アンジェリナがその大剣を振るうたびに、チュインチュインと小気味よい 音がシティに響く。 激しく回るフォトン製の小刃。 そういえばどこかで聞いたことがあった気がする── ルチェットは頭の中をフル回転させてその名前を引っ張りだす。 たしか希少な武器で……チュインチュインと音が……回る…… 「ああああああっ!!」 ルチェットはその大剣を指さし、 「ちぇ、チェインソード!!」 「当たぁり〜」 パチパチと手を叩くアンジェリナ。 「どうしてそんなモノを持っているのよ!?」 「うふふ〜貰っちゃった〜」 「うわ、黒い交際」 「そんなんじゃないわよぉ」 アンドロイドでなければきっと口を尖らせていたであろう口調で、 「昨日、一緒に探索したヒューマーの人から貰ったのぉっ」 チェインソードみたくレアな武器をポンポン人にあげるとは、えらい気前 のいい人だな。 ルチェットは自分では考えられない行為をするその男と、その武器を手に 入れたアンジェリナに軽い嫉妬を覚えた。 しかしよくよく考えると、これは文字通り大きな武器になる。 強い武器ならエネミー共を軽く倒すことが出来るし、そうすればレアな武 器が自分にも手に入る── 1秒足らずでそこまでたどりついた。物欲のなせる技である。 「でかしたアンっ。これならあのバカお嬢に一泡ふかせてやれるわ!」 「お〜。そうだね〜」 これだけ強力な武器があれば……イヒヒヒ。 にんまりと笑うルチェットだったが── ラグオルを降りた彼女の動きがまた止まった。 「ふふふふふっ」 斜めから見下ろすような視線をルチェットに送るサフィ。 そして手にした銃を、まるで小動物を愛でるかようにゆっくりと撫でる。 「どうかしらルチェットさん? 先日手に入れましたのよ」 そういうと、サフィは横手を向いてトリガーを引いた。 パシュッ。 なんとも重量感のない音と共に、イエローをした針状のフォトンが放たれる。 計3回。ほとんど休む間もなく放たれた針は、すべて大きな木の幹に突き刺 さっていた。 「スプレッドニードルですわ」 あ、ああそうだ。確かそんな名前だったような気がする…… 全ての武器の中で最強にして最凶といわれる武器── 「って、なんでアンタがそんなものを持っているのよ!」 「あ、ルチェ復活〜」 口を挟むアンジェリナを押しのけ、 「どうせイカサマでもしたんでしょ? この強欲女!」 「なんとでも言えばいいわ。わたくしには手にいれるだけの価値がありますもの」 「あーみとめたな! このサギ師! 犯罪者!」 「誰がですよの!? これは遺跡で発見したれっきとした純正品ですわ! まぁ所 詮あなたみたいな三流ハンターズには判らないでしょうけどね」 「ハンターズは武器じゃないんだよ! 腕とアタマなんだよ!」 「はぅ……チェインソードもぉ?」 「そうよ! 武器なんてただの飾りじゃない。頭で戦略を立てて技量で倒す。そ れが一流のハンタ−ズってものよ!」 「その三拍子が揃ってないルチェットさんはやはり三流なのかしら?」 「んなっ!」 さすがに切れたルチェットは、高レベルテクニックでもお見舞いしてやろうか と、術式を頭の中で組み立て出したその時、 「さささっ、お嬢様。その位にしておきましょう。ルチェットさん申し訳ありま せんでした」 今まで傍観していた執事のセヴァが割って入ってきた。 「セヴァ、そんなヤツに謝ることないわ」 「まぁまぁ、これから決着を付けることができますし、今から体力を消耗したら エネミー共に手傷を負うことにもなりかねませんよ」 そう言ってサフィを宥めながら、ルチェットに向かって軽く会釈をした。 気づいていたのかな? テクニックの術式の組立は遅くても2秒以内。そんな僅かなスキをこの男は見 抜いた。 ほんとにただの執事だろうか? ルチェットは疑惑の眼差しを初老の執事──セヴァに向けたが、彼は気づかぬ 素振りで、 「みなさん、そろそろお時間のようですよ。セントラルドーム目指して頑張りま しょう」 笑顔でそう言った。 怪しい── 顔をセヴァの方向に固定したまま、ルチェットはアンジェリナに小声で尋ねる。 「アン、あの執事どう思う?」 チラリと視線を横にやると、先ほどまでそこに立っていたはずの彼女がいない。 「あれ……って、なにやってんの?」 そしてそのまま視線を下げると、そこには草原にうずくまっているアンジェリ ナの姿があった。 |
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