「HUNTER'S BEBOP」 第9話 作:旋風 焔

  第9話
  光と闇が渦巻いていた。
 オレの目の前で。
 オレの持つ光の剣は真直ぐリコの身体に飲み込まれていた。
 オレはリコを見つめていた。
 彼女は聖母の様な穏やかな顔をしてオレを見つめ返していた。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
 DFの断末魔の叫び声が聞こえる。
 オレはその叫び声を聞きながらも
 著しく現実感を欠いていた。
 そうまるで遠い世界の出来事の様に感じていた。
 足元が大きく揺らぐ。
 DFの身体が崩壊を始めたのだ。
 エリュシオンの光がオレ達を包み込む
 DFの身体もオレもリコも何もかもを
 その光はオレの意識の中にまで入り込み
 そしてオレは天空へと引き上げられる感覚がして
 やがて全てが真っ白になり
 何も解らなくなった。
 ルキアとエレナはDFが崩壊を始めたのを目の当たりにしていたが
 その場から逃げる事はしなかった
 何故ならば自分達が待つべき人物が帰って来ないからであった。
「大丈夫きっとあの人は帰ってくるわ、、、」
 今にも泣き叫びたいのをじっと堪える少女の肩を抱き留めている女性がそう呟く。
 先程、自分の最愛の人がDFの手によって奈落の底へと撃ち落とされても
 彼女は泣かなかった。
 
 蒼い空が広がっている。
 どこまでもどこまでも。
「なぁ!?」
 オレは草原に寝転がり、傍らに同じ様に草原に座っている彼女に声をかける。
「なに?」
 オレを見つめながら彼女が返事をする。
「・・・・何でもない」
 オレは彼女を見つめつつそう言う。
「ふふふ」
 彼女もオレを見つめつつ穏やかに笑っている。
「ずっとさ、このまま一緒にいれたらいいなってさ」
「うん」
「君とさ、ずっと」
「うん、私もあなたと」
 緩やかな風が頬を撫でて行く。
「ずっと二人で一緒に、、、」
 遠い昔に交わした約束。
 
 ハインツは目を開ける。
 彼の前にはリコが佇んでいた。
 その背後には澄み切った蒼い空の下にそびえる塔
 DFが封じられていた物と同じであるが、そこからは闇の力も邪気も何も感じなかった。
「なぁ?これでよかったのか?」
 目の前のリコに問いかける。
 彼女は柔らかく微笑んで、ハインツの問いに答えた。
「もう行って?みんながあなたの帰りを待っているわ」
「あんただって待っている人がいるんだろが?」
 彼の脳裏に浮かぶ一度だけ面識のあるパイオニア2総督とその秘書の女性の姿。
「別れは済んだわ」
 少し寂しげにそう呟く。
「そうか、、、」
 ハインツは彼女に背を向け歩き出そうとした。
「ハインツ、あなたは精一杯やってくれたわ。ありがとう」
 リコは彼の背中に向かってそう声をかけた。
 その言葉に踏み出そうとした足を止めるハインツ
(オレは何も出来なかった!オレはあんたを救えなかった!)
 思いきり叫びたい衝動を堪えながら
 彼は止めた足を再び踏み出す。
 遺跡の最深部の出口に作られたテレポーターに向かう
 入る前に一旦立ち止まり
 全ての思いと記憶に向けて惜別の言葉を紡ぐ
「さようなら、アリサ」
 彼はそう、その名をつぶやいた後テレポーターに踏み込んだ。
 立ち去るハインツを見つめるリコの頭上には
 どこまでも続く蒼い空が広がっていた。


  第9話  了


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