暴走天使-1-

「はぃ?」
 思わずあたしは素っ頓狂な声を発していた。
 そして、
「この娘と一緒にやるの?」
 カウンター越しに受付のおねーさんに聞き返す。
「はい、そうですよ。強い方を希望されましたよね?」
「そうだけど……」
 あたしはその娘を見やった。
 背はあたしの肩くらいしかない。ということは140センチもいってないであろう。
 コスチュームはド派手なピンク色を基調としたものに、これまたド派手な、絵の具をぐちゃぐちゃにかき回したような色をしたストッキング。髪は薄水色で左右で束ねているが短いのか、バサッと大きく広がっている。
「何よ!? アタシだって心外だわ。こんなアバズレ女とチャラ男がメンバーだなんてさ」
 あたしの不満一杯の視線を感じた少女は、顔に似合わずとんでもないことを口にした。
「あ、アバズレ女!?」
「チャラ男って俺なのか!?」
 あたしとエクアールが同時に不満の声を上げる。
「そっちのフォマール姉さんはちょっとステキだけどね」
 と、ミルテ見て言う。
「フォース同志頑張ろうね〜」
「よろしくお願いしますわ」
 ミルテはニコニコと機嫌良くうなずく。
 が、あたしとエクアールはそうはいかない。
「ちょっと、さっきの撤回しなさいよ。誰がアバズレ女なのよ!」
「そうだそうだ、俺はチャラチャラしてないぞ」
「うっさい! アンタは黙ってて」
 横から被せてくるエクアールの顔を押さえつけ、
「訂正しなさいよ」
「フンだ。本当の事を言ったまでじゃない」
「んなっ」
 こんな会ったばかりの小娘にバカにされたままでいいのだろうか? いや良くない(断言)。
「そんな口を利けなくしてあげるわ」
「やれるもンならどうぞ〜」
 そんな小馬鹿な態度を取れるのも今のうちよ。
 あたしはロビーでの使用が禁止されているテクニックの──ラフォイエの起動呪文(コマンド)を頭の中で展開させようとした瞬間、
「アリア!」
 急にミルテがあたし名前を呼んだ。
 それに気を取られたため起動は失敗する。
 さすがはミルテ。あたしが何をしようとしたのかを感じ取ったらしい。
 それでも一応
「なによ?」
と不満の声をミルテにぶつける。
「えーっとね、自己紹介がまだなのよ」
「……あーそうだったわね」
 あたしはげんなりと頷いた。
「それじゃあ私からするわね。私はフォマールのミルテ。よろしくね」
 そう言い終えたミルテに促されて、
「俺はヒューマーのエクアールだ。何でも聞いてくれ。よろしく」
 と、本人自慢の金髪をかき上げる。それがチャラ男だってーの。本人は気づいていないだろうが。
「ほら、アリアもよ」
「あーうん……アリア。見ての通りハニュエールよ」
 もうこのコったら──と言いたげな苦笑いミルテを浮かべ、少女に合図を送る。
 少女はコクリと頷くと、
「アタシはフォニュエールのカノンです。テクニックは全て拾得してます。よろしくです」
 笑みを浮かべてぺこりと頭を垂れる。
 うっ、ちょっとカワイイじゃない。
 しかしテクニックを全て拾得しているとは……ミルテですらまだLv27とか位だからなかなかやるじゃないの。
「すごいな〜オレなんてまだLv17くらいだぜ。楽しみだ、これから仲良くしよう」
 さっきの暴言を忘れたのか、エクアールはカノン近寄り手を差し出す。
 その日に焼けた手を見てカノンは眉を潜め、
「ハァ? ロリコン?」
「うがー」
 エクアールは先よりもさらに大きなダメージを受けたようだ。
「俺は……そうなのか……?」
「はいはい、いいからいいから」
 呆然とするエクアールをミルテが介抱する。
 やっぱりかわいくない。ちょっとでも気を赦すと危険だ。
 あたしはそう思い直した。

「ったくぅ〜。シルドラゴンを倒すにはチームワークが大事だってーのに、あの小娘を仲間に入れていいものかねぇ?」
 あたしたちはシティにやってきていた。
 そのシティからしかラグオルには降りられないようになっている。
「う〜ん、よっぽど大丈夫じゃないかしら? ほら、レベルも高いじゃない」
 ミルテはそう言うが、あたしとしては絶対になにかやらかしそうで心配でたまらない。
 当の本人はチェックルームでなにやら預けたり引き出したりを繰り返している。
「エクアール、アンタはどう思う?」
「ん〜いいんじゃないの? ミル姉の言うとおりレベルが高ければ何かと役に立つだろ」
「そんなもんかねぇ」
 あたしはどうにも心配でならなかった。
「──おまたせ。早速行こっ」
 そこへカノンがやってきた。見慣れない武器を手にして。
 あたしたち3人の視線がその武器に集中する。
 それを知ってか知らずかカノンは、
「じゃ森に降りよう」
 と言って、転送器でとっととラグオルへと行ってしまった。
「……フォークだよな?」
 エクアールが言う。
「そのようですわね」
 さすがのミルテも知らないみたい。
 長さはカノンの倍くらいで、先端が3つに分かれていた。その先には一度刺さったら絶対に抜けないような返しが付いていた。
「まるで悪魔の槍だわ……」
 あたしはポツリとつぶやいた。

 ラグオルの森に着くとそこは既に戦場と化していた。
 派手な爆音を立てて炎が弾け飛んだと思ったら、今度はあたしたちも凍えそうな位の冷気が辺りを包み込む。
 その中心にいるのは、やはりカノンだ。
 戦略ってものを知らないのだろうか?
 誰ソレお構いなしにテクニックを──それも高レベルなものをガンガン使っている。
 普段見ているミルテのものよりかなり強力そうだ。
 とりあえず巻き添えを喰うのはゴメンなので、あたしたちはカノンを遠巻きに見守ることにした。
 エネミーは吹き飛んだり氷付けになったり……
「あー刺してる刺してる」
 カノンはあの三叉の槍でざくざくと、凍ったグルグスを突き刺している。
「痛そうだな〜」
 思わずエクアールが漏らす。
 あたしとミルテは頷いた。
 間違ってもあれに刺されないようにしなきゃな。
 と、あたしたちに向かってカノンが歩いてくる。エネミーはまだ全滅していない。
「ちょっと、まだ生きているわよ」
「知っているわよ。それよりさ」
「何?」
「トリフルイド持ってない? アタシなんだか疲れちゃってさ」
 あたしとエクアールはズッコけた。
 そりゃあれだけ乱発すればTPも無くなるってーの。
「はいどうぞ」
 優しきミルテがトリフルイドを差し出す。
「ありがとー」
 満面の笑みを浮かべてカノンはそれを丸飲み(?)すると、追いかけてきたエネミーに向かってまたもやテクニックを連発する。
 あたしたちはその様子を呆然と見つめることしかできなかった。


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