原作:旋風 焔 (つむじ ほむら) 第一話 「レッドリングリコを知っているか?」 その男は唐突にオレに向かって聞いてきた。 「知っている」 馬鹿にするなと思い憮然とした感じで答えてやると、 「彼女がどこにいるか知っているか?」 男はまるで幽鬼の様に虚ろな雰囲気で問うてくる。 「知らねェよ」 そっけなく答える。 (馬鹿か?そんな事を知っていたら今頃、総督府に出向いて総督からたんまり礼を貰っているだろが!) 「そうか、、、」 立ち去る男。 「なんだあいつは?」 依頼人との待ち合わせのカフェ。 時間よりも早く着いてしまい暇を持て余していたとは言え 突然の事に少しビックリしたオレが、同じく隣の席に座るフォニュエ−ルに話し掛けると。 「え〜!?知らないのぉ〜!?ハインツ」 と、かなり小馬鹿にした風な答えが帰ってきた。 「んぁ?あの男が誰か知ってるのか?ルキア」 そのフォニュエールに聞き返してみる。 「あんたってホント情報に疎いんだからっ!!」 「彼が最近ハンターズの間で超有名人で、期待の新星で、 実は元パイオニア科学研究所の博士で、あのレッドリングリコとも 母星のフォトン研究所で同期だったとかって噂の天才ハンサムハンターズの ノトス=ヒューガー様なのよぉん!!」 と一気にまくしたてる彼女。後半は目の中に・マークが浮かび上がってる有様だ。 「なぁにが『天才ハンサムフォーマ−様なのよぉん!!』だ!バ〜カ!!」 バーカのカの字も言い終わらない内に、 「ドボォ!!」と言う鈍い音と共にオレの右脇腹ちょうど肝臓の上あたりにルキアの左フックが入ってきた。 「うごぉうっ!!」 呻き声とも唸り声ともつかないまるで、ゴブ−マの様な声を上げつつオレは目の前の机に突っ伏した。 「人の事バカにできる程あんたはレベル高かったのかしらぁ?」 「なんだってぇ〜〜。フザけんなっ!!テメェ〜ぶっ殺すぞぉ〜。こお見えてもレベル75だぞ!!」 フォースの物とは思えない程の強烈なボディブローを急所に受けたオレは 額に脂汗を滲ませながらも精一杯の強がりを目の前でムカツク言葉を浴びせる小娘に見せてやる。 「彼のレベルを見たの?」 そんなオレの強がりもさらりと受け流しつつ平然とした顔で言う。 「?」 「彼、レベル82よ」 「はぁ!?」 オレは脇腹の痛みも忘れて惚けてしまった。 「そうなのよ〜!!彼ってばハンターズに入って僅か一週間でレベル82なのよぉん!!」 両手を胸の前で合わせつつ身体をくねくねとよじる奇妙なダンスを踊りつつ 空恐ろしい事をこの小娘は吐いた。 「ぬぁんだってぇ〜!?」 「マジかよ!?」 オレは目の前が真っ暗になる気がしてきた。 オレの今までの血の滲む様な日々は何だったのだろう? オレの希望に燃えて入隊したハンターズでの今までの生活は何だっったのだろう? 今夜のおかずは何だったのだろう? ふほほほ〜ルキアさんや〜ワシャァ飯喰ったかいのぅ? ふがぁ〜〜バァさんやぁ〜。 「でもねぇ〜、何で今まで科学者だった人がハンターズに入ったのかが不明なのよねぇ〜?」 「ん?なんだそれ?どう言う事だ?」 意味不明な事を言い出すルキアに聞いてみる。 「う〜ん、あたしもよくは解らないんだけどぉ。 今も言った様に、一週間前までは彼ってば一介の科学者だった訳よね、 しかもそれなりの地位にあった訳よね、 それが何で急にしかも危険な仕事の多いハンターズなんかに入ったのかって事なのよね〜?」 と言われてもますます訳が解らない。 「あたしの掴んだ情報によるとぉ〜。一人のハニュエールが絡んでるらしいのよね〜」 さらに訳が解らない。 「ハニュエール?」 と促すと。 「表向きはヒューガ−様の養女って事らしいのよね」 ふむ養女か、珍しくはないな。 実際珍しいことでは無い。この世界ではオレ達人間(ヒュ−マ−)とアンドロイドと 遺伝子操作に因って産まれたニューマンと呼ばれる種族、人種がいる。 目の前にいるルキアもそのニューマンだ。 ニューマンは生体的な制約があり寿命が短く設定されている人造人間である。 人造の為、親と言う物がいないのである。 そう言った経緯がある為、親のいないニューマンの子供を養子として引き取る制度もあるのだが、、、。 「その養女のハニュエールとヤツのハンターズ入りとの接点は?」 どうやら何か情報を知ってそうなルキアから引き出そうとふってみるが。 「さぁ!?解んないわ〜」 ガクっと再び机に突っ伏すオレ。 そうだ昔からそうなのだコイツは、コイツの話はいつも肝心の所が抜けているんだ。 昔と言ってもコイツ。「ルキア=ル−ニア」と出会ったのは、 オレがパイオニア2に乗り込み母星を出発してから、5〜6年経った頃だ。 そうここラグオルに到着する2年程前の話だ。 オレはある依頼を受けたはいいが、依頼人のあまりの胡散臭さに対して ちょっとしたイタズラつ〜か。 まぁ簡単に言えば、仕事をほっぽり出した訳だ。 そのついでにその依頼人がラグオルでの人身売買目的で持ち込んでいた 冷凍睡眠状態のニューマンの少女を依頼料代わりに戴いた訳だ。 つ〜か見捨てて置けなかったつ〜事かな? そんなこんなでルキアも2年程で大きく育ち。 ほんとニューマンの成長の早さには驚かされるぜ。 現在は、オレと同じ様にハンターズとして依頼される仕事をこなしている訳だが。 どこをどう育て間違えたのか、やたらと凶暴だわ、情緒不安定だわ、 先の話だが一番必要とする情報の肝心の部分が抜けていたりと、 いろいろと困った状況な訳だ。 そんな昔の事とかを思い出しながら感慨に耽っていると。 「ハインツ=クルーガ−様ですか?」 とオレの名を呼ぶ声がする、しかも鈴の鳴る様な綺麗な声でだ。 すかさず視線を声のした方へ向けると、そこには。 「お待たせして申し訳ありません。わたくし、エレナ=ヒューガ−と申します。」 銀色の長い髪、蒼い瞳、透ける様な白い肌、肌の色と同じくらい白いハンタースーツ そして、ニューマン特有の尖った長い耳。 すらりとした長身のハニュエールの女性が佇んでいた。 元々、ニューマンは人為的に造られたせいもあってその容姿には秀でたものがあったが 彼女の場合それが飛び抜けて優れている様に思えた。 そうつまり。 「うおっすっげぇ〜美人じゃん!!」 である。 「グキン!!」 『美人じゃん』の『ん』を言い終わらない内に頭部に鈍い音と衝撃が襲う。 「ごおうえあ〜〜!!」 ラグオルの遺跡と呼ばれる地域に出現するエネミ−、ディメニアンが発する様な声を上げながら オレは地面へと椅子ごと倒れ落ちた。 なんか生暖かいモノが打撃を感じた側頭部から流れ落ち地面に赤黒いシミを広げて行く。 (あ〜朱鷺が見えるにょ〜ラララァ〜いつでも遊べるにょ〜) なんか遠い昔に流行ったロボットヒーロー物と呼ばれるビジュアルムービーと共に 不思議な姿をした幼女が「にょにょにょ」と意味不明な言葉を発する光景がオレの脳裏に蘇る。 「いってぇ〜ぞっ!!このクソガキがぁ〜っ!!ってオメェっ!? それってばラコニアの杖じゃね〜かよっ!?」 白い髭を生やしたロボットが蝶になった辺りで意識を取り戻したオレは、 自身を撲殺しようとした犯人に向かって悪態をつこうとしたが。 「あらラコニアよりも硬かったなんて凄いわね」 と、犯人=ルキアは恐ろしい言葉を吐きやがった。 こいつはどうも最近、オレが他の女とかに気を向けるとすぐにこういう反応を示してきやがる。 まったく何が気に入らないのか、これも困った事の一つだったりもする。 「あの?大丈夫ですか?」 と心配そうに声をかけてくるエレナ、、、はて? 「エレナ=ヒューガ−さん?」 と彼女に聞くオレ。 「はい。」 と返事をする彼女エレナ=ヒューガ−さん。 「ノトス=ヒューガ−?」 うっかり声を漏らしてしまうと、 「あら?ノトスは私の養父ですの、御存知ですの?」 とあっさりと関係を話すエレナ。 「え!?あ〜そうなんですか?いや〜そうなんですか〜」 (なんだか変な具合になってきたな〜) と次に続ける言葉を探していると、横から 「あんな素敵な方がお父様だなんて羨ましいわ〜エレナさん〜。」 とルキアがオレに当てつける様な口振りでエレナに話し掛けてきた。 「いえ〜そんな事はないですのよ〜。ああ見えても実は結構、お茶目な所があったりするんですのよ〜」 そんな事を聞いている内に、オレはヒューガ−ってヤツに対して第一印象の悪さも手伝ってか ますますムカツクイケスカネェヤローって感じに思えてきた。 そんなオレの心情も関係なく、エレナとルキアの会話は盛り上がる一方だ。 「え〜そうなんですか〜?ウチのコレなんてもうどうしようもないくらいの唐変木で、ズボラで、 甲斐性無しで、大飯喰らいで、役立たずで、日曜日なんて部屋でゴロゴロしてるんですよ〜」 おいおいコレは無いだろが、それにオレはゴロゴロなんてしない!!って何か違うゾ!? 「あの〜お二人さん?楽しいお話の最中に失礼しますが、今日は一体何の目的でここで 待ち合わせしてたのか、お忘れじゃございませんか?」 このまま延々オレをネタに盛り上がられても困るし、肝心の依頼の内容の方も早めに 聞いておきたかったので、話しを止めにかかる。 「何よっ!?このト−ヘンボク!!あんたまだそこにいたの?さっさと帰ったら?」 と訳の解らない事を言い出すルキア。 「あらあら申し訳ございません私としたことが、肝心の依頼の事を忘れてましたの。」 となんだか最初の印象よりもかなり変わってきたエレナが話を戻す。 「とりあえず、依頼の内容を確認させて頂きます、エレナさん?」 と、ようやく依頼の話が始まった、隣ではまだ言い足りないらしいルキアがオレの方を睨みつけている。 何でこんなに睨まれなければいけないんだろうぅ?と理不尽さに悩みつつも話を進める。 「では依頼の内容ですが、先程にもお話しました。私の養父であるノトス=ヒューガ−を止めて戴きたいのですの。」 と、先の会話の続きか?と思う様な突飛な話だった。 「止めると言いますと?」 何やらとんでもない内容な気がしてきた。 「彼は、とんでもない事をしようとしているんですの。それをする前に彼を見つけて欲しいのですの。」 とんでもないとはまたアバウトな表現だ。 「ヒューガ−は何をしようとしているんですか?」 そこが問題だ、もしかしたら殺人を犯そうとか、銀行強盗を計画しているとか、総督府から機密データでも 盗むとか、武器屋から武器を盗むとか、依頼料だけ貰ってトンズラとか、下着ドロとか、うひひ。 ザマ−ミロ〜ヒューガ−め〜。 「あの?クルーガ−様?どうかなされましたですの?」 と、何故かすっかりオレの中では犯罪者となったヒューガ−の事を思い浮かべていると心配そうにエレナが 「え!?いや!何でもないですよ。はっはは。」 慌てて誤魔化すが、 「どうせ、ま〜たロクでも無い事を考えてたんでしょ〜!?」 ルキアが余計な事を言ってくる。 「こほん。で?一体何をしようとしているのか詳しくお聞かせ願いますか?」 そうそれによってはこの依頼は断る事になりえる。 「彼は、、、。」 少し言い淀んだ後に。 「レッドリングリコを探しているのです。」 第一話 了 |