ショートストーリー@
∀ガンダムのテテスをイメージしたショートストーリー
細かい霧雨が少女の服を濡らしていた
森の中に広がる沼のほとりに傘もささずに座り込んだ少女は、寒さと恐怖でただ泣きじゃくっている
目の前に広がる沼も、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をぬぐう手も、雨にぬれた服も、徐々に深くなっていく闇に飲み込まれかけていた
早く家に帰らなければと気持ちばかり焦るが、自分が今どこにいるのかもわからない
それに、ぬれた服は森をさ迷い歩いて体力を消費してしまった幼い体には重過ぎる
「どうしてこんなところに来てしまったんだろう」
そんなことを考えたところで、直接の解決策にならないことは幼いながらもわかっていたが考えずにはいられなかった
答えは単純だった
いつものように母親とけんかをし、たまたま家を飛び出してしまったのだ
それまでも何度か家を飛び出したことはあったが、森の中に入ってしまったのは初めてだった
いつも、母親に入ってはいけないと言われていたから、腹いせに入ってしまったのだ
最初は少しだけ親を困らせてすぐに帰ろうと思っていたのに、気が付けば迷ってしまい雨が降り出した
「寒い…」
声に出しても状況は変わらない
雨が霧雨から少し粒の大きい雨に変化してきている
まるでそれにあわせるかのように体が熱くなっている
視線がぼやけ始め、頭がくらくらし始めた
すっ、と今まで自分に降り注いでいた雨がやんだ
しかし、沼や少し遠くの水溜りには雨が降り続けている
不思議に思ってうえを見上げると赤い色の傘が広がっているのが見えた
「どうしたの?」
一瞬、傘がしゃべったのかと思ったが、そんなはずがないことはわかっている
傘の持ち主の若い女性が発した声だった
「こんなにぬれて。道に迷ったのかい?」
安堵と、そしてなんで女の人がこんなところにいるんだろうという思いと、疲労が重なって答えることができない
「ちょっと。大丈夫かい?」
小さく首を横に振る
「まあ、いいわ。ほら背中につかまんなよ」
そう言うと、傘を持った女性は少女に背中を向けてしゃがんだ
少女は何も言わずに背負われた
「服がこんなにぬれてる。重かっただろう」
こくりとうなずく
女性はそれ以上は何も聞かずに、背中に少女を背負ったまま黙々と森の中を歩いていく
少女は背中でぼーっと雨の降る森の中を見つめていた
女性の赤い髪からは、母親と同じようなかおりがした
それを感じ取った瞬間に、安心感とともに襲ってきた疲労で少女は眠った