夏休みの恒例になっているものには、いくつかあるが、その一つが理科の自由研究である。
自由研究そのものは、奨励すべきものだろうが、現行のように、生徒全員に宿題として出すやり方には大いに疑問である。本当に、自由研究を意義あるものにしようというのならば、少なくとも、6ケ月以上の時間をかけて、大学の卒論指導ゼミのように、生徒ひとりひとりに丁寧な指導をすべきであろう。どんな意義のあるものであっても、それが強制になってはならない。強制は、多くの場合、悪い結果をもたらすからだ。
大学の卒論指導ゼミでさえ、なかなかむずかしいというのに、小学生や中学生に、夏休みの宿題として強制している、現行のありかたは、ただちに廃止すべきだろう。人には向き不向きがある。理科の苦手な子、嫌いな子、興味のない子にまで強制するのは、ますます理科を苦手にし、嫌いにし、興味を失わせてしまうだろう。


ボチンスキ著『やさしい科学の自由研究(テーマの選び方から発表まで)』
市村憲太郎訳 オーム社 平成5年5月

書店の店頭で、偶然に、上記の本を手にした。参考資料のつもりで購入した。我が国で、刊行されている「自由研究」をテーマにした書籍類に較べると、格段の差で、優れた内容である。我が国のものは、研究の紹介ばかりで、どのように研究を進めたらいいか、どのようにテーマを見つけたらいいのか、どのように発表をいたらいいのか、などなど、子ども達一人一人が主体的に自由研究を取り組んでいくための指針になるものではない。その点、この本は、何よりも、自由研究の進め方、テーマの見つけ方を説明していることが評価できる。ただし、これでも不十分だと思う。そういう訳で、下記に、木下是雄さんの著作を紹介することにした。


木下是雄『レポートの組み立て方』筑摩書房 1990年3月
木下是雄『理科系の作文技術』中公新書 昭和56年9月

上記に紹介している本は、どちらか一冊を読めばよい。どちらか一冊を選べと言われたら、『レポート』の方がおすすめだろう。
まず、研究にあたっては、目標規定文を作る。目標規定文は基本的には2値的な真偽判定可能な文でなければならない。
テーマの決め方が大事だ。4つの指針。そのテーマが、自分にとって魅力的か。積極的な興味を感じるか。それについて、自分の意見があるか。ある程度の予備知識をもっているか。指定された長さにおさまりそうか。
データを集める。
データと意見をはっきりと区別すること。
文章は、明快、明確、簡潔に書け。
すらすら読めて、するすらわかる文を書け。そのためには、パラグラフ単位で考えて書く。

自由研究をほんとうに実りあるものにするには、指導者がまず総論的には木下是雄さんのように論文の書き方、研究の仕方を教え、さらに、生徒一人一人に対して、懇切に、具体的に指導していくのでなければ、ならないだろう。現行のようなあり方は、百害あって一利なしという感じがする。


 清邦彦編著『女子中学生のちいさな大発見』新潮文庫

 夏休みになると、「理科の自由研究」というものがありますね。これは「理科」を嫌いにしかねない、問題の多い課題です。でも、静岡県のある私立女子中学校の清邦彦先生は、とてもユニークな指導をしています。以下に、序文を引用します。
「いくら長い休みとはいえ、疑問を持って、仮説を立て、計画して、いろいろやってみて、そして結論を出す、人生そんなに計画どおりにうまくいくものではありません。どうしよう、どうしようと言っている間に夏休みは過ぎていきます。
 なにもフルコースやらなくてもいいんじゃないでしょうか。
 長いレポートじゃなくてもいいと思います。
 別に結論が出なくてもいいと思います。わからないものはわからないままで。
 ちょっと試してみた、というくらいの研究でもいいと思います。
 なぜだろう、と疑問に思っただけでもいいと思います。
 すごいっ、と感動しただけでもいいと思います。
 育ててみた、飼ってみた、それだけでもりっぱな研究です。
 見た、見つけた、気がついたなら、それはもう発見です。
 集めるだけでもいいです。セミを5種類集めるだけでも、夏休みは終わってしまうかもしれません。
 だいたい研究なんてものはそんなに簡単にまとまるものではないと思います。
 予想どおりにならなかったのは、失敗ではなく成功です。
 何も変わらなかったのは、「変わらない」ことを発見したのです。」
 長い引用になってしましたが、清先生の考えに賛成です。理科の、そして研究の、おもしろさ、楽しさを体験するのが「自由研究」の肝心かなめです。
「Oさんは万歩計をつけて寝てみました。朝までに12歩、歩いていました。」
「Hさんは168gのスジコの中にイクラの粒がいくつ入っているか数えました。1505個ありました。」
 この本は、生徒たちの自由研究のエッセンスを短い文章にしてあります。とても、愉快にしてくれる本です。

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