第8話
暗黒だった。
目を開けていても何も見えない。
周りを手探りして見るが何も手に触れない。
足下もふわふわしていて何だか覚束ない。
「リコを助け出せって言ってもこれじゃぁどこにいるやら解んねぇぞ!!」
焦るオレはじたばたと、もがき続ける。
ふと目の端に光を捕らえたオレはそちらに目を凝らす。
ぼおっと微かだが光が灯っている。
ふわふわした地面をなんとか歩いてそちらに向かう。
光に近付くにつれ、その周りの状況が目に入るようになり
人陰がその光のそばにあるのを見つけた。
更によく目を凝らすと、周りに幾人かの人陰も目に入ったが
「何だ?何故こんな所に人が倒れているんだ?」
光の周りには数人の男女らしき人陰が倒れ伏していたのだ。
突然、光のすぐ側に倒れていた人陰が動き出した。
オレは咄嗟に身構える。
「よくきてくれました。ハインツ=クルーガー」
とその人陰はオレの名を呼ぶ。
しかも以前にも聞いた声だった。
「あんたは、、、!?」
オレの目の前にさっきまでルキアの身体を借りて
ここまで導いてくれた女性がいた。
顔付きはとても落ち着いた声からは想像がつかない程
幼くまだ少女の面影を残していた。
「一体どうなってるんだ?この倒れている人々は!?」
疑問を口にすると
「彼等は光を継ぐ者達です」
と彼女は答えた。
「光を、、継ぐ者?」
不思議な韻を含んだ言葉だった。
何故かオレは胸の奥底が締め付けられる様な感じがした。
「あなたにこれを託します。これでDFを倒して下さい」
彼女は辺りを照らす光源である光をオレに向ける。
「これは?剣?」
それは光を発する剣だった。
「エリュシオン。DFを倒す事の出来る唯一の剣」
オレがその剣を手にした瞬間、辺りに更に強い光が満ちあふれる。
「うおおおおおおおお」
体中に力が漲る。
目映いばかりの光に照らされた周りから、さっきまで倒れていた人々が
立ち上がり光に吸い寄せられる様に近寄ってくる。
「彼が継承者か!?」
「我らの意志を継ぐ者」
「闇を祓い光を齎す者」
「継承者に力を!!」
「闇に光を!!」
人々は口々に讃える言葉を発しながら、光へと姿を変え剣に吸い込まれて行く。
「あなたが、あの子達のパパなのね」
目の前に一人の女性が佇んでいた。
その姿は、どこかエレナでもある様だが、ルキアでもある様だった。
「あの子達をよろしくね」
遠い未来を見る様な目をして、そう言うと彼女もまた光へと姿を変え剣に吸い込まれる。
全ての人々が光と成り剣に吸い込まれると
「これで継承の儀式は済みました」
最後に残った彼女が言った。
「継承って何だよ?あんた達は一体何者なんだ?」
「あなたは知っているはずです。光の因子を受け継ぐあなたなら
光の記憶を持っているはずです」
と彼女は言う。
「光の因子?記憶?」
その瞬間オレは、オレの頭の中にある記憶の扉の様なモノがパァっと開かれる様な感じがした。
そして全てを知る事が出来た。
否、持っていたものを取り戻しただけの事だった。
かつて高度に栄えた古代宇宙文明があった。
その文明は精神・科学あらゆる分野に於いて高度に発達した文明だった。
科学により不老不死を手に入れ、精神の翼を広げ宇宙の真理をも紐解き
宇宙の隅々にまで広がりを見せていた。
だがしかし。
どんなに科学が進歩しようとも。
どんなに文明が発達しようとも。
人が人である限り。
それはどうしようも無いものであった。
欲。
それなくしては人は人足り得ない。
だがそれを封じてしまおうと欲するものが現れた。
その人物はあるシステムを作り上げ
それによって人の欲を司る事に成功した。
それは始めは上手く機能していたが
やがて暴走を始める事となる。
そんな時にそれは現れた。
ダークファルス。
その存在は瞬く間にその世界の人々の心を侵食し始める。
あっと言う間の出来事だった。
文明は完全に滅び去り。
僅かに残された人々は辛うじて残された叡智でダークファルスを封印した。
しかし完全には封印出来ずに、ダークファルスの因子は宇宙の方々へと散ってしまった。
残された人々はその因子によって再びダークファルスが復活する事を予見し
その因子を見つけ封じる事の出来る
光の因子を植え付けた者達を宇宙へと解き放った。
そしてある時は、復活を未然に防ぐ事が出来。
ある時は復活を赦し数多くの犠牲を伴い
それを封印してきたのであった。
その因子の一つがここラグオルにも封印されていたのであった。
やがてこの地を訪れた我々がその封印を解いてしまった
と言う訳だったのだ。
「本来ならばこの次元、時間軸ではDFは復活しない筈でした
しかし奴は因果律を操りこの世界に復活を果たそうとして来ました」
おもむろに彼女はそう言った。
「光の継承者であるリコを操る事でか、、、」
記憶の一部にあった光の継承者にリコの名があった。
「そうです、そのエリュシオンは本来ならばリコが受け継ぐべきだった物なのです
そしてあなたはその手助けをする役目を担う筈でした」
その通りだオレやルキアやエレナ、ヒューガ−もその役目を持っていた。
「ヤツの仕業だな、DF。ヤツは綿密に因果律を狂わし自らの復活の刻を早める事を
画策した。地下に埋もれた自らを封じた宇宙船。これはまだ発見される筈ではなかった。」
そうだヤツはパイオニア2に乗ったオレ達とリコが出会う前に
光の継承者が完全に揃う前に自身の復活を計画していたのだ
「ヤツの計画にまんまと嵌った訳だな」
苦々しい顔をしてオレは周りDFの体内を見回した。
「さてと事情は解った。始めに言った様にオレはリコを見捨てるつもりは毛頭ないからな」
いつまでもDFの体内でのんびり思いで話をしている場合では無い
こうしている間にもヤツは復活を遂げようとしている。
「いい加減リコを出せ!!DF!!」
オレは光の剣を構えつつそう言い放つ。
ドクン!!
そう言った途端、周り全体が大きく震えた。
「苦苦苦、我ノ思惑通リニ事ガ運ンダノハ、コノ娘ノオ陰ダナ!!」
オレの中の光の記憶が過去、幾度となく聞いてきたあの声が響き渡る。
「この声、いつ聞いても向っ腹が立つゼ!!」
オレはヤツの放つプレッシャーを吹き飛ばす様に言う。
そして視線を自身の正面に見据える。
その先に立つ人陰に向かって
「やい!糞野郎!!さっさとリコの身体から出やがれ!!オレ様が相手してやるぜ!!」
オレの目の前に立つのはリコの姿をしたDFだった。
「苦苦苦!残念ダガソレハ無理ナ話ダナ!!光ノ継承者ヨ!!」
ハンターズに所属する者ならば誰もが憧れるトップハンターとして
有名な「リコ・タイレル」
彼女がオレの目の前にいる。
しかしその身体の内には宇宙の災厄として封じられて来た
闇の意識体ダーク・ファルスが宿っている。
そいつがオレに向かって話かける。
「オ前達ハ負ケタノダ!永ク続ク、コノ下ラナイ因果ニ終焉ヲ齎シテヤロウ!!」
そう言うとヤツは右手に持っている物を構える
それは剣だった。
しかしそれは真っ黒な刃を持つヤツの発する闇そのものと言っていい
否、ヤツの思念そのものである
それが剣の形と成って現れたのだ
闇の剣を構えDFリコはオレに向かって剣を振るってきた。
ブオオオオオン!!
闇のフォトンをまき散らしながら剣はオレの目の前を掠める。
「くぅ!!」
寸での所でオレは手にした光の剣で
闇の剣を受け止める。
ガギギギッ!!
光と闇が激しく明滅する。
「うおおおお!!」
激昂し全身の力を用いてそれを押し止める。
なんて力だ!?
本体のリコの力とDFの発する闇のフォトンの圧力に圧倒される。
まともに力比べをするのを不利と悟ったオレは剣に加わる力を
横へと逸らせる。
「ちぃ!!あんたとはもっとまともな状況でやり合いたかったよ!リコ!!」
なんとか間合いを離すが、すぐさま間合いを詰め闇の剣を打ち込んでくるリコ。
オレもなんとか受け止め、躱す。
「殺られる訳にはいかねぇが!
殺る訳にもいかねぇ!
くそっどうすればいいんだっ!?」
遠慮なく必殺の一撃を打ち込んでくるリコを相手に
オレはただ光の剣で躱すのみ。
「リコを討ちなさい!でないとあなたが死んでしまいます!!」
彼女が叫ぶが、オレはその言葉に耳を貸さない。
「巫山戯るなっ!!どうしてあんたはそう簡単に諦める事が出来るんだ!?」
リコの斬撃を受け流しつつ彼女に問う。
しかし返事が無い。
渾身の力で相手の攻撃を弾き、再びオレはリコとの間合いを大きく取った。
彼女の方を窺うと
「誰も諦めるなんて事出来ないわ!
でも、それが運命なのよ!
仕方無い事なのよ!!
DFに狂わされた因果を修復するには
何かを犠牲にしなければならないのよ!!」
涙を流しながら叫ぶ彼女。
「たとえそれが自分自身の分身だとしてもよ!!」
オレは再び記憶を蘇らせた。
彼女の現世での生まれ変わりがリコだと言う事を
最後まで自分自身を取り戻そうと戦っていたのが
彼女だと言う事を。
「お願いハインツ、リコを私を討って!!」
血を吐く様な悲痛な彼女の叫びを受けたオレは、、、。
第8話 了
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