2003.12.03 馬場純雄
(C) SumioBaba
2003
[SB010]
思考実験は実現可能でなくて良い
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原子1個も異ならぬほどのコピー人間など、現在の科学技術では作れ
ません。未来永劫実現しないかもしれません。実現不可能な仮定をした
上で、科学を議論して良いものでしょうか?
理論科学の「思考実験」による論駁とは、理論そのものの中に矛盾が
含まれていないかどうかの考察です。本当に正しい理論であれば、どん
なに非現実的な状況でも、それが物理法則に反しない仮定である限り、
すべてを説明できなければなりません。言い換えると、どんなに理想的
で非現実的な「思考実験」でも良いから、物理法則に反しない状況設定
の上で、その理論の矛盾を示す事ができたら、それは立派に、その理論
の誤りを指摘したことになります。コピー人間の考察も、確かに実現可能
性には疑問が残りますが、物理法則に反する仮定ではないので、「思考
実験」では十分に有効と言えるでしょう。
それに、[SB008]で言おうとしたのは、本来の「自分の心」を原子1-Pの
身体から原子1'-P'の身体に移し入れられる、という事でしたが、コピー人
間を作らない限り移し入れはできない、という訳ではありません。誰もが
日常生活で体験している「新陳代謝」こそ、その現象そのものなのです。
ただし、新陳代謝における自己同一性保存だけを見ていると、
単に「形相」が保存されるだけ
なのか、それとも、
「形相」だけでなく「質料」としても保存されている
のかが、よく判りません。コピー人間を空想するだけで、前者ではなく後
者である事実が、はっきり理解できるようになります。すなわちコピー人
間とは、それを理解し易くするためのダミーに他ならず、実際に作る必要
は有りません。
以上