「HUNTER'S BEBOP」 第7話 作:旋風 焔

 第7話
 まるで身体の内側から何かが膨れ上がりそれが破裂した様な
 物凄い衝撃が身体中に走った。
「何なんだっ!!?これは!?」
 あまりの衝撃に身体が言う事をきかない。
 なんとか首だけを巡らせてルキア達の方を見ると
 オレと同じように地面に倒れているのが見えた。
「くそぉうっ!!」
 なんとか腕を這わせて前に進む。
「ルキア〜!!エレナッ!!」
 ようやく皆の顔が見られる位置まで這って行く。
「大丈夫か!?みんなっ!!?」
 声をかけると。
「グランツだ、、。奴が何故一体?」
 ヒューガ−が疑問の声を発する。
「それは、どう言うこったぁ?」
「闇の存在である筈のDFが何故、光のテクニックを使う事が出来るのだ?」
 そうダークファルスは闇そのものと言っていい存在だ
 よって自身の存在と対を成す。光の存在の力を用いた光のテクニックを使う事など出来はしない。
「しかし、奴はそれを使ったんだろ?」
 とヒューガ−に問う。
「そうだ一体、どうして?そもそもあのテクニックを使えるのは、私か、、、まさか、、?
 そんな馬鹿な!?」
 と不思議な顔をするヒューガ−。
「どうした?何か心当たりがあるのか?」
 と聞くと
「リコだ、、、彼女は奴の依代になっている。その彼女の身体と力を使ったのか?」
「何だってぇ!?それじゃぁヒューガ−が最初に放ったグランツが効かなかったのは
 そのリコの身体を盾にして奴自身へのダメージを防いだって訳か?」
 なんて事だ。これではヒューガ−がいくらグランツを放った所で、DFには全然効かない所か
 そのダメージは全部リコに行ってしまうって寸法なのだ。
 オレは愕然とした。
 唯一の頼みの綱が切れてしまったのだ。
「くそぉ!!他に奴に弱点は無いのか!?奴は倒せないのか?ここまで来て!!ちくしょう!!」
 オレは拳を地面に叩き付ける。
「諦めるのはまだです。ハインツ・クルーガ−」
 と以前聞いた事のある声がすぐ間近からする。
「あんた。さっきの!?」
 目の前にいるルキアから先程まで一緒だった、
 あの女性の声が再び発せられていた。
「それが奴の、ダークファルスの弱点なのです」
「リコが弱点?まさか!?」
 オレは咄嗟に思い付いた考えを振払おうとした。
「奴がこの世界に現出する為の依代としている、
 リコとの接続を解除してしまえば奴はこの世界に留まる事が出来なくなり、
 元いた闇の次元へと封じる事が出来ます」
 そうだ、奴がこの世界に出る為の依代として選ばれたのがリコならば、
 奴がこの世界へと繋がる為の方法を閉ざしてしまえばいい。
「つまりリコを殺すって事か!!」
 オレは思わずルキアの身体を借りた彼女に掴み掛かってしまっていた。
「あ、すまねぇルキア」
 目の前のルキアの顔を見て、慌てて手を放す。
 しかし怒りは納まらない。
「あんたはぁ!さっき確かリコを助けられるって言ったよな!?
 あれは嘘だったのか?何か別の方法とか無いのかよっ!?」
 彼女に不満をぶちまける。
 オレ達はリコをパイオニアの人々を救いに来たんだ、なのにその助ける相手を
 殺せとは。全く納得が行かなかった。
「残念ながら、、、。本当なら方法はあるかもしれません。
 しかしそれ以前に時間が無いのです。
 このままでは、奴とリコが完全に融合してしまい
 そうなれば、もはや接続を解除する事も出来なくなり
 ダークファルスを倒す事も叶わなくなります」
 と淡々と言う彼女。
「オレは納得いかねぇ!!」
 何か方法があるはずだ。
「方法はある」
 その声にオレは振り向く
「ヒューガー!?ほんとうか?」
 声の主。ノトス=ヒューガーに向き直る。
「簡単に説明すると。ようは直接DFに取り付きリコを引き剥がせばいいのだろう」
 全く簡単な説明だった。
「ははは。全く大したアイディアだぜ!それでキマリだ!!」
 オレは拍子抜けしたがそのアイディアに賭けて見る事にした。
 確かに時間が無さそうだったし、リコを殺すよりかはずっとマシだったからだ。
「しかし、ヒューガー?あなたまさか?」
 ルキアの姿をした彼女が訝しがる。
「私は、罪をあがないます」
 その視線を受けたヒューガーは、そう一言だけ言った。
「分かりました。あなた達に運命を託したのは私ですから、やはり全てを任せます、、、。
 あ!いけない奴が!!ああっ!!」
 突然声を上げたかと思うと彼女はよろめき倒れそうになった所をエレナに抱きとめられる。
「あ、駄目。急いでハインツ。あの人達が止めている間に、早くDFを倒さないと間に合わない」
 意識の戻ったルキアが慌てた声で言う。
「ヒューガー!!どうすればいいんだ?」
 意味は解らないがさっきの彼女が何かDFと関係しているらしいと踏んでいた
 オレはルキアの言う事を信じ、ヒューガーに作戦の説明を促す。
「まずは君のマグのリミッターを解除する」
 おもむろにオレの肩口で浮遊していたマグを掴み取り何やら細工を始めるヒューガー。
「このマグ細胞をこいつに与え細胞変化を起こさせる」
 一見アンプル風な容器の中の物をマグに注入する。
 やがてマグの形が変型し耳の様な物と足の様な物が生えたマグへと変わる。
「このマグには特殊な能力があって
 シンクロ率が上がると装着者の周りにフォトンによる特殊な防御障壁を発生させる」
「ギュイーーーーーーン!!」
 おもむろにそのマグが光を発しオレの周りにフォトンの壁の様な物が現れる。
「絶対防御障壁。これで奴からの攻撃は全て躱せる。
 ただしこれは諸刃の剣だからマグの耐久力が無くなれば、そのマグは自滅してしまう」
 とあっさりと恐ろしい事を言う。
「なんだって!?じゃぁこのマグはもう使い物にならないのか?」
 それほどマグに愛着があった訳では無いが、そう言われると何だかマグが可哀想になってしまう。
「すまない。この償いはする」
 ヒューガーはマグを見つめながらぽつりとそう言った。
 それはオレに対してなのかマグに対してなのか、
 そう聞こうと思った時。
「ハインツ=ヒューガー君は私が最近このパイオニア2に於いて
 研究をしていた内容は知っているんだったな?」
 と聞いてきた。
「ああ、延命。寿命を延ばすとかって研究だったか?」
 そう彼はフォトンを利用した延命の研究をしていた。
 その研究の為にリコを探しここまで来た。
 そして、一度はDFに取り込まれそうになった。
「ニューマンの寿命はとても不規則で短いと言われている。
 それは科学の発達したこの世界でも修正しようのない事実。
 否、むしろ科学によってもたらされた悲劇なのか、、、。
 私はそれに抗いたかった。
 人と同じ時を過ごす事を出来るようにしたかった。
 そうこれは私自身のエゴだったんだよ。
 2年前に出会ったかけがえのない存在を守りたいと願う
 私のエゴ。
 そのせいで私は取り返しの付かない過ちを犯す所だった。
 結局研究は完成しなかったが、私の代わりに誰かが引き継いでくれるだろう」
「いいじゃねぇか。エゴでも何でも自分の大事なかけがえのない物を
 守りたいって思うんならよ。」
 オレと同じ運命を背負った男の顔を見乍らそう言ってやった。
「オレだって同じ事をしていたさ」
 そう付け加える。
「ありがとう。ハインツ=クルーガーこれで思い残す事は無い。
 君にエレナを託す」
 笑顔でそう言った途端、ヒューガーの身体が光を放つ。
「何ィ!?どうした!!ヒューガー!!おわっ!?」
 目の前にいる男が突然オレの身体を掴み
 周りにいるエレナとルキアを弾き飛ばした。
「きゃっ!?」
「ノトス!!?」
 悲鳴を上げるエレナ
「リューカー!!」
 一瞬エレナの方を窺った後、
 転移のテクニックを発動させる
 オレとヒューガーの身体が光に包まれ
 次の瞬間には身体全体が浮遊感に包まれていた。
「ってここは!?」
 周りを見るとオレは空に浮かんでいた。
「ハインツ!!このままDFの胴体に突っ込め!体内からリコを救い出すんだ!!」
 オレの身体を抱えるヒューガーが叫ぶ。
「DF!?」
 オレの足の下にDFの身体が浮かんでいた。
 オレはようやくリューカーでDFの真上に転移していた事を知った。
「マグの絶対防御障壁でDFの攻撃は君に当たらない
 体内に入っても奴に取り込まれる事もない!!
 ただし!!さっきも言った様にタイムリミットがある!!
 素早くリコを助けだせ!!いいなっ!!」
 そう言い続ける間にも落下しているオレ達とDFとの距離が縮まってくる。
「私が穴を開ける!!そこへ飛び込め!!」
 そう言った途端に
「ラフォイエ!!」
 DFの身体に爆発が生じる。
 爆発によってDFの身体に穴が開くが、ひと一人入れるかくらいの小さな穴だった。
 オレ達の存在に気付いたDFが落ちてくるオレ達を攻撃しようと
 その巨大な腕を振るおうとしてくる。
「大丈夫だ!!このまま突っ込め!!」
 そう言うとヒューガーは抱えていたオレの身体を放しDFの腕の方へ向かって落下して行く。
「ヒューガー!!」
 次の瞬間、DFの振るった腕によってヒューガーが弾き落とされた。
 木の葉の様に空を舞う彼の身体が、オレにはひどくゆっくりと見えた気がした。
「あいつ!!始めから囮になるつもりで!!バカヤロウ!!」
 オレは悲しみと行き場の無い怒りに歯を食いしばりながらDFの体内へと飛び込んだ。


 第7話 了


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