「女性ギャンブル依存症に支援が必要だ」
北海道立精神保健福祉センター 田辺等先生
「オ'ハナ」平成16年12号より発行者と田辺先生の承諾を得ました。
2004.12.29
○増加するギャンブル依存症
過度に反復されコントロールを失ったギャンブルは、米国精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き」では1980年からpathological gambling病的賭博として扱われ、WHO(世界保健機構)作成の診断ガイドラインでは、「習慣および衝動の障害」に入っています。
私は日常の臨床・相談の現場では、ギャンブル依存症と呼んできました(最近、日本の当事者の方たちは強迫的ギャンブラーを選択しましたが)。私が翻訳用語を使用しなかったのは、賭博という語感が反社会的なイメージが強すぎ、病的賭博という用語には、本人も家族も受け入れが悪く、実用的でなかったからです。この「ギャンブルがやめられない」という訴えが相談に登場したのは、いわゆるバブル経済の崩壊の90年代ですが、今、私たちのセンターでは年間50件以上の相談があります(「ギャンブル依存症」NHK生活人新書)。
いったい日本全国でどのくらいの数かはまだまだ不明ですが、社会現象、文化、風俗と関連する問題は、1人のクライエントの背後に同じ悩みが何百何千とあると考えられます。この10年で数百名のギャンブル依存症、そして若干の買い物依存症のクライエントを診ました。10人のギャンブル依存症の集りなら8名は特に精神的な問題がありません。1名はうつ病をベースにして発症し、もう1名はアルコール依存症の回復期の発症という比率がしばらく続きました。
今年、日本のアルコール依存症者はおよそ82万人という調査結果が報告されました。また日本のAAの約2,000人のサーベイランス(調査)で、6〜7%の方が「ギャンブル依存を合併」と答えました。この概算に、私の経験を(都合良く)掛け合わせると、アルコール依存症でギャンブル依存症を合併する人が約5万人、少なめに見積もって10倍の50万人がギャンブル依存症です。この数字は極めて控えめな数字です。というのは、外国と違い、日本ではパチンコが大衆娯楽とギャンブルの両面性をもって普及しています。レジャー白書はおよそ1,900万人のパチンコ人口を推定し、パチンコ業界の昨年の調査結果では、全体の2割に依存症傾向があります。仮に380万人がパチンコ依存とすると、競馬やその他の依存症も加えればギャンブル依存症400万人という大きな数字もありえます。
最近は、アルコール依存症もうつ傾向もない、一次性のギャンブル依存症が増え、その内訳で無視できないのは30歳未満の若年性発症、主婦の発症の増加です。
○女性ギャンブル依存症のサポートが急務
私の経験では、今までは10〜15対1くらいの男女比でした。女性ギャンブル依存症者は、夫、息子、娘、時に長男の嫁などに付き添われ、皆、うつむき加減です。アルコール依存症同様、女性ゆえに余計に肩身の狭い思いをされ、打ちひしがれています。
年齢は若い方で20代前半、高齢では60歳代まで広がりがあります。職業も多様で、学生、母子家庭のお母さん、専業主婦、離婚した単身者、アルバイター、共働きのキャリアウーマン、年金生活者など多様です。
男女比は、30年前のアルコール依存症の男女比と同程度ですが、先の業界の調査では、パチンコユーザーの男女比は2対1程度です。今後、ますます女性メンバーが増えるでしょう。
米国の精神医学会の診断基準は10項目で、うち5項目以上のチエックにより診断されますが、この後半部分は、ギャンブル依存の社会的障害、対人関係的障害が表現されています。
例えば、
F賭博へののめりこみを隠すために、家族、治療者、またはそれ以外の人に嘘をつく。
G賭博の資金を得るために、偽造、詐欺、窃盗、横領などの非合法的行為に手を染めたことがある。
H賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある。
I賭博によって引き起こされた絶望的な経済状態を救うために、他人に金を出してくれるよう頼る。
などがそうです。
これらは男女問わずの傾向ですが、女性は女性なりに他言しにくい状況(例えば、夫からの暴力被害、金銭を得るための水商売や異性関係等々)が出現する場合もあります。ギャンブル依存は金銭がからみ、"借金が必発の合併症"です。まだまだ日本では、女性は経済的自由を男性ほどに享受できません。ギャンブル依存が「情けないこと」「夫に知られると恐ろしいこと」「子どもに知られたら恥ずかしいこと」と思うが故に、受診自体を秘密にし、料金の支払いに苦慮した人もいます。また自助グループが開かれる夜間に外出しにくい状況の人もいます。女性のための、女性が安心でき、安全である時空間が必要です。
生活を立て直し、回復のために男性との関係も抑制したほうがよい時期もあります。女性クローズトのミーティングが必要であり、女性の回復施設も是非あってほしいものです。これらの女性ギャンブラーへの支援が急務であり、今後の大きな課題であると思われます。
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