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>君を超えて

 
君を超えて

 ──僕は一人前のハンターになれただろうか?

 出会いは突然だった。
「何とか返してくれませんか? あれがないとやっていけなくなるので...」
「だから言ってるだろ、一度引き取った物は返せねぇって」
「そこをなんとか……」
「売価は12万メセタだ!」
「そんな……」
 僕は武器屋のカウンターで途方に暮れていた。
 先日手に入れたサプレストガンを、誤って他の武器と一緒に売ってしまったのだ。
 駆け出しのハンターである僕にとって、強力な武器がないと凶悪な犯罪者やエネ
ミー共に太刀打ちできない。
「ほらほら商売の邪魔だ。とっとと帰ぇんな!」
 もう僕にできることはなかった。
 仕方がないのでカウンターを離れようとした時だった。彼女に出会ったのは。
「──ではわたしが12万払うよ」
 その声に頭を上げる。
「それならいいでしょ?」
 よく通るハッキリとした声で彼女は言った。
「ほらキミもそんなに落ち込まないでさ」
 赤銅色の髪に入った緑色のメッシュ。
 赤いフレームの縁なしメガネ。
 そして左手首に輝く深紅のリング──
 僕は彼女の名前を知っていた。
 科学者にして超一流のハンター。
 そう、憧れの、赤い輪のリコだった。

「ありがとうございましたっ」
「いいのよ。あそこのオヤジは頑固者でケチだからね」
 と、笑顔で返す。
 イメージしていた彼女とは全然違う。
「どうしたの?」
 困惑している僕の表情に気づいたようで、
「もっと怖いヒトだと思ってた?」
 プルプルと頭を横に振ると、
「ふふふっ、いいのよ。そういうイメージばかり先行してしまうのは世の中の
 常だからね」
「そんなことないです! とても立派で、格好よくて、強くて──」
 何事かと、周りの視線が集中する。
 思わず声を張り上げてらしい。
 僕は一呼吸置いて、
「──そして...とても尊敬しています」
 その言葉に彼女は笑って言った。
「ありがとう」
 と。
 そして続けた。
「でも尊敬しているだけでは駄目だわ。同じハンターズだけれど、それはライバル
 でもあるということだし、追いつき追い越せっていうくらいの精神を持たなくちゃ。
 それじゃまだまだ一人前のハンターにはなれないわよ」
 その言葉に僕はハッとした。
「じゃ、がんばってね」
 差し出されたサプレストガンを受け取る。
 僕はもう一度、深々と頭を下げた。

 それからというもの、僕は全力で護衛や探索といった依頼をこなしていった。
 全ては彼女に一人前のハンターとして認められたい一心からだった。
 いつか一緒にチームを組めるようになりたい──
 数々の依頼を順調にこなし、ハンターズレベルも二桁に到達した。
 そんな時だ。移民船パイオニア1に彼女が搭乗するということを知ったのは。
 まだまだレベルの低い僕は、それに搭乗することはできなかった。
 残念だった。
 そして悔しかった。
 出航当日、パイオニア1に乗る知り合いのハンターに手紙を託した。
 『待っていて下さい。僕は必ず貴方を追い越します』
 それから七年の歳月が過ぎた頃、僕はパイオニア2に乗り込んだ。

 ねぇリコ、僕は一人前のハンターになれただろうか?

 手にしていたスタッグカットラリを懐にしまい、代わりにサプレストガンを
取り出した。
 ゆっくりと草原の中を歩き出す。
 照りつける太陽と吹き抜ける風。
 大きなモニュメントの前に到達した瞬間にそれらは消え失せ、闇が辺りを
包み込む。

 僕は貴方を超えられるだろうか?
 ねぇリコ……




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