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>彼女は丘の上からモノメイトを投げる(5)

 

 アンジェリナがその大剣を振るうたびに、チュインチュインと小気味よい
音がシティに響く。
 激しく回るフォトン製の小刃。
 そういえばどこかで聞いたことがあった気がする──
 ルチェットは頭の中をフル回転させてその名前を引っ張りだす。
 たしか希少な武器で……チュインチュインと音が……回る……
「ああああああっ!!」
 ルチェットはその大剣を指さし、
「ちぇ、チェインソード!!」
「当たぁり〜」
 パチパチと手を叩くアンジェリナ。
「どうしてそんなモノを持っているのよ!?」
「うふふ〜貰っちゃった〜」
「うわ、黒い交際」
「そんなんじゃないわよぉ」
 アンドロイドでなければきっと口を尖らせていたであろう口調で、
「昨日、一緒に探索したヒューマーの人から貰ったのぉっ」
 チェインソードみたくレアな武器をポンポン人にあげるとは、えらい気前
のいい人だな。
 ルチェットは自分では考えられない行為をするその男と、その武器を手に
入れたアンジェリナに軽い嫉妬を覚えた。
 しかしよくよく考えると、これは文字通り大きな武器になる。
 強い武器ならエネミー共を軽く倒すことが出来るし、そうすればレアな武
器が自分にも手に入る──
 1秒足らずでそこまでたどりついた。物欲のなせる技である。
「でかしたアンっ。これならあのバカお嬢に一泡ふかせてやれるわ!」
「お〜。そうだね〜」
 これだけ強力な武器があれば……イヒヒヒ。
 にんまりと笑うルチェットだったが──
 ラグオルを降りた彼女の動きがまた止まった。

「ふふふふふっ」
 斜めから見下ろすような視線をルチェットに送るサフィ。
 そして手にした銃を、まるで小動物を愛でるかようにゆっくりと撫でる。
「どうかしらルチェットさん? 先日手に入れましたのよ」
 そういうと、サフィは横手を向いてトリガーを引いた。
 パシュッ。
 なんとも重量感のない音と共に、イエローをした針状のフォトンが放たれる。
 計3回。ほとんど休む間もなく放たれた針は、すべて大きな木の幹に突き刺
さっていた。
「スプレッドニードルですわ」
 あ、ああそうだ。確かそんな名前だったような気がする……
 全ての武器の中で最強にして最凶といわれる武器──
「って、なんでアンタがそんなものを持っているのよ!」
「あ、ルチェ復活〜」
 口を挟むアンジェリナを押しのけ、
「どうせイカサマでもしたんでしょ? この強欲女!」
「なんとでも言えばいいわ。わたくしには手にいれるだけの価値がありますもの」
「あーみとめたな! このサギ師! 犯罪者!」
「誰がですよの!? これは遺跡で発見したれっきとした純正品ですわ! まぁ所
 詮あなたみたいな三流ハンターズには判らないでしょうけどね」
「ハンターズは武器じゃないんだよ! 腕とアタマなんだよ!」
「はぅ……チェインソードもぉ?」
「そうよ! 武器なんてただの飾りじゃない。頭で戦略を立てて技量で倒す。そ
れが一流のハンタ−ズってものよ!」
「その三拍子が揃ってないルチェットさんはやはり三流なのかしら?」
「んなっ!」
 さすがに切れたルチェットは、高レベルテクニックでもお見舞いしてやろうか
と、術式を頭の中で組み立て出したその時、
「さささっ、お嬢様。その位にしておきましょう。ルチェットさん申し訳ありま
 せんでした」
 今まで傍観していた執事のセヴァが割って入ってきた。
「セヴァ、そんなヤツに謝ることないわ」
「まぁまぁ、これから決着を付けることができますし、今から体力を消耗したら
 エネミー共に手傷を負うことにもなりかねませんよ」
 そう言ってサフィを宥めながら、ルチェットに向かって軽く会釈をした。
 気づいていたのかな?
 テクニックの術式の組立は遅くても2秒以内。そんな僅かなスキをこの男は見
抜いた。
 ほんとにただの執事だろうか?
 ルチェットは疑惑の眼差しを初老の執事──セヴァに向けたが、彼は気づかぬ
素振りで、
「みなさん、そろそろお時間のようですよ。セントラルドーム目指して頑張りま
 しょう」
 笑顔でそう言った。
 怪しい──
 顔をセヴァの方向に固定したまま、ルチェットはアンジェリナに小声で尋ねる。
「アン、あの執事どう思う?」
 チラリと視線を横にやると、先ほどまでそこに立っていたはずの彼女がいない。
「あれ……って、なにやってんの?」
 そしてそのまま視線を下げると、そこには草原にうずくまっているアンジェリ
ナの姿があった。
 

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