2003.12.06 馬場純雄
              (C) SumioBaba 2003

                  [SB017]
       「自分」と「自分'」の区別はメタレベルで可能

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 それからもう1つ、[ソフトウェア説]を支持する人の説明に、次のような
論法が有ります。

   オリジナルの「自分」とコピーの「自分'」の物質構造が完全に
   同じであるとすれば、「自分」も「自分'」も、本当は自分がどち
   らなのかを、自分で判断できなくなるはずである。
   「自分'」も自分がコピーだとは思わず、自分をオリジナルの「自
   分」だと思っているかもしれない。逆に「自分」も、自分がオリジ
   ナルの「自分」だと思い込んでいるだけで、本当はコピーの「自
   分'」かもしれない。
   自分がどちらなのかを自分で判断できないのであるから、それ
   ゆえに、「自分」と「自分'」の区別は無意味なのだ。

この論法の場合、「対象レベル」と「メタレベル」の混同が有るように思い
ます。

 コピーを作った後の、オリジナルの「自分」とコピーの「自分'」とが「対象
レベル」。コピーを作る前に、「どちらを生かし続けて欲しいか?」という質
問を受けている「自分」が、「メタレベル」です。
 確かに「対象レベル」の「自分」と「自分'」は、自分が本当はどちらなの
かを、自力で判断できない場合が生じるかもしれません。周りの人間た
ちが共謀し、逆に教えたとすると、オリジナルの「自分」は自分をコピーの
「自分'」だと思い込み、コピーの「自分'」の方が自分をオリジナルの「自
分」だと思い込むでしょう。それは確かにその通りです。しかし、「メタレベ
ル」の「自分」の立場に立つと、「自分」と「自分'」のどちらに主観的自己
同一性の存続を感じるかを、確実に判断することが可能です。

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 例えば、次の質問を考えてみましょう。

   健康による熟睡のため意識不明になるのと、脳障害を起こして
   病的に意識不明になるのと、あなたはどちらを好むか?

どちらかの意識不明に陥った状態の自分が「対象レベル」、この質問を
受けている自分が「メタレベル」です。
 「対象レベル」では、すでに意識不明なのですから、自分がどちらの
意識不明を好むかを判断できませんし、自分がどちらの意識不明状態
にあるのかさえ、知り得ないでしょう。しかし、しっかりした意識を持って
この質問を受けている「メタレベル」の自分は、自分がどちらを好むかを
はっきり判断できます。よほど自殺志願の変人でなければ、「健康によ
る熟睡」の方を選ぶでしょう。
 「対象レベル」で判断できないからといって、その区別は無意味だ、と
は言えません。「対象レベル」で判断ができなくても、「メタレベル」で判
断が下せるなら、その質問に対する答は、立派に意味を持つと思われ
ます。

以上