2005.08.16 馬場純雄
(C) SumioBaba
2005
[SB049]
EPR相関によるM1とM2の融合は可能か?
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一般に、4次元時空内の異なる2つの領域Pと領域Qにおいて、領域P
の物理状態がある状態Paであって、他の状態Pbではない、と定めても、
領域Qの物理状態がある状態Qaなのか、それとも別の状態Qbなのかは
定まりません(両者は独立した自由度を持っている、という意味)。
しかし、量子力学の「EPR相関」、特に「絡み合い」と呼ばれる相関を用
いれば、次の(1a)や(1b)の状態、および、これら2つのどちらなのかがま
だ決まっていない、(1a)と(1b)の重ね合わせの状態が作れます。
(1a) 領域Pの物理状態がPaなら、領域Qの物理状態は必ず
Qaである。[これを、|Pa〉|Qa〉と書く。]
(1b) 領域Pの物理状態がPbなら、領域Qの物理状態は必ず
Qbである。[これを、|Pb〉|Qb〉と書く。]
そこで例えば、私の脳B内の、左脳B1の中に領域Pを、右脳B2の中に
領域Qを考え、
(1c) 右脳B2が左腕の痛みを感じている状態になれば、必ず
左脳B1は「左腕が痛い」と言語表現する状態になる。
(1d) 右脳B2が左腕の痛みを感じていない状態になれば、必
ず左脳B1は「左腕は痛くない」と言語表現する状態にな
る。
という関係に結び付けることも可能でしょう。もしそれができたとすると、
どういう効果を持つでしょうか。
もし左脳B1と右脳B2とが、「局所的相互作用」だけで情報交換してい
るとすると、たとえ右脳B2を捨て去っても、人工的装置D1から左脳B1に、
いかにも右脳B2が左腕の痛みを訴えているかのようなニセ情報を流し
込んでやると、左脳B1は右脳B2の不在に気付けず、「左腕が痛い」と言
語表現してしまうことになります。左腕の感覚領域を持つ右脳B2は、も
はや存在していないのに、です。これが[右脳不在のパラドックス]でした。
このパラドックスは、たとえ左脳B1と右脳B2とがどんなに親密に相互
作用していても、それが「局所的相互作用」である限り、B1に随伴する
心M1と、B2に随伴する心M2とは「独立」しており、B=B1+B2全体に随伴
する「1つの心」Mには「融合」できない事実を示唆しています。
ところが、「絡み合い」の場合は、だいぶ話が違います。「絡み合い」に
よって、(1c)または(1d)のどちらかだけが起きるように結び付けられてい
るとすると、右脳B2が左腕の痛みを感じている時は、必ず左脳B1が「左
腕が痛い」と言語表現するし、左脳B1が「左腕が痛い」と言語表現して
いる時は、必ず左腕の痛みを感じている右脳B2が存在しています。
(1c)と(1d)は、量子力学的に重ね合わせられていて、どちらに波動関
数が収縮するかは、収縮してみないと判りません。どちらに決まったか
の情報が、右脳B2から左脳B1への「局所的相互作用」で伝えられるの
ではなく、一種のテレパシーのような相関によってそれぞれの物理状態
が矛盾のない対応関係に決まるのですから、途中で妨害したり、ニセ
情報で左脳B1を騙すこともできません。
こうして、B1に随伴する心M1と、B2に随伴する心M2とが、B=B1+B2
全体に随伴する「1つの心」Mに「融合」する、とは考えられないでしょう
か?
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この説明、おそらく半分は正しいのではないかと思いますが、重要な
点が見落とされています。
(1) 領域Pの物理状態はPaである。
(3) 領域Qの物理状態はQaである。
としましょう。
(1)だけ知っても、(3)の方は知りようがない。
というのが問題の本質です。それに対し、
領域Pと領域Qとが「絡み合い」の相関を持っていれば、(1)
から(3)を知ることができるではないか!?
という反論を考えましょう。確かに、領域Pと領域Qとの間に「絡み合い」
の相関が成立している事実を知っている人は、(1)から(3)を知ることが
可能です。しかし、それを知っている人とは、誰でしょう? また、どうして
それを知り得るのでしょう?
実は、領域Pと領域Qの物理状態を「絡み合い」の関係にするために
は、領域Pと領域Qとを「局所的相互作用」で結び付ける領域Rが、特定
の物理状態である事が必要です。領域Rの物理状態がRaならば、領域
Pと領域Qとの間に「絡み合い」の相関が生じ、領域Rの物理状態がRb
ならば、領域Pと領域Qとの間に「絡み合い」の相関は生じない、と考え
てみましょう。すると、領域Pと領域Qとの間に「絡み合い」の相関が生じ
ている事を知るためには、
(2) 領域Rの物理状態はRaである。
を知ることが必要なのです。
「絡み合い」の場合、(1)だけから(3)が判るかのようについつい錯覚し
てしまいますが、実は(1)と(2)から(3)を推測しているのであって、やはり
(1)だけから(3)を知る事は不可能なのです。
つまり、領域Pは、自分が(1)を満たしていてPaである事は知り得ても、
領域Rや領域Qの状態は何も知り得ないので、もし領域RがRaなら「絡
み合い」の関係から領域QもQaだろうけど、もし領域RがRbだと領域Qも
Qbだろうし、どちらなのか判断ができない訳です。
領域Pが知り得るのは(1)だけ、領域Qが知り得るのは(3)だけ、そして
領域Rが知り得るのは(2)だけです。
(1)と(2)の両方を知り得れば、確かに(3)をも知ることが可能ですが、4
次元時空内の異なる2つの領域Pと領域Rの状態を同時に知る訳です
から、やはり領域Pでも領域Rでもない、第三者の視点が必要になりま
す。
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似たような状況は、量子力学の「絡み合い」を利用するまでもなく、も
っと簡単な状況でも起こります。
例えば、小学校の理科の実験です。スイッチPをONにする(P=Pa)と、
豆電球Qは点灯する(Q=Qa)、と断言できるでしょうか?
もちろん、断言できません。スイッチPと豆電球Qとがどういう関係に接
続されているかによって、事情が変わるからです。この場合、スイッチP
と豆電球Qとをつなぐ配線部分がRです。
もし配線Rが、スイッチPをONにする(P=Pa)と必ず豆電球Qが点灯する
(Q=Qa)ように接続されている(R=Ra)なら、P=PaとR=Raの2つから、Q=Qa
を知る事ができます。ただし、それを知り得るのは、スイッチPでもなけれ
ば、豆電球Qでも、配線Rでもなく、第三者の立場から、これら三者の関
係を認識している人間だけです。
他人の脳B=B1+B2をよく観察してみれば、左脳B1と右脳B2とは「局
所的相互作用」で親密に情報交換しているものと思われます。量子力
学の「絡み合い」を利用しているのかどうかは不明ですが、ごく普通の
「局所的相互作用」だけでも、(1c)または(1d)だけが起きるように、B1と
B2とが接続されている事実を、認識できるかもしれません。
問題は、それを知り得るのがB1でもB2でもない第三者だけだ、という
点なのです。たとえ第三者は知り得ても、個々のB1とB2が知り得なけ
れば、B1に随伴する心M1とB2に随伴する心M2とは、独立したままです。
M1とM2が「融合」して「1つの心」Mになるためには、M1とM2とが、互い
に相手の存在を確実に知り合わねばなりません。
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結局、量子力学の「絡み合い」だけでは、私の脳B=B1+B2全体に統
合された「1つの心」Mが発生する謎を、説明できないと思われます。
左脳B1は、自分が「左腕が痛い」と言語表現している状態である事は
知り得ても、本当に左腕の痛みを感じている右脳B2が接続されている
のか、それとも右脳B2は存在せず、人工的装置D1によって騙されてい
るだけなのかを知り得ません。右脳B2は、自分が左腕の痛みを感じる
状態である事は知り得ても、「左腕が痛い」と言語表現している左脳B1
が接続されているのか、それとも左脳B1は存在せず、人工的装置D2
によって騙されているだけなのかを、知り得ません。それなのに私の心
Mは、自分が左腕の痛みを感じている事と、「左腕が痛い」と言語表現
している事の、両方を知っています。
両方を知るための直接的方法は、左脳B1と右脳B2の存在および状
態を、第三者の視点から直接知ることです。[先程の(1)と(3)を直接知る
方法]。
もう1つ間接的な方法は、左脳B1が「左腕が痛い」と言語表現してい
る状態であること、または、右脳B2が左腕の痛みを感じる状態である
こと、のどちらか一方を知り、かつ、一方が存在する時には必ず他方も
存在するように、左脳B1と右脳B2とが接続されている状態である事実
を知ること、です。両者の相関が量子力学の「絡み合い」によるものか、
それとも普通の「局所的相互作用」による情報伝達なのかという違いは、
本質ではありません。[先程の(1)と(2)から(3)を導く方法]。
前者の直接的方法はもちろん、後者の間接的方法の場合も、B1とB2
とが(1c)または(1d)だけを生じさせるように接続されている事実を知り得
るのは、B1でもB2でもないため、やはり第三者の視点に立つ何かでな
ければなりません。これは[霊魂説]を要求します。
もし、第三者の視点を導入せずに、B=B1+B2全体を知り得ている私の
心Mを説明するのであれば、物質や光の中に「非局所的相互作用」の
存在を認めることが必要です。そして、4次元時空内の一個の領域Pに、
他の領域,Q,R,S,・・・・の物理状態に関する情報が、不可避的に入って
くるような理論を作らねばならないでしょう。この場合には、個々の領域
P,Q,R,S,・・・・が自分以外の領域の物理状態までを知っているので、領
域Pと領域Qの物理状態を両方知る第三者の視点は不要になる訳です。
以上