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>彼女は丘の上からモノメイトを投げる

 

 世の中にはどう転んでも好きになれない人がいる。
 イジワルをされたりライバルであったりといったレベルではない。
 生理的に嫌悪を覚えるのだ。
 ルチェットにとって、彼女は正にそれだった。
 サフィ=ウィルトール。
 このパイオニア2では滅多にいない、ヒューマンの女性ハンター『ヒュマール』だ。
 亜麻色のシャギーが入ったボブカットの髪に、水色の軽快な動きを連想させるカット
ソーとホットパンツ。それに反して、腰や腕、首や耳に施された光り輝く数多の装飾品。
埋葬されたお姫様でもここまで飾られることはないであろう。
 ルチェットはさりげなく顔を逸らした。
「わたくしはここにいますわよ──って、あらまぁ……ルチェット=キーンさんじゃあ
 りませんこと?」
 サフィは目敏くルチェットを見つけ、
「もしかして貴方がわたくしのお相手かしら? ふふふっ、楽勝ですわね」
「ハン! ほざいてな。お嬢ちゃんなんかに負けるワケないっての」
「ぬぁんですって〜! 出来損ないのニューマン風情のクセに」
 一触即発。
 二人が会うといつもこうであった。
 そしてこういう場合、いつも止めに入るのが、
「お嬢様、何卒落ち着き下さい」
「ルチェ〜もうやめなよ〜。怖いよ〜」
 サフィに仕える執事・セヴァ=スコールズとアンジェリナであった。
 セヴァとアンジェリナはお互いの相方の手を掴んで引き離す。
「続きをお願いします〜」
 呆気に取られているスーツの男にアンジェリナが促す。
「あ……ああ、はい。それでは──」

 主催者側から注意事項等を聞き終えたルチェットたちは、出発準備の為シティに降りて
来ていた。
「ったくぅ。ホント嫌なヤツだわ。あの時助けなければよかったよ」
 あの時──まだ駆け出しのハンターズであったルチェットは、一人で森を探索していた。
 ブーマと呼ばれるエネミーに苦戦しながらも進んでいると、向こうから初老のヒューマー
が駆け寄ってきた。
 ヒューマーはセヴァと名乗り、自分が仕えている家の令嬢がエネミーに囲まれているの
で助けて欲しいと頼み込んできた。
 自分自身まったく強くないが同じハンターズ。助けない訳にはいかない。
 覚えたてのテクニックを駆使し、ダメージを負いながらもなんとか排除に成功して彼女
を救い出すことができた。
 倒れ込んでいる彼女を起こそうと手を差し伸べると、
『余計なコトをしないで下さる?』
 そう言って手を払いのけられたのだ。
 そして礼すら言わず、森の奥へと消えていってしまった。
 森に佇む体中キズだらけの自分……
 それ以降、ルチェットとサフィは出会う旅に一悶着を起こした。
 生い立ち、性格、行動・言動。
 会う度に全てが鼻につくようになっていった。
「あームカつくわ〜、あのバカお嬢!」
「まぁまぁそんなにカリカリしないでよ〜」
 悪態を吐くルチェットをアンジェリナが宥める。
「サフィさんも悪気があって言ったわけではないですよ〜。ただ思ったことを口にしてし
 まうだけなんですよぉ」
 悪気がなければ思っても口にしないっての──
 ルチェットは心の中でアンジェリナにツッコみ、チェックルームから武器を引き出した。
「ヴァリスタだ〜」
「そうよ。あたしにゃこんなモンしかないからね」
 ルチェットは口を尖らせて、小銃を腰のホルスターに納めた。
「そういうアンはなに……」
 アンジェリナがチェックルームから引き出した武器を見て、ルチェットの動きが止まる。
「これ昨日貰ったのよ〜。まだ慣れてなくってぇ」
 手にした得物をブンブン振り回すアンジェリナ。
「こうで……こうして、こうでしょ〜」
 水平切りから袈裟切りへ、返す刀でもう一度袈裟切り。
「ねぇルチェ〜、こんな感じかなぁ。って、ルチェ〜? お〜い」

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