2004.11.21 馬場純雄
              (C) SumioBaba 2004

                  [SB031]
     心の「非局所的相互作用」が波動関数を収縮させる

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 脳Bをn(≧2)個の部分B1-Bnが接合されていると解釈する時、B1-Bnが
どんなに親密に相互作用しようと、それが「局所的相互作用」である限り、
B1-Bnに随伴する心M1-Mnは独立したままだ、と主張しました。M1-Mn
を融合して「1つの心」Mにするためには、何かが「非局所的相互作用」で
結び付け、MがM1-Mnの独立した和(線形の重ね合わせ)でない状態に
なる必要が有ります。そして、M1-Mnが融合され、大量の情報を持つM
になる時、その情報の量に応じて、脳Bおよび外界の状態を表す波動関
数が収縮を起こします。これが、量子力学観測問題に対する私の答です。

          「量子力学観測問題に対する私の答」
    脳Bの個々の部分B1-Bnに随伴する心M1-Mnが、「非局所
    的相互作用」で「1つの心」Mに融合される時、Mが持つ情報
    の量に応じて、脳Bの状態および脳Bが知覚している外界の
    状態を表す波動関数が収縮する。
    もし「非局所的相互作用」が存在しなければ、脳Bに随伴す
    る心Mは、個々の素粒子B1-Bnに随伴する心M1-Mnにまで
    分解し、素粒子B1に随伴する心M1は、外界(B2-Bnを含む)
    についての情報を何も持たないので、M1にとって外界の状
    態は、あらゆる量子状態の重ね合わせのまま、波動関数の
    収縮は一切起こらない。

2つの心M1とM2が融合してMになると、なぜ脳Bおよび外界の状態を表す
波動関数が収縮するのかを説明します。

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 いま、物体Pと物体Q(合わせて、物体PQと呼ぶ)があり、物体Pは|P+〉と
|P-〉、物体Qは|Q+〉と|Q-〉という2つの量子状態の重ね合わせになってい
るとします。いわゆる「絡み合い」とは異なり、物体Pも物体Qも独立して+
と-の状態を取り得るとすると、物体PQの状態は、|P+〉|Q+〉,|P+〉|Q-〉,
|P-〉|Q+〉,|P-〉|Q-〉の4つの状態の重ね合わせになります。そして私が、こ
の物体PQを観測し、4つのうちどの状態であるかを知る場合を考えます。
 私の脳Bの機能を、4次元時空内で多数の物質粒子や光子の世界線が
絡み合った世界線ネットワークBであると見なし、このBを、B1とB2の2つ
の部分が接合されている、と解釈します。そして私が物体PQを観察した時、
B1には「Pは+である」という情報だけが、B2には「Qは+である」という情報
だけが入ったとします。

 もし「非局所的相互作用」がB1だけを結び付けて心M1を発生させたとし
たら、B1には「Pは+である」という情報だけが入っており、Qが+か-かとい
う情報は無いので、

    M1にとって物体PQの状態は、|P+〉|Q+〉+|P+〉|Q-〉である

と言えます。

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[ここで注意が必要です。我々はついつい、B1には「Pは+である」という
情報が、B2には「Qは+である」という情報が入っている事を知っていると
いう視点に立っているので、すでに物体PQの物理状態は、|P+〉|Q+〉だけ
に収縮しているのに、B1にはQが+か-かという情報が存在しないので、
M1は物体PQの状態が、|P+〉|Q+〉なのか|P+〉|Q-〉なのかを知り得ずにい
るだけだ、と考えてしまいます。しかしそれは、M1ではない視点に立って
しまうという誤りを犯しています。
 B1に随伴するM1の視点に立つと、B2の物理状態も不明なのです。B1
の世界線ネットワークをそのままに保ち、B2を全く異なる世界線ネットワ
ークB2'で置き換えながら、B1とB2'との境界で運動量やエネルギーの保
存則を満たすようにできます。B2の中には「Qは+である」との情報が入っ
ていると考えましたが、B2'の中には「Qは-である」との情報が入っている
可能性も有ります。そしてM1は、B1に接続されているのがB2なのかB2'
なのかを知り得ません。つまり、B1に随伴するM1の視点に立つと、B2の
状態そのものが「Qは+であるという情報を持った状態」と「Qは-であると
いう情報を持った状態」との重ね合わせのままなのです。B1だけに随伴
する心M1の視点に立つと、B2は外界の一部であり、B2がどちらの状態
なのか、M1は観測していないのですから。もし前者なら、物体PQの状態
は|P+〉|Q+〉だし、もし後者なら、物体PQの状態は|P+〉|Q-〉となりますが、
M1の視点に立つと、まだ両者が重ね合わせられたままであり、どちらに
も収縮していないのです。]

[量子力学では、不確定性原理のため、1個の素粒子の位置と運動量が
同時に正確には定まりません。従って、古典物理学のように明確な世界
線が書けず、世界線そのものが少しずれた線を多数重ね合わせたチュ
ーブのようになります。しかし、多数の素粒子の世界線がどういうつなが
りをもっているかだけは、はっきり書くことができます。脳機能を考える時
には、世界線のトポロジー的つながり方さえ同じであれば、多少ゆがんで
いたり、伸び縮みしていたりという違いは有っても、それらを同一の状態
であると解釈して良いと思います。]

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 全く同様に、「非局所的相互作用」がB2だけを結び付けて心M2を発生
させたとすると、B2には「Qは+である」という情報だけが入っていて、Pが
+か-かという情報は存在しないので、

    M2にとって物体PQの状態は、|P+〉|Q+〉+|P-〉|Q+〉である

と言えます。

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 では最後に、「非局所的相互作用」がB=B1+B2全体を結び付けて、心
Mを発生させたとしましょう。B=B1+B2の中には、「Pは+である」と「Qは+
である」の両方の情報が入っていますから、

    Mにとって物体PQの状態は、|P+〉|Q+〉である

と言えます。

                  ******

 M1だと、

    |P+〉|Q+〉+|P+〉|Q-〉+|P-〉|Q+〉+|P-〉|Q-〉
                    →|P+〉|Q+〉+|P+〉|Q-〉

までしか収縮しませんでした。M2だと、

    |P+〉|Q+〉+|P+〉|Q-〉+|P-〉|Q+〉+|P-〉|Q-〉
                    →|P+〉|Q+〉+|P-〉|Q+〉

まででした。Mだけが、

    |P+〉|Q+〉+|P+〉|Q-〉+|P-〉|Q+〉+|P-〉|Q-〉
                    →|P+〉|Q+〉

という収縮を起こせたことになります。

 今の話では、B1もB2もかなり大きな部分を想定し、B1に「Pは+である」
という情報が、B2に「Qは+である」という情報が入っている、と考えました。
この設定はやや人為的で、本当にそうはっきり分けられるかどうかは不
明です。要するに、脳Bの一部であるB1だけに随伴するM1、B2だけに随
伴するM2の視点に立つと、脳B全体の持つ情報の一部しか持てないので、
自分が持つ情報の範囲内でしか波動関数の収縮を起こせない、というこ
とです。B=B1+B2全体に随伴する心Mは、両方の情報を持っていますから、
片方だけの場合には起こし得なかった波動関数の収縮が、Mだったら起
こせるというだけの話です。

 今度はBをB1-Bnのn個の部分が接合されていると見なし、nを大きく取
って、個々の素粒子をB1-Bnとしてみます。
 脳Bの中には大量の情報が蓄えられていると思われますが、1個のニュ
ーロン、1個の分子・原子・素粒子の中に情報が詰め込まれている訳で
はありません。多数のニューロンのどれとどれがどういうタイミングでイン
パルスを発火しているか、多数の分子・原子・素粒子が互いにどういう相
対位置・相対速度で運動しているかという「関係性」の中に、情報は蓄え
られているはずです。1個の素粒子の中には、「Pは+である」という情報
も「Qは+である」という情報も、入っていないでしょう。
 もし「非局所的相互作用」が存在しなければ、個々の素粒子B1-Bnに
随伴する心M1-Mnは独立したままです。1個の素粒子は何も情報を持
たないので、

    1個の素粒子にとって物体PQの状態は、
      |P+〉|Q+〉+|P+〉|Q-〉+|P-〉|Q+〉+|P-〉|Q-〉のままである

となります。素粒子B1の残りの部分B2-Bnには、Pが+か-か、Qが+か-か
の両方の情報が含まれているでしょう。しかし、B1の世界線を固定しても、
B2-Bnの部分は様々な可能性が有り、何も決定できません。つまり、B1
に随伴する心M1の視点に立つと、物体PQの状態が4つの重ね合わせの
ままであるだけでなく、B2-Bnの状態もまた「|P+〉|Q+〉であるという情報を
持つ状態」「|P+〉|Q-〉であるという情報を持つ状態」「|P-〉|Q+〉であるとい
う情報を持つ状態」「|P-〉|Q-〉であるという情報を持つ状態」の4つの重ね
合わせのまま、という訳です。

 もっと一般的に、全宇宙の中に存在する1個の素粒子は、外界に関す
る情報を何も持ち得ないと思われます。従ってこの素粒子の視点に立つ
と、外界は考えられる限り無数の状態の重ね合わせのままです。多数の
素粒子を「非局所的相互作用」で結び付ける何かが存在しないと、波動
関数は決して収縮を起こさない、と言えます。

                  ******

 「Pは+である」「Qは+である」という両方の情報を持つ心Mの視点に立つ
と、物体PQの状態は|P+〉|Q+〉に収縮しています。しかし、「Pは+である」
という情報だけを持つ心M1の視点に立つと、物体PQの状態は|P+〉|Q+〉+
|P+〉|Q-〉だし、「Qは+である」という情報だけを持つ心M2の視点に立つと、
物体PQの状態は|P+〉|Q+〉+|P-〉|Q+〉でした。これは自ずと、「多世界説」
を支持することにつながります。
 物理法則が許し得るすべての世界(宇宙)の集合をWとし、心が知覚する
のはその部分集合W1の重ね合わせだけだ、と考えます。WからW1を決
定するのは、その心が脳から得ることのできる情報です。
 「Pは+である」「Qは+である」両方の情報を持つ心Mは、Wを、

    W1: |P+〉|Q+〉である世界の集合
    W2: |P+〉|Q+〉でない世界の集合

に分けた時のW1だけを知覚しています。W1は、|P+〉|Q+〉である世界だけ
の集合であり、|P+〉|Q-〉である世界、|P-〉|Q+〉である世界、|P-〉|Q-〉であ
る世界は、どれもW2に属します。
 「Pは+である」という情報だけを持つ心M1は、Wを、

    W1: |P+〉である世界の集合
    W2: |P+〉でない世界の集合

に分けた時のW1だけを知覚しています。このW1は、|P+〉|Q+〉と|P+〉|Q-〉
の両方を含んでいます。
 「Qは+である」という情報だけを持つ心M2は、Wを、

    W1: |Q+〉である世界の集合
    W2: |Q+〉でない世界の集合

に分けた時のW1だけを知覚しています。このW1は、|P+〉|Q+〉と|P-〉|Q+〉
の両方を含んでいます。
 また、私の脳と友人の脳とでは、持つ情報が異なるはずですから、外界
の波動関数の収縮の仕方も異なります。人それぞれ、外界の状態を異な
るものとして知覚するという訳です。つまり波動関数の収縮とは、

    こういう情報を持った心の視点に立つと、世界はこう限定され
    て見える

というだけの話で、本当のところWは、何も変化していないことになります。

以上