内容は、労使の対立を残したまま、まずは導入ありきで、対象者の年収額などを明記しない玉虫色決着となった。
舞台は今後政治の場に移るが、制度の具体像はさっぱり見えてこない。法案の行方はなお流動的である。(朝日新聞)
最終報告の全文は次のとおりである。
「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)(案)」
(平成18年12月27日発表 労働政策審議会労働条件分科会)
このうちホワイトカラー・エグゼンプション制度の対象者要件などの重要部分を拾い出すと次のとおりである。
対象労働者要件
@労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者であること
A業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある者であること
B業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしない者であること
C年収が相当程度高い者であることその他の要件
○制度導入は労使委員会で決議すること
○対象労働者の同意を得ること
○年間休日104日を確保すること
1.労働側の主張
高木連合会長 「年収がいくらだったらよいという話ではない、この制度自体、日本には合わない」と徹底反対(毎日新聞) 労働側委員 「既に柔軟な働き方の制度があり、新制度の導入は認められない」との意見を報告書に付記(毎日新聞) 谷川連合労働局長(労働側委員) 「制度は24時間働けと強いるものであり、反対を貫きたい」(毎日新聞) 連合幹部 「管理職一歩手前の人に仕事の量や納期まで裁量権を持つ人はいない」と制度の問題を指摘(毎日新聞)
2.経営側の主張
紀陸経団連専務理事(経営側委員) 「新しい働き方の選択肢を増やすことができ、大きな成果だ」と胸を張った(朝日新聞)
「導入の際には労使が話し合って決めることになっており、問題はない」(毎日新聞)経団連幹部 「馬車馬のように働けと言っているわけではない。時間にとらわれず、アイデア勝負で付加価値の高い仕事をしている人に報いるのが狙いだ」(朝日新聞) 中小企業団体代表の経営側委員 「年収条件が高ければ中小企業では対象者がほとんどいない。年収条件を明記しないあいまいな報告ではのめない」ととりまとめに反対を表明(朝日新聞) 経済同友会 「年収ではなく、仕事の質や種類で判断すべき」との意見書を既に発表(毎日新聞) 御手洗経団連会長 「年収で明確な基準を示すなど一定の歯止めを設けて導入すべき」(毎日新聞) 経団連 「多様な働き方を尊重するために早期の導入が必要」と12月19日公表の07年春闘経営側方針、経営労働政策委員会報告で明記(毎日新聞) 山口日本商工会議所会頭 「ホワイトカラーには、時間で測るのに適さない職種がある。就業形態の変化を見ながら柔軟な制度にすべきだ」(毎日新聞)
最終報告書は、玉虫色の内容に酷評を受けた。
もはや厚労省は、よりよい経済労働社会を作るという大きな目的をすっかり忘れ、報告書をとりまとめることが究極目的となっていた。
厚生労働省が誤って新制度導入を決意したその過程は、「今後の労働時間制度に関する研究会」(同省諮問機関)が発表した「今後の労働時間制度に関する研究会報告書」で現在の労働実態を正しく把握できなかったことが始まりだ。
初めからボタンを掛け違ったものは、初めからやり直さなければ、どんなにその周辺を繕ったとしても大きな矛盾がずっと残ったままになる。
関係者の主張を見ると、大きな論点は、「導入の必要性」と「年収要件」となっている。
「導入の必要性」という議論の入り口が煮詰まっていないところで、強引に取りまとめてしまったとんでもない進め方であり、報告内容である。
1導入の必要性
そもそも経団連が「ホワイトカラー・エグゼンプション」などという制度をアメリカから聞いてきて、日本でもやろうと、矛盾だらけの幼稚な提言を発表した。
それに対して、厚生労働省は世間知らずの大学教授連中を集めて研究会を作らせ、理論的にはそれなりに筋の通った立派な報告書が提出された。
特に世間の末端労働者たちの労働実態を把握できないこのお偉いさんたちは、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の制度を導入すべきだと報告書に結論付けてしまった。
学者たちの「どうあるべきか論」として純粋に同報告書を読むならば、この報告書にそれなりの評価はできる。しかし世の中とは、
@実際の世の動きも法律の変遷も過去から現在に続いているものである。
A法や理論に関わらず、現実・実態というものがある。
この点について学者さんたちは弱い、ということを私は報告書を何度も読んで実感した。
労働側委員の「既に柔軟な働き方の制度があり、新制度の導入は認められない」という発言は、過去からの整合性の欠如を端的に指摘したものであり、連合幹部の「管理職一歩手前の人に仕事の量や納期まで裁量権を持つ人はいない」という発言は、現実の把握不足を端的に指摘したものである。
制度導入に当たって必要な前提条件がそもそも整っていないのである。
2.年収要件
研究会報告書では年収要件について、次のようにしている。
一定水準以上の額の年収が確保されていること。
個々の労働者が対象労働者となるか否かについては、次に述べるように労働者本人の同意が要件とされるべきであるが、年収額の水準が相当程度高いことは、本人の同意が真意によるものである、そして、労働時間規制による保護を与えなくても自律的に働き方を決定できると考えるための重要な要素となるため、一定水準以上の額の年収が確保されていることが必要であると考えられる。
なお、この年収額は、通常の労働時間管理の下で働いている労働者の年間の給与総額を下回らないことが通常であると考えられる。
「成果主義労働者の給料と職務は連動している」ということで、年収要件は必要という判断である。
しかしその給与水準については、「相当程度高い」という表現を使いながら、「通常時間労働者の平均給与を下回らなければよい」としているのは、微妙な詐欺的表現であり、不適当である。
更に給与水準は企業により様々である。もしかしたら学者さん方は、そもそも中小企業を眼中に置いていないのではないだろうか?!
制度導入の趣旨に立ち返れば、年収要件は絶対に必要なものではない。
本来なら枝葉的な事が、実務的な部分で最大の論点となった。今後の第2ステージに移ってもこの論点が最大のテーマとなりそうだ。
制度導入の根本に矛盾があることの証明である。
矛盾は経営側委員の対立にも如実に顕れている。
中小企業代表の委員は「年収要件を下げなければ制度導入反対」と言い出した。
本末転倒、利害むき出しの様相である。
実務的に私の意見を述べるならば、年収要件のその前に「企業規模要件」を入れてもよいと思う。
そもそも経営管理・組織体制の整っていない中小企業の多くは、「自立的な働き方」ができる裁量権を与えられている者は管理監督者以外にいないからである。しかしこれも実際は「年収要件」で吸収・クリアされるが、先の中小企業代表委員の論理を明確に正す根拠にはなる。
3.制度導入の趣旨
「ホワイトカラー・エグゼンプション」という横文字表現は、感情が入らないようになっているが、日本語にすれば「頭脳労働者の労働時間は最大24時間で給料は一定とする制度」ということになる。
日本語に直して考えてみれば、通常条件下の労働者には、とにもかくにも、とんでもない、あり得ない制度であることが一目瞭然である。
当該議論の元々の精神は次のとおりである。
「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価されることがふさわしい者が、より自由で弾力的に働くことができ、自らの能力をより発揮できるようにする」(研究会報告書原文より抽出)
この精神から純粋に考えると、「その結論はまったく噛み合わないところに落とされた」と言わざるを得ない。
4.対象者要件
最終報告の対象者要件は具体性に欠け、一体どんな人がどれ位の割合で対象となるのかまったく不明である。
労働政策審議会では、エグゼンプションの年収以外の要件についても、具体的にどんな人が対象なのか、労働側が何度質問しても明確な答えはなかった。
では企業はどのような想定をしているのか。
ある大手玩具メーカーは、キャラクター商品などの企画・開発担当者を候補に挙げる。約200人いて、社員の3分の1を占める。「電車や風呂の中でアイデアがひらめくのがおもちゃづくり。労働時間では評価できない」。
大手の総合商社では、30歳過ぎの中堅のうち、財務、人事、経営企画など管理部門の多くに導入可能と見る。(朝日新聞)
具体性のない要件は、ないに等しい。
制度が導入されたら、労働者をモノとしか見ていない経営者は、私たちが通常にイメージするより格段に多くの、ごく普通の一般社員を適用させるだろう!
また上記の玩具メーカーの話は、制度の矛盾をあからさまにした実におもしろい話である。
現行労働時間制度下であっても、電車や風呂の中でアイデアがひらめき、それが仕事に活かされている。
労働者が精一杯働いてよい成果を上げたいという気持ちは労働時間制度とは関係がない。
「労働時間の制約が能力の発揮を阻害しているから、適用除外制度を導入したい」という論理は間違いである。
5.労働界の不信感
労働界には、労働規制の緩和に対する不信感がある。
労働者派遣法では、いったん制度が導入されると業種や期間制限が次々と緩和され、非正社員の急増につながった。
「今回も導入を認めれば、年収条件などが下げられていく。もうだまされない」(朝日新聞)
ホワイトカラー・エグゼンプションの議論の舞台はいよいよ第2ステージとなる政治の場に移ることとなった。
現在の政界の動向は次のとおり報じられている。
自民党 ・「長時間労働を助長しかねず、一般労働者の反発を招く」と不安の声(毎日新聞) ・年収がどの程度なら対象となるか不明な点が問題(毎日新聞) ・「年収1000万円以上」に限定するなら認める(毎日新聞) ・「財界に寄り過ぎた案では選挙にマイナス」(毎日新聞) ・「対応は白紙だ」(朝日新聞) 公明党 ・「年収を明確にしない限り法案を提出すべきでない」(毎日新聞) ・「報告書はあいまいな点が多い。サービス残業などの問題に手をつけず、制度を導入すれば、長時間労働を助長しかねない」(朝日新聞) ・「年収400万円以上の人に導入するとしたら、みんな過労死してしまう」(朝日新聞) ・経済界の言いなりになってこんな法案を出したら参院選前に普通のサラリーマンを敵に回してしまう。民主党を喜ばせるだけだ」(朝日新聞) 民主党 12月6日、「労働法制の対案(中間報告)」をまとめ、その中で同制度に反対の立場(毎日新聞)
政界の興味はひとえに2007年秋の参議院選に向けられている。
政治のことはあまりよく知らないが、同制度反対の立場を取る人たちにとって、参院選のタイミングがよい。
厚労省はたまたまこういうタイミングで最終報告を出さざるをえなかったのだろうか。あるいはもっと理解を得られる報告をしたいと思っていたがそれが叶わなかったということか。
上記政界の動向をざっと見ると各党とも反対意見がある。共産党のコメントはなかったが当然大反対だ。
2006年12月28日現在。この調子では、第2ステージで最終報告が修正されることは間違いなさそうな雲行きである。今後の政界での論議を見守りたい。
注)新聞の抜粋はすべて平成18年12月28日朝刊のものです。