筋肉注射(5/2)
週に1回、狭窄症経過診察のため病院に行く。
「……で、どのくらい歩くと痺れるの、感覚がなくなるのはどのくらい
歩いてから? 15分! そりゃあ無茶だよ。歩くのは駄目って言った
でしょう。調子がよくても10分が限度。コルセットつけてる?」
ハイッ、って元気に答えたけど、コルセットはつけていない。今までつ
けて歩いたのは2回だけ……。それも、試しに1時間も歩いてみた。そ
のころは今と違ってまだ歩けた。いまは医師のいう、10分くらいが限
界だ、というのが分かってきた。徐々に悪化しているのだろう。
歩けないときの条件もいくつかあるようだ。椅子に長く座っていたとき
とか、車に長時間乗っていた後などは、歩き出した直後から痺れる。
「ここから病院の玄関先までも歩けないようになったら、手術を考える
……。いやいや、する、しないはあなたが決めること。……はい、それ
では注射をし、薬を貰ってお帰り下さい」
筋肉注射をした看護師に訊いた。
「毎週打っている筋肉注射は何の注射ですか。カルシウムと聞いていま
すけど……」
「うーんと、……いろいろな薬が入っていますけど」
自信がないのか、看護師が口籠っている。
「調べてみましょうか……」
「いいえ、調べることはありませんよ」
なぜ訊いたのか。カルシウム価の高い食品群は医師からも聞かされてい
るし、毎日の必要量は摂っている。胃がないから、カルシウムの吸収を
よくするというビタミンDも毎日飲んでいる。なのに、なぜ週に1回さ
らにカルシウムを打つのか。過剰摂取は害があると聞き、不思議に思っ
ていたからである。
会計を待っていると看護師がそばにきて、
「田中さん? ですよね。注射の件ですけど、カルシウム剤ではなく、
その流出を抑制する薬の注射ででした」
疑問は解消した。うるさいと思われようが、疑問があれば訊いたほうが
いい。訊いてよかった、すっきりした。
3か月ぶり(5/9)
月に1回通院していた癌の外来が、3か月に1回になってからの初めて
の診察である。外来申し込みにはいつもの通り、外科、診察、薬、注射
とインプット。受付表の受付 No は27だった。家をでたのは9時20
分。それで27番は若い。いつもは35、6番である。呼び込みもいつ
もより早い。
「で、その後どうでした? 変わりない、そうでしょうねえ。……では
いつもの通りの薬と、帰りにビタミン B 1 2 の注射を打って下さい」
診察は2分もかからなかった。余計なことを訊かないからだ。血液検査
のための採血があるかと思ってきたが、それはこの次らしい。
帰宅は11時15分。予約もしていないに、なぜか早い。
患者が多くても1、2、分診療で行けばこのくらいの早さで処理でき
る。自分の状態を大体把握していれば、時間をかけて訊くこともない。
あとはまた3か月後。楽になった、こんな調子でずっと行きたい。
血液検査結果(5/16)
狭窄症の診断のために採血した血液検査の結果がでた。家に帰って胃癌
の時の「検査時系列報告書」を取り出し、今回のものと比較してみた。
白血球の改善が著しい。一昨年6月の2500が昨年の10月には32
00、今回の検査結果は4800に上がっていた。
赤血球も同じく320→321→360に上昇している。
病院に入ったのは3時15分。
「いかがですか。……そうですか、それはよかった。血液検査の結果で
もお話ししましたが、薬も効き、骨の方もよくなってきていますよ。安
定してきましたねえ。このまま3つの薬とカルシウムの流出を防止する
筋肉注射を続けていきましょう。ああ、それと、……重い物を持たない
こと、転ばないこと。これだけは気をつけて下さいよ」
状態は確かにいい。おとといは畑周囲の草刈りを3時間ばかりやり、き
のうは半日耕耘機を動かした。きょうは土手の刈草や枯れ枝を燃やし、
長時間の軽作業をしたが今までのようにへたり込むこともなかった。
状態は多少よくなっているが、狭窄症そのものが良くなったとは思って
いない。薬を飲んで痛みは取れても、狭くなって神経を圧迫している脊
柱管が拡がるとは思えないからだ。でも、その日そのひが少しでも楽で
あればよしとしなければ……。
診察→処置室で注射→会計→薬。これだけを終えて病院を出たのは3時
40分。実質25分で終わった。
医師が、午後の3時過ぎに来れば早いですよ、とアドバイスしてくれた
のがよかった。もっともこの医師は院内で唯一、2つの診察室を持って
いて、一方の診察が終われば患者をそこに残したまま、すぐに隣の診察
室にいき、患者を診る。仕事の手順がよく時間を無駄にしない。
こんなに早く終わらしてくれれば患者の負担も軽い。
ここのところ、関心はもっぱら足腰の方にある。
5年半(5/20)
早い、早い。実に早い。もう5年半が過ぎた。
抗癌剤を飲まなくなって半年になる。いまは制酸剤のタケプロンと鉄剤
のフェルムを飲んでいるだけである。足腰の痛みの薬は別である。
タケプロンを飲んでいても以前は逆流に悩まされた。寝ているときに突
然逆流が突き上げ、食道が焼けただれる思いがした。食道癌が心配だっ
た。何か良い方法はないかと考えた末、寝るとき背中から頭までを高く
した。上体をやや高く保って寝るのは思ったよりもつらかった。目覚め
れば体全体が足許の方に下がっているのが常だった。半年くらい前から
普通の枕で寝るようになったが、逆流がこなくなってから1年近くが経
つ。体が慣れるまでに時間がかかった。