ジェノサイド-4- 綺真友栄

 そこには呼び出された相手──ガナーズの姿はなかった。
 かわりに軍服を着た男が2人と、白衣を纏った者が同じように2人いる。
「あのぅ、ガナーズさんは……?」 
 少々と惑いながらもメルリーンは尋ねた。
「──たしかに記憶は戻っていないようだな」
「これはこれで都合がいいんじゃないか?」
「力のほうは大丈夫なのか?」
 誰一人として自分の問いかけに対する答えを口にしない為、メルリーンはたじろいだ。
「わたし用事がありますので」
 きびすを返そうとしたメルリーンに、
「あーちょっと待ちたまえ」
 白衣を着た男が肩を押さえつけた。
 ハッと振り向くメルリーン。
「ガナーズくんとやらを探しているのだろう? だったら安心したまえ。私たちと一緒に来れば逢える」
 はげ上がった頭にカイゼル髭、おまけに角張ったサングラス。どう考えても怪しさ丸出しなのだが、メルリーンにはそこまで考える余裕はなかった。
 彼女にしてみれば最近ここまで出歩いた経験はなく、遠出した目的であるガナーズもいなかった。
 そのガナーズの居所を知っているという人がいる──疑いの余地はなかった。
「では着いてきたまえ」
 カイゼル髭の男がそう言うと、となりにいたもう一人の白衣を着た男がテレパイプを使った。
 ヴゥゥンと光が溢れ、シティへと繋がる。
「さあどうぞ」
 軍人に促されたメルリーンがテレパイプに足を入れた時、背後で木々をかき分ける音が聞こえてきた。
 姿を表したのはルシエントだった。
「いや〜お待たせお待たせ。少々手こずってな」
 と、視線がテレパイプに向く。
「なんだ、戻るのか? 報酬はどうなるんだ、ガイラムさんよぉ?」」
 カイゼル髭の──ガイラムと呼ばれた男は、
「そんなものは後でもいいだろう? こっちはそれどころではないのだよ」
「ああ? そうやって踏み倒す気だろ? 危険な橋を渡ってきたんだ。今すぐよこしな」
 ずいっと一歩踏み出すルシエント。
「払えないならこのお姉ちゃんは渡せないぜ」
 メルリーンの腕を掴み自分の方へと手繰り寄せる。
 当のメルリーンは何が起こったのかと、目をパチクリさせている。
「おいおい乱暴だなぁ。それがきっかけで彼女が目覚めたらどうするんだい?」
「うるせー! さっさと寄越しな」
 と、ルシエントが背負っているヴィクターアックスに手を掛けた瞬間、激しい轟音と共に真っ赤な花びらが中に咲いた。
「バカヤロウ! なにやってんだ!?」
ガイラムの隣にいた白衣の男が軍人達に叱咤を飛ばす。
「いや、武器を手にしようとしていたので……」
バツの悪そうに言う軍人の手にあるマシンガンから硝煙があがっている。
「万一のことがあったらどうするんだ!」
 尚も白衣の男は軍人を責め立てるが、視界の角にはいったそれを見て動きを止めた。
 微かな温もりに覆われた顔を拭い、それの正体を見極めるべく両手をかざす。
 その手は鮮血に彩られていた。
 背後でどさりと音がしたが、メルリーンの耳には届かなかった。
「あ……ああ……」
 両手が小刻みに震え出す。
 何を言っているのか、口はパクパクと開いたり閉じたりを繰り返している。
 その状況を静観していたガイラムだったが、
「まさか……」
 瞬間にあの時の記憶が蘇る。
 実験体HR-021が目覚めたと思ったら暴れだし、研究員数名の命と機材を粉々に破壊して逃走したあの日の記憶だった。
 早く逃げなければ──
 ガイラムがその答えを導き出した時にはもう遅かった。
 目の前にいる、自分が生み出した殺戮兵器は足をついたまま体躯を反らし絶叫した。
 次の瞬間、ガイラムは首のない自分の身体を見た。


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