2003.12.01 馬場純雄
(C) SumioBaba
2003
[SB009]
心は非物質的実体を持つ?
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「脳」は実体を持つ物体であるのに対し、「心」はその機能であって実体
を持たない、という表現をよく聞きます。コンピュータに例えると、「ハード
ウェア」が「脳」、「ソフトウェア」が「心」である、という表現も有ります。本当
にそうでしょうか? この問題にメスを入れるため、[実体を持つ存在]と[実
体を持たぬ存在]を、次のように定義します。
[実体を持つ存在]=「質料」+「形相」
[実体を持たぬ存在]= 「形相」
全く同じ「ハードウェア」を持つ2台のコンピュータA1とA2で、全く同じ「ソ
フトウェア」a1とa2を作動させている状況を考えましょう。
A1とA2は「ハードウェア」すなわち[実体を持つ存在]であり、「質料」と「形
相」の両方を持っていますから、たとえA1とA2が原子一個も異ならぬほど
全く同じ「形相」(物質構造)をしていたとしても、A1は原子1-Qで構成されて
いるのに対し、A2は他所から持ってきた原子1'-Q'で構成されているから、
やはり両者は別物だ、という具合に、「質料」の違いで両者を区別すること
ができます。原子1-Qと原子1'-Q'とが「質料」として別物と見なされる理由
は、同一時刻に異なる空間位置を占めているからです。従って、次の2つ
を区別することは有意味です。
{1} A1がX1室に、A2がX2室に置かれている状態
{2} A1がX2室に、A2がX1室に置かれている状態
{1}と{2}では、A1とA2とが、X1室とX2室との間で、場所交代されています。
もう一度場所交代すれば、元に戻ります。
一方、a1とa2は「ソフトウェア」であり、[実体を持たぬ存在]ですから、「形
相」だけしか持ちません。つまり、a1とa2が1ビットも異ならない「形相」(数
学的構造)を持っているのであれば、直ちに両者は同一であり、次の2つの
区別は無意味です。
{3} a1がA1の中で、a2がA2の中で作動している状態
{4} a1がA2の中で、a2がA1の中で作動している状態
{1}と{2}の区別が有意味なのは、A1とA2が[実体を持つ存在]だからであり、
{3}と{4}の区別が無意味なのは、a1とa2が[実体を持たぬ存在]だからである
点に注意して下さい。
(他の例を挙げれば、「本そのもの」は[実体を持つ存在]であるのに対し、
「本に書かれていること(意味的な内容)」は[実体を持たぬ存在]です。だか
ら、私と友人が同じ本を一冊ずつ買って来た時、「私の本と貴方の本を交
換しよう」というのは有意味ですが、「私の本と貴方の本とで、書かれてい
る内容を交換しよう」というのは無意味です。)
以上で、[実体を持つ存在]と[実体を持たぬ存在]の定義が完成しました。
果たして「心」は、どちらなのでしょうか? この点を明らかにするために、次
の2つを比較してみます。
{5} オリジナルの「自分の心」が原子1-Pの身体に、
コピーの「自分'の心」が原子1'-P'の身体に存在する状態
{6} オリジナルの「自分の心」が原子1'-P'の身体に、
コピーの「自分'の心」が原子1-Pの身体に存在する状態
もし「脳(身体)」と「心」との関係が、コンピュータの「ハードウェア」と「ソフト
ウェア」の関係に等しいのなら、「心」は「ソフトウェア」すなわち[実体を持た
ぬ存在]ということになり、{3}と{4}の区別が無意味であったのと同じく、{5}と
{6}の区別も無意味なはずです。ところが、私の本心として、{5}と{6}の区別
が無意味であるとは、とても思えません。どちらか一方を殺すと言われたら、
現在の状態が{5}なのか{6}なのかで、私には生きるか死ぬかの違いが有り
ます。つまり、{5}と{6}の区別は、{3}と{4}の区別ではなく{1}と{2}の区別と同種
のものであり、これは「心」が[実体を持たぬ存在]ではなく、[実体を持つ存
在]として捉えるべきものである事実を示唆しています。
しかもオリジナルの「自分の心」は、新陳代謝の結果、原子1-Pの身体
から原子1'-P'の身体へと移し入れられるように実感します。[SB008]を思
い出して下さい。[質問A]の場合は{5}でしたが、[質問B]の場合は{6}に変わ
っていました。ゆえに「心の質料」は、身体(脳)を構成している物質である
原子1-Pでもなければ原子1'-P'でもなく、非物質的実体「霊魂」ではない
のか?と考えることになります。
「心は脳の機能なのであって、[実体を持たぬ存在]なのだ!!」と決め付け
ている人もいます。そういう人は、[質問A][質問B]の両方に、「どちらを殺
されても良い」と答えるかもしれません。しかし私は、その人の方が、我々
人間の心の本質を、ねじ曲げているように感じてしまいます。
以上