2005.10.01 馬場純雄
(C) SumioBaba
2005
[SB052]
「非局所的相互作用」
=「波動関数の選択的収縮」+「局所的相互作用」
******
量子力学は、どんなに常識外れの物理現象も、それが起きる可能
性はゼロではない、と主張します。ただし、奇妙な現象が起き易いの
は、ミクロな物理現象の場合であり、日常的なマクロな物体に常識
外れの現象が起きる確率は、無限小と言えるくらいに小さいので、現
実に起きることは無い、と説明できます。従って、もしマクロな物体に
常識外れの現象が起きた場合、
物理法則に反する現象が起きた!!
と解釈しても良いし、
いや、量子力学の不確定性原理の範囲内で、極めて小
さい確率の現象が起きただけであって、物理法則には反
していない。
と解釈することもできます。
これを応用すると、現在の物理学に反するような「非局所的相互作
用」が仮に存在した場合も、それを「波動関数の選択的収縮」と「局
所的相互作用」の組み合わせだったと、説明できることになります。
******
具体的な例として、机の上に置いてある石ころに「動け!!」と念じた
時、この石ころが右向きに10cmくらい動いたとしましょう。この場合、
1つの解釈は、現在の物理学で説明できない「念力」、すなわち、空
間的距離を飛び越えて及ぼせる一種の「非局所的相互作用」の存在
を認めることです。
現在の物理学では説明できない「非局所的相互作用」(念
力)が作用したのだ!!
一方、量子力学を用いれば、これを不確定性原理の範囲内で説明
することも可能です。
そもそも石ころは多数の粒子(分子・原子・素粒子)で構成されてお
り、個々の粒子は、あらゆる向きにいろいろな大きさの運動量を持つ
状態の重ね合わせになっています。確率的に様々な運動量を持つ全
粒子について、運動量の和を求めると、それらは99.99・・・%の確率
で打ち消し合い、石ころ全体としては運動量がほぼゼロの静止状態
になることが、統計的に確実に主張できます。
ところがもし、すべての粒子が、右向きの運動量を持つ状態だけに、
一斉に波動関数の収縮を起こしたとしたら、どうでしょう? それら全部
の和は、石ころ全体を右向きに動かすのに十分な大きさとなり、石こ
ろは右向きに動くでしょう。一見すると、それまで静止していた石ころ
が突然動き出すのですから、「運動量保存則」に反しているように見
えますが、量子力学は、常にそういう可能性も無限小ながら存在する
と主張します。つまり、次のような説明も可能なのです。
現在の物理学で説明できない「非局所的相互作用」(念
力)などが作用したのではない。
量子力学の不確定性原理の範囲内で、極めて確率の
小さい現象が起きただけであり、「運動量保存則」に反
した訳ではない。
石ころを構成する粒子どうしや、石ころと机の間の相互
作用は、すべて現在の物理学における「局所的相互作
用」だけで説明できる。
******
「非局所的相互作用」と「局所的相互作用」とは、はっきり区別でき
る別物です。すなわち、
「非局所的相互作用」≠「局所的相互作用」
しかし、「波動関数の選択的収縮」と「局所的相互作用」とを組み合わ
せると、「非局所的相互作用」と同じ効果が期待できるのです。
「非局所的相互作用」
=「波動関数の選択的収縮」+「局所的相互作用」
たとえ話で説明すると、
「曲線」≠「直線」
ですが、
「曲線」=「傾きの自由選択」+「直線」
というのに似ています。傾きkが一定の「直線」は、明らかに「曲線」とは
異なります。ところが、傾きkを自由に変えながら伸びていく「直線」は、
まさに「曲線」そのものなのです。
******
とは言うものの、静止していた石ころが突然右に動き出す確率は、量
子力学の不確定性原理だけで説明しようとすると、0.000・・・1%くらいに
小さいものです。それなのに石ころが、「右に動け!!」と念じると右に動き、
「左に動け!!」と念じると左に動く、という現象が何度も続けて起きるよう
であれば、
不確定性原理により、偶然に起きたのさ
という説明は、説得力を失います。やはり、
「念力」の存在を認める
か、そうでなければ、
なぜ自分が念じると、無限小と言えるくらい小さな確率の
現象が、頻繁に起きるようになるのか?
についての、新たな説明が要求されるでしょう。
自分の心が「右腕を挙げよう」と意志すれば、右腕が挙がります。自
分の心が「左腕を挙げよう」と意志すれば、左腕が挙がります。いわゆ
る「自由意志」の問題です。
この場合も、脳や身体の物理的メカニズムがすべて「局所的相互作
用」だけで説明できたとしても、だからといって、
自由意志は錯覚であり、存在しない。
と結論するのは早計です。もしそこに「波動関数の選択的収縮」が伴っ
ていれば、実は「非局所的相互作用」による「自由意志」が存在してい
るのに、それを「波動関数の選択的収縮」と「局所的相互作用」に置き
換えて説明しているだけかもしれません。
以上