2003.10.30 馬場純雄
(C) SumioBaba
2003
[SB006]
「局所的相互作用」と「非局所的相互作用」の違い
および[プラネタリウムの原理]
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「局所的相互作用」では、脳B全体に「1つの心」Mという統一性は産み
出せないのに、「非局所的相互作用」だとなぜ産み出せるのかを考えて
みます。
3次元空間内の異なる位置に、物体Xと物体Yが在るとします。もし、物
体Xと物体Yとの間に何の相互作用も無ければ、互いに相手の状態はお
ろか、存在さえ知ることができません。相手の存在や状態を知るために
は、何らかの相互作用が必要です。
ここで、現代物理学の常識に従い、すべての物理的相互作用は光速
の限界を伴う「局所的相互作用」である、と仮定してみましょう。物体Xと
物体Yとは、3次元空間内で異なる位置に在りますから、空間的距離を
飛び越えて直接相互作用することはできません。それこそ「非局所的相
互作用」になってしまいます。そこで、「局所的相互作用」だけを用いて
情報を伝え合おうとすると、必ず仲介者が必要になります。物体Xと物体
Yとは、光子や物質粒子などの物理的実体(あるいその複合体)である仲
介者Zをやり取りすることで、情報交換する以外に方法は有りません。
ところが、仲介者Zが間に挟まってしまう以上、物体Xも物体Yも、仲介
者Zの運んでくる情報から、互いに相手の存在や状態を推測し合えるだ
けとなり、決して本当には知り得なくなります。物体Xから物体Yへと仲介
者Zを送っても、それが本当に物体Yに届いたかどうか、物体Xは決して
知り得ません。途中で誰かが妨害し、仲介者Zは物体Yに届かなかった
かもしれません。逆に、物体Yからの返事と思われる仲介者Zが物体X
に届いても、本当にそれが物体Yから来たのかどうか、物体Xは決して
知り得ません。いかにも物体Yから来たような仲介者Zを、誰かがイタズ
ラで送っているだけかもしれないし、物体Yなど本当は存在してすらいな
いかもしれません。
脳Bをn個(n≧2)の部分B1-Bnが接合されている、と解釈した場合も同
様です。ばらばらのB1-Bnに分割しても、それらを人工的装置D1-Dnに
接続し、正常な脳Bを構成していた時と全く同じ周囲からの「局所的相互
作用」を与えてやると、個々のB1-Bnは環境の変化に気付けません。つ
まり、正常な脳Bを構成していた時も、個々のB1-Bnは、互いに自分以
外のn-1個の存在や状態を、たかだか推測できただけで、本当に知るこ
とはできなかった訳です。だから、分割している時にB1-Bnに随伴する心
M1-Mnが独立しているなら、正常な脳Bの状態に戻しても、M1-Mnは独
立したままで、「1つの心」Mに融合され得ないと言えます。
B1-Bn(M1-Mn)は、「局所的相互作用」を用いて、互いに影響を及ぼし
合うことはできますが、「1つの心」Mに融合されてしまうには、親密度がま
だ足りない、ということです。
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では、「非局所的相互作用」の場合はどうでしょうか? もし「非局所的
相互作用」が存在すれば、3次元空間内の異なる位置に在る物体Xと物
体Yが、仲介者Zを間に挟むことなく、空間的距離を飛び越えて、直接相
手の存在や状態を知り得る可能性が出て来ます。互いに相手の存在や
状態を推測し合うのではなく、相手の真の状態を確実に知り合えるはず
です。そうすると、「自分が相手を知る」というよそよそしい関係を超越し
て、「自分は相手でもある」という一体感が生じるような気がします。
脳B全体を「非局所的相互作用」が結び付けた時に初めて、B1-Bnに
随伴していた心M1-Mnが融合し、「1つの心」Mになる、というのはそうい
う意味です。
あるいは、こういう表現もできるかもしれません。物体Xは3次元の立
体なので、その物質構造は、3次元的自由度を持っています。一方、物
体Yが周囲から「局所的相互作用」だけしか受けられないとすると、それ
は必ず物体Yの表面を通してですから、どういう「局所的相互作用」を受
けるかは、2次元的自由度しか持ちません。物体Xが、自分の3次元的物
質構造に関する情報を物体Yに伝えようとしても、物体Yは、2次元的自
由度しかない「局所的相互作用」としてしか、その情報を受け取れないの
です。ちょうど、相手の3次元的形状を直接見ることはできず、地面に映
る相手の2次元的な影の形状から、相手の3次元的形状を推測している
ような状況です。だから、2次元的な影の形は全く同じでも、3次元的形状
は全く違っていた、ということが起こり得ます。
一方「非局所的相互作用」の場合は、物体Xの中の任意の点Pxと、物
体Yの中の任意の点Pyとが、空間的距離を飛び越えて、直接相互作用
可能です。だから、互いに相手の3次元的形状や3次元的物理状態を、
有りのままに知り合える、という訳です。
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私がこの問題を考える時、いつも頭の中に浮かんでいたのが「プラネタ
リウム」です。本物の星(100光年離れているとする)を見ている時、私の目
に入ってくる光は、100光年もの距離を実際に走ってきたものです。一方、
プラネタリウム(半径10mとする)の星を見ている時、私の目に入ってくる光
は、わずか10mの距離を走ってきただけです。しかし、私の目に入る時点
での光の状態が全く同じであったとすると、私は自分がどちらを見ている
のか判断できなくなるでしょう。この説明は、今後も何度か使うと思うので、
これを[プラネタリウムの原理]と名付けます。
[プラネタリウムの原理]
本物の星を見ている時と、プラネタリウムの星を見ている時とで、私の目
に入ってくる時点での光の状態が全く同じなら、私はそれがどちらなのか
を識別できない。
すなわち、光が私にどういう影響を及ぼすかは、私の目に入ってくる時点
での光の状態だけで決まり、その光の過去の履歴の違い(100光年走り続
けて来たか10m走っただけか?、まっすぐに来たかジグザグに曲がって来た
か?、本物の星が放出した光か、それとも映写機の電灯が放出した光がス
クリーンで反射されて来たのか?)は、関係ない。
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4次元時空内における脳B全体の世界線ネットワークを考え、その任意の
一部をB1、残りの部分をB2とします。B1とB2の境界面(正確には3次元の
「超面」)によって、B1とB2とを結び付ける光子や物質素粒子の世界線の何
本かは、B1側とB2側に切断されます。[プラネタリウムの原理]を用いること
で、「B1の部分は全く同じ状態に保ち、B2の方だけを全く異なる世界線ネッ
トワークD1で置き換え、しかもB1とD1との境界面で運動量・エネルギー等の
保存則を満たす」ことが可能であることを示します。
境界面で切断された1個の光子aの世界線に注目します。この光子aは、
B2の中の電子e2が放出した運動量pの光子で、それをB1の中の電子e1が
吸収していたとします。そこでこの電子e2を、人工的装置で置き換えます。
運動量pの光子を放出する機能さえ持っていれば、どんな装置でも構いま
せん。とにかく電子e1に対し、同じ場所で、同じ時刻に、同じ運動量pの光
子を送り込みさえすれば良いのです(取り敢えず、量子力学は無視し、古典
物理学的粒子と考えておきます)。電子e2と同じ位置で光子を放出する必
要も有りません。もっと離れた位置からでも良いし、境界面の無限小手前か
らでもOKです。電子e1を含むB1の方は、光子がB2の中の電子e2から来た
のか、それとも人工的装置から来たのかを、知ることができません(これが
[プラネタリウムの原理])。つまり、電子e1を含むB1全体の世界線ネットワー
クの方は何一つ変えることなく、電子e2を人工的装置で置き換えることがで
きる訳です。
1個の光子でそれが可能なら、B2からB1へ入っていく多数の光子につい
ても、同じように考えることができます。逆にB1からB2に入ってくる光子に
ついては、それを吸収するだけの人工的装置で置き換えれば十分でしょう。
もちろん、光子だけでなく、電子や陽子など、どんな種類の素粒子について
も同様に考えられるはずです。
1個の光子や電子や陽子を放出・吸収する人工的装置は、様々な物質構
造が考えられます。最も簡単なのは、1個の素粒子です(電子は光子を吸収
・放出できるし、光子は電子と陽電子を対生成できます)。2個の素粒子が
何らかの相互作用をしたついでに、光子や電子や陽子を放出した、として
も良いです。3個、4個、・・・・の場合も考えられます。人工的装置とは、それ
らのうちどれでも良いのですから、無数の可能性が有ります。
そのような個々の人工的装置を、D1a,D1b,D1c,・・・とし、それらを適当に
組み合わせたものを、人工的装置D1と見なします。そうすれば、B1の世界
線ネットワークの方は何一つ変えることなく、B2の方だけを、B2とは全く異
なる世界線ネットワークD1で置き換えることができます。境界面からB1の側
は何も変えず、境界面からB2の側に無限小だけ入った所で、すでにB2とは
全く異なるようなD1で置き換えることもできます。もちろん、B1とD1との境界
面で「接続条件」(運動量・エネルギー等の保存則)を満たしていることは当
然です。
さらに、D1a,D1b,D1c,・・・は、特に合体する必要は無く、独立したまま全体
をD1と呼ぶこともできます。つまり、
D1の複雑な構造が、実はB2と同じ機能を持つと見なせるのでは?
という反論も成立しないことが明白です。
(量子力学まで考慮すると、不確定性原理のため、1個の素粒子の位置座
標と運動量が同時に正確には定まりません。従って、1個の素粒子の世界
線が、正確な1本の線ではなくなり、位置と傾きが微妙にずれた線を多数
重ね合わせた「チューブ」のようなものになります。しかし、脳機能を議論す
る時には、多数の素粒子の世界線のトポロジー的なつながり方さえ同じで
あれば、多少の伸び縮みやズレは無視して、同じ脳機能であると見なして
良いと思います。)
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「局所的相互作用」の本質こそ、この[プラネタリウムの原理]が成立する
点に有ります。「非局所的相互作用」の方はこれが成立しません。。
「局所的相互作用」 の場合
B2を、物理状態の全く異なる人工的装置D1で置き換えながら、D1
からB1へ及ぼす「局所的相互作用」を、B2からB1へ及ぼす「局所
的相互作用」と、全く同じにすることができる。
「非局所的相互作用」の場合
B2を、物理状態の異なる人工的装置D1で置き換えながら、D1から
B1へ及ぼす「非局所的相互作用」を、B2からB1へ及ぼす「非局所
的相互作用」と、全く同じにすることはできない。
D1からB1への「非局所的相互作用」を、B2からB1への「非局所的
相互作用」と全く同じにするためには、D1とB2の物理状態が全く同
じであることが、必要十分条件である。
以上