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>彼女は丘の上からモノメイトを投げる(11)

 

 ルチェットの行動は早かった。
 スーツの男たちを素早く誘導してドームの外へ避難させ、テクニックで強化を
してから自分の何十倍もあろうかというドラゴンに立ち向かったのだ。
 その姿を見て負けてられないとばかりに、サフィもドラゴンに攻撃を仕掛ける。
 無論アンジェリナもセヴァもそれに続いた。
 ドラゴンは時折、炎を吐いたり地中に潜って体当たりをしてきたのだが、ル
チェットとサフィは連携してそれを的確にかわし、確実にダメージを与えてゆく。
 二人は不仲を感じさせない息の合った攻撃で、邪悪な存在として恐れられてい
るドラゴンを仕留めてしまった。
 消えゆく大きな身体を見つめ、ルチェットとサフィはがっちりと握手を交わす。
 その姿を見てセヴァは頷き、ルチェットは小首を傾げた。
 戦闘を通じて何か感じるものがあったのだろうと、アンジェリナは自分なりに
解釈をしてみた。
 それはアンドロイドである自分には判らないものなのかも知れないとも……
「──いや〜、とんでもないことになりましたな〜」
 安全を確認したのか、今回のイベントのスポンサーである恰幅のよい男が近づ
いてきた。
「これもイベントの一環なの?」
 じとりと睨むルチェットに、
「そんなわけありませんよ! 私たちも危ない目に遭ったんですよ」
 と否定をしてみせる。
「まぁいいけど。で、どっちが勝ちなの?」
 ドラゴンを倒したことよりも、ルチェットにとっては賞品の行方のほうが大事
なのだ。
「それは私たちの勝ちでしょう」
「ゴールしてないじゃない」
 今までならここから口喧嘩に発展するのだが、二人の言葉には怒気が含まれて
いなかった。
「なんだか物足りないなぁ」
 アンジェリナがポツリと嘆いた。
 喧嘩しないに越したことはないのだが、今まで壮絶な現場を目の当たりにして
きただけあって何もないのはそれはそれで面白くないのだ。
 恰幅のよい男は考え込んでいたが、
「それではこうしましょう。表に数個コンテナを用意しますのでそこから好きな
ものを選ぶということで。何が出てももちろん恨みっこはなしでお願いしますよ」
 その提案に二人は頷いた。

 かくしてドームの外には5個のコンテナが用意された。
 ルチェットは中身は何かと尋ねてみたが、恰幅の良い男はどれかにレアアイテ
ムが入っているのは確かだ、としか答えなかった。
 つまり後の4つはそこそこの物か、どうでもいいような物ということだ。
 コンテナなので何が入っているかは全く判らない。
 目を細めたり聞き耳を立てたりしてみたが、やっぱり駄目だった。
 そうこうしていると、
「私はこのコンテナにしますわ」
 サフィが右端のコンテナに手を掛けようとした。
「あーあたしそれにするわ!」
 慌ててルチェットは右端のコンテナに抱きついた。
「これにしようと思っていたのよ。悪いけど他に行ってくれる?」
 アンジェリナにはサフィのこめかみがピクっと痙攣したように見えたが、
「判りましたわ。では真ん中のコンテナにしますわ」
 とサフィは何事もなかったかのように振る舞って、選んだコンテナの前に移動
した。
 アンジェリナにはやはり信じられない光景だったが、となりで執事が『お嬢様、
ご立派になられて……』と感動しているのでこれはこれで良しとして、
「……いいのこれでぇ?」
 ルチェットに小声で尋ねてみた。
「だってサフィは一発でこれに決めたでしょ? 何か思うところがあったのよ」
 つられてルチェットも小声で話す。
「恐らくあいつらと裏で交渉でもしてたのよ」
「そうなのかな〜?」
「そうなのよ」
 どうしてなのかは理解できなかったが、ルチェットが言うならそれでいいやと
アンジェリナは思い、
「これにしま〜すぅ」
 と、恰幅の良い男に合図を送った。
「決定したようですね。ではコンテナを壊して下さい」
 その声に、ルチェットとサフィは同時に攻撃を加えた。
 片方のコンテナからは青いカプセルが、もう一方のコンテナからは緑のカプセ
ルが転がりだした。
「あはははははっ」
 それを見てルチェットは笑い声を上げた。

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