「ん? どうかしたの?」 視線を感じたアンジェリナは小首を傾げる。 その仕草にルチェットはなぜか苦笑いを浮かべ、 「なぁんでもないよ。それよりさ、どこでこの情報を入手したの?」 「え〜っとねぇ……」 暫し考え込むアンジェリナ。 メモリの中でも検証しているのだろうか? 「あ〜そうそう、ネットワークラジオで流れていたのよ〜」 「ラジオ? なんでまたそんなもので?」 ネットワークラジオとは携帯端末で聴ける放送だ。ニュースから娯楽までその チャンネルは様々だ。 「CMだったかな〜? 忘れちゃった」 「……あーまぁいいや。ところでもうそろそろじゃない?」 「うん。もうすぐ14時だからそろそろだと思うよ〜」 時計を見なくても時間が判る。アンドロイドの特権だ。 おそらく人工網膜にでも情報が映し出されているのだろうとルチェットは考えて いるが、それを聞くことは失礼にあたると思って聞けないままでいる。 「──あ〜来たみたい」 人混みをかき分けスーツを着た男が数人やってきた。 ざわついていたロビーに静寂が訪れる。 静まったのを確認してそのうちの一人、恰幅の良い男がおもむろに話し出した。 「みなさんようこそお集まり下さいました。最近ラグオルへの降下が少ないという データを入手しまして、おそらくみなさんは漠然とした目的しかなくて士気が低下 しているものかとお見受けいたしました」 そう、ルチェットと同じようにやる気がなく、タイクツしているハンターズの数 はここ最近になって急増しているようだ。 それはラグオルへ降下する為のトランスポーターの利用率が先月の73%しかなかった ことからも伺える。 「ですから弊社といたしましては、少しでもみなさまのお役に立ちたいと思いまして ここにイベントを開催する運びとなりました!」 二人一組でチームを作り、2対2でセントラルドームに置かれたレアアイテムを目 指して冒険する── これが今回のイベントの概要だ。 チーム対抗戦だが、森にはエネミーたちがいる。時にはチームで協力しあうことも 必要になるであろう。 「さて、今回ご用意させて頂いたアイテムは……一部しか紹介できませんが、まずは ダブルセイバー!」 「ぬわにぃっ!」 ルチェットは思わず驚嘆の声を上げた。 ダブルセイバーといえばフォースにとって主力になりうる武器である。 攻撃力もさることながら、精神力を回復してくれるというありがたい代物なのだ。 「そしてヴィクターアクス!」 ルチェットの周りからも驚きの声があがる。 「さらにこんなのもあります。名ガンスミスに改造をお願いしたカスタムレイver.00! これらはほんの一部です。中にはもっと良いアイテムもあるやもしれません!」 ロビーにいる参加者のボルテージが上がってゆく。 無理もない、それだけ珍しい武器が手に入るのだ。それらを手に入れればこれからの ラグオル探索もかなり楽になるであろう。 ルチェットはもうやる気満々だ。 性格からしてあまり武器に固執しないアンジェリナも、この雰囲気に飲まれたようで 男の言葉に頻りにうなずいている。 「早速イベントを開始したいところですが、今回の舞台である森には凶暴なエネミーが 生息しております。万一のことを考え、我がジェネラル損保では今日限りの保険を適 用させて頂きます。これは緊急転送でメセタと武器を落としても補償されるというも ので──」 そうそううまい話はないものである。 どうやら主催者側の意図としては、アイテムで釣って損害保険に入ってもらうという 考えらしい。 中には止める者もいたが大半はそれを了承し、まだ見ぬレアに心躍らせていた。 無論ルチェットもである。 「誰が来ても絶対に勝つからね!」 「モチのロンよ〜」 アンジェリナもやる気になっている。 そこへ── 「続きましては52番の方〜!」 「はいはいはーい!」 ルチェットは手を大きくあげ、 「行くよアン」 アンジェリナの腕を取り前へと躍り出た。 「対するは──16番の方!」 ……返答がない。 「16番をお持ちの方いませんか?」 不戦勝ってことはタダでアイテムが手に入るってコト!? ニヤリと微笑んだルチェットだったが、その表情が次第に変わってゆく。 「──ここにいますわ」 その声と共に出てきた人物をルチェットは知っていた。 |
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