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BORAX社技術サービス資料
セルロース系材料に対するホウ酸塩の防炎効果
1.緒言 セルロース系材料の燃焼メカニズムには2通りある(文献1,2)。温度150℃以上で、セルロースは分解して、気体、液体、タール状生成物および固体生成物を生ずる。このうち、気化、燃焼しやすいガスに着火すると、その熱で液状/タール状生成物が熱分解し更に燃焼性ガスを生成する。同時に、主として炭素質の炭と水蒸気、二酸化炭素の混合気体を生成する。このプロセスが進行すると最後に炭素質の炭が残る。
セルロース材料の燃焼は、炎が観察される第一の形式か、炎の出ない第二の形式で起こる。第二の燃焼形式の場合、光を発するか否かで、赤熱燃焼あるいはくすぶり燃焼と呼ばれる。 ホウ酸塩は主としてとして作用し、炭化を促進し、燃焼している物体からの可燃ガスの発生を押さえる。ホウ酸、Timbor、Boraxなどに化学的に結合している水の放出も、炎燃焼を抑制する。溶融したホウ酸は炭化物の周囲に保護膜を形成し、空気酸化を低減すると考えられている。ホウ酸がくすぶり燃焼を阻止するのは、これが理由であろう。Timbor、ホウ砂の両者は、炎燃焼を効果的に阻止する傾向があるが、くすぶり燃焼の阻止ではあまり効果的でない。 燐酸アンモニアが防火剤として作用するのは、燃焼中に有機物の炭化を著しく促進し、結果として可燃性の炭素含有気体の生成を減少させるためと考えられている。生成する炭は簡単には燃焼せず、可燃性ガスの生成量も減少するため、燃焼は抑えられる。燐酸アンモニア類は、化学的に結合した水を持たない。これらの化合物は、93℃から149℃の温度域で分解が始まり、アンモニアを放出し、重量は急速に減少する。硫酸アンモニアは、硫酸アルミニウムと同様、防火剤として作用するが、理由は多分炭の生成量の増加にあるらしい。硫酸アンモニアは、204〜260℃の温度域で分解するが、この際放出されたアンモニアの臭いがする。 硫酸アルミニウムが防火剤として作用する理由は、恐らくは炭化物生成量が増加するためであろう。硫酸アルミニウムは、93〜149℃の温度域で、化学的に結合した水を放出し始める。アルミニウムトリハイドレート〔Al(OH)3 :略称ATH 難燃剤〕含む材料を加熱すると、この化合物が水を放出する際に吸熱がおこり、温度上昇速度は遅くなる。水蒸気は、可燃性ガスを希釈、冷却し、燃焼を遅くする。 石膏を加熱すると、ATHと同様、水を放出して吸熱するため、温度上昇は遅くなる。水蒸気は可燃性ガスを希釈、冷却するため、燃焼は妨げられる。 1970年代のエネルギー危機を通して、住宅の熱効率に対する一般消費者の関心は飛躍的な高まりを見せた。家屋のエネルギー効率を高める最も簡単な方法は、家屋の断熱性を高め、周囲への熱損失を減少することである。 セルロースファイバーは断熱性が高く、特に既設住宅に対して使いやすく、比較的安価であるという理由で、頻繁に用いられた断熱材であった。たとえば、約19のR-値が必要な場合には、厚さ5インチのセルロースファイバー層が用いられる。ここで、R-値は材料を通しての熱伝導に対する抵抗を示し、R-値の高いほど断熱性に優れている。 セルロースファイバー断熱材を製造するには、新聞紙をシレッダーにかけたものをハンマーミルで粉砕し、均一に繊維化して高い断熱性能を持たせる。吹込み法(loose-fill)及び吹付け法(spray-on)によるセルロースファイバー断熱法は、住宅や商業建造物の壁や天井裏に広く利用されている。古くから用いられた単純な応用は、セルロースファイバーの屋根裏への吹込みである。断熱材は、屋根裏の空間に吹き込まれ、あるいは流し込まれる。 乾燥したセルロースファイバーは、更に、改修用断熱材として壁に吹き込まれる。吹き込み法セルロースファイバーは、密度2.2−3.5 lb/ft3 の場合、厚さ1インチ当たり3.2−3.7 ft2 hr ?/Btu の見掛けの伝熱抵抗を示す。セルロースファイバー断熱材の諸性質を表1に示す(文献3)。 吹込み用セルロースファイバーの製法は、乾式法と湿式法の二通りがある。乾式法は、工業的に広く採用され、次のような工程をとる。最初のミルでは、原材料の紙は、ハンマー方式またはロータリーカッター方式で、約1-2インチの大きさに破砕される。破砕された紙は、防炎処理剤と一緒に第二のミルに導入される。この工程は、製品の品質を一定に保つ上で決定的に重要である。防炎剤の供給は、空気輸送、ホッパーから落とす、あるいは螺旋フィーダーによる。多くの場合、原料薬剤は予め混合され、ミル内で一定の微粉に粉砕される。微粉砕された薬剤は、セルロース材料に容易に均一に分散する。メーカー数社で新たに開発中のミルでは、セルロースファイバー長が大きくなり、密度は低下し、R-値が高くなっている。 湿式法では、最初のミルで破砕した紙を第二のミルに送る途中で、防炎剤水溶液がスプレーされる。この方法では、過剰の水は空気の流れと第二のミルで分最中に発生する熱により除去される。湿式法は、少量の防炎剤をより均一に分散させることで、より高い防炎性を付与できる可能性があるが、このメリットは、水分を乾燥させるためのエネルギーで相殺される。 セルロースファイバーでの断熱工事には多くの、方法がある。最も簡単な例は、屋根裏での吹き込み法である。この場合、セルロースファイバーは、屋根裏の空間に吹き込まれるか、流しこまれる。乾燥したセルロースファイバーは、既設住宅の断熱改修工事として壁に吹き込まれることもある。 吹付け工事用のセルロースファイバーは、工事に際し水及び/またはバインダーを添加し、壁の空隙に吹き込むとき粘着するようにする。吹付け断熱は、住宅、アパート、ホテル、オフィスの外壁の空隙に断熱性や防音性をコントロールできる。 比較的最近では、セルロースファイバーを用いた新しい処方(安定化セルロースファイバー)が屋根裏の断熱に用いられている。この新しい製品は、酢ビまたはアクリル系の接着剤を含み、工事に際し少量の水を加えて使う。これまでの吹き込み法では、セルロースファイバー層の厚みは、最高25%の沈み込みを示すが、バインダーは、この沈み込みを無くすことが出来る。安定化セルロースファイバーのメーカーの1社は、屋根裏の断熱工事で、1.3 lb/ft3の密度を達成している。 このほか、壁の断熱工事に使用される二つのアプローチでは、水を使用しない。密充填法では、閉じられた壁の空隙に、3-3.5 lb/ft3という比較的高い密度でセルロースファイバーを吹き込む。このような高密度では、沈み込みは起こらない。他の方法では、開いた壁の空隙に型枠を使って乾燥セルロースファイバーを充填する。型枠は、柱間(はしらま)の内側に押し付けられ、セルロースファイバーを所定の場所に充填する。型枠を取り外し、断熱材が動かない間に壁の内側の腰板を取り付ける。 セルロースファイバーは可燃性で、特にくすぶり燃焼し易いので、防炎剤を添加する必要がある。 1981年、カリフォルニア州は、州内で販売されるセルロース断熱材に防炎性、耐くすぶり燃焼性を要求し始めた。防炎性とは、材料が炎の広がりを阻止することである。くすぶり燃焼とは、炎を出さない燃焼で、典型的な例は火のついたシガレットである。セルロースに防炎性、耐くすぶり燃焼性を与える薬剤にはいろいろある。ホウ酸は主としてくすぶり燃焼を抑えるために用いられ、Neobor(ホウ砂五水塩)は炎の伝播を遅らせるために用いられる。硫酸アンモニア、燐酸アンモニア、硫酸アルミニウム、燐酸アルミニウムなどの他の薬剤も用いられる(文献4)。 市販のセルロースファイバー断熱材に添加される防炎剤の濃度は、重量で10-40%が普通である。通常用いられる薬剤は、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、硫酸アンモニア、硫酸アルミニウム、アルミニウムトリハイドレート、燐酸のモノ−またはジ−アンモニウム塩である。これらの薬剤は、普通、2,3種類一緒にして使われる。最も一般的な組み合わせは、ホウ酸とBoraxまたはNeoborのようなホウ酸ナトリウムの混合物である。最も効果的な防炎剤は、可燃性タールの精製を減らして炭素生成量を増やし、セルロースの分解温度を下げ、発熱性熱分解が始まる温度を高めるようなものである(文献6)。 硫酸アンモニアは湿気と結合して酸性の副生物を生成し、これが電気配線などの腐食の原因となることが見出されている。浴室やガスレンジのフードから来る大量の湿気を含んだ空気は、寒い日には、露出した断熱材に結露する傾向がある。この結露が硫酸アンモニアから酸性の副生物を生成することが分かった。また、屋根裏で銅パイプや鋼鉄製のトラスファスナーが、濡れたセルロースファイバーと接触して腐食したという逸話的な報告もある。壁の断熱材として湿式スプレーセルロースファイバーの人気が高まっている折、腐食性の問題は特に重要である。この腐食問題を回避するため、多くの業者がホウ酸/ホウ砂で処理した湿式スプレー用セルロースファイバーを指定している。 酸性の燐酸一アンモニウムは、腐食性があるので、中和する必要がある。ボラックスは中和剤としてもすぐれ、セルロースファイバー断熱材を非腐食性に変える。中和剤のpHは7.5以上がよいが、好ましくは、大略7.9と8.3の間がよい。ボラックスはそれ自体防炎性があるので、中和剤として最大限添加してよい。燐酸アンモニアも、硫酸アンモニアも、煙を抑える効果がある。 硫酸アルミニウムは、腐食性なのでほとんど使用されない。アルミニウムトリハイドライドは、研磨製が高く粉砕しにくいので、ほとんど使用されない。 今日、セルロースファイバーメーカーは、ホウ酸塩と硫酸アンモニアの混合物を使用することが多い。少量の燐酸アンモニアを添加する場合もある。ホウ酸/ホウ砂五水塩混合物は、防火性、耐腐食性試験で信頼できる結果が得られる。アンモニアベースの薬剤は、安いがアンモニアガスを発生することが知られている(特に、ホウ砂五水塩と使用する場合)。さらに、アンモニアベースの薬剤は、使用時に腐食の原因とないうる。しかし、工業的には、硫酸アンモニアが非常に安いので、これでホウ酸塩を部分的に置き換えようとする傾向が見られる。 セルロースファイバー断熱材に使用される難燃剤は、製造当初のみならず、断熱材が組み込まれる構造体の寿命を通じて有効性を保つ必要がある。そこで、難燃剤の永続性が重要な課題となる。残念ながら、難燃剤の永続性を決定できる試験方法は確立されていない。このことが、セルロースファイバー業界にとって混乱を招く問題となっている。 永続性の不足は二つの側面がある。第一は、断熱材から防炎剤が取り去られる場合であり、第二は防炎剤が再分配した結果、断熱材中に防炎剤が不足している部分が生ずることである。ホウ酸塩が失われる可能性のある2、3のメカニズムが知られている:輸送や施工時の振動、昇華、溶脱、分離などである。テネシー工業大学およびAllied Signal社の研究では、屋根裏などで経験される高温と比較してはるかに高い温度でなければセルロース断熱材中の防炎剤は消失しない証拠がある(文献7)。屋根裏で672年間使用された場合に匹敵する振動を加えても、試験対中では測定できる程度のホウ酸やホウ砂の沈積は起こらなかった。セルロース断熱材からのホウ酸の蒸発(昇華)については、高温(90℃)、湿度100%では顕著なホウ酸の消失が見られたが、70℃以下では湿度100%、屋根裏の空気交換率を1時間2回にしても殆ど消失はなかった。このような条件下では、ホウ酸塩の消失が燃焼試験の結果に顕著に影響するには300年以上かかると推定された。硫酸アンモニアを用いたD. YarbroughとAllied Signal社の研究も同様な結論に達した。すなわち、非常に高い温度でなければ、防炎剤の消失は起こらない。 セルロース断熱材を初め多数の断熱材が大きく売り上げを伸ばし、また、製造及び施工の両面で、断熱材ビジネスへの雑多な新規参入者が出現するに及び、連邦政府の消費材安全委員会は1978年、セルロース断熱材の国家規格を採択した。現行の国家規格HH-I-515-Dは、大部分はASTM C-177,-236,-518 及び-739に基づくものであるが、設計密度、スターチ含有量、熱抵抗、湿気の吸収、匂いの発散等を測定する一連の試験法からなる。 試験では、腐食性のほか、菌に対する抵抗性、臨界輻射線束、くすぶり燃焼も行われる。設計密度は、建物の屋根裏で必要なん熱抵抗性(R-値)を達成するのに必要な断熱材量をコントロールする。R-値は、厚さ4インチ以上の断熱材の見掛けの熱伝導性測定値から計算する。R-値は熱伝導度の逆数であり、1インチあたりのR-値を求めるには、試験体のR-値を厚さで割ればよい。薬剤の混合比率を誤った防炎剤や緩衝剤を使用しない場合は、防炎剤は腐食性を示す可能性がある。連邦規格は、断熱材について、鉄、アルミ、銅に対する腐食性試験を要求している。防炎剤組成が試験で非腐食性と判断されたら、このpHを測定する。生産工程では、腐食性をコントロールするためpHを測定する。pHが適切な範囲に収まれば、断熱材は非腐食性と考えられる。 防炎試験:熱線輻射パネル法、くすぶり燃焼試験、炎伝播試験 断熱材の耐炎性は、熱線輻射パネル法及びくすぶり燃焼試験の二つの試験で規定される。 くすぶり燃焼試験は、断熱材内部でのくすぶり燃焼に対する抵抗性を示す。この試験では、8x8x4インチのステンレス箱内にセルロース絶縁材を入れ、落ち着くまで予備調製する。サンプルの中央部に鋭利なロッドで孔を突き開け、火をつけたタバコを落とす。2時間後に重量減少を測定するが、規格に合格するには、減少率は15%を越えてはならない。 連邦規格には入らないが、実験室ではflame spread(炎の広がり)と呼ばれる試験法がある。この試験では、断熱材表面の燃焼をレッドオーク材と比較する。レッドオークのフレームスプレッドを100とすると、セルロース断熱材の数値は25以下である。 建築法規が防炎剤処理木材の使用を要求してから50年近くなる。 防炎剤の作用メカニズムとしていくつかの説があるが、化学説は最も広く受け入れられている。この説によれば、防炎剤は、木材の熱分解に直接関与し、炭化を促進し、揮発性、燃焼性ガスの発生を抑える。 ホウ酸塩ベースの防炎処理は、高温に曝される木材の熱分解を阻止、あるいは減速できる。これは、太陽熱に曝されて温度上昇する屋根のトラス材や野地板用合板に有用である(文献10および11)。ホウ酸塩処理木材は、いろいろな温度に曝しても、破壊モジュラスの大きな減少はない。リン酸処理は、破壊モジュラスに対し、最大の初期減少、加熱による減少が見られる。リン酸処理ほどではないが、リン酸一アンモニウム処理は、破壊もジュラスに対して初期減少、加熱による減少が見られる。 今日、製材や合板の処理に広く使用されている防炎薬剤には、ホウ素化合物(ホウ砂、ホウ酸、ホウ砂五水塩)、リン化合物(リン酸、リン酸一アンモニア、リン酸グアニル尿素、ジエチル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチルリン酸エステル)などである。木材の防炎処理に使用されるDricon法では、ジシアンジアミドも用いられている。 リン酸一アンモニアとリン酸グアニル尿素は、いくつかの商業ベース防炎剤の成分として用いられている。ジエチル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチルリン酸エステルは、pHが中性なので、防炎剤としてすぐれている。 実用化されている防炎剤は、上述した成分の混合物のことが多い。1975年前は、AWPA規格P-10に詳述された4種の防炎剤が広く使用された。しかし、防炎処理木材の吸湿性、腐食性、強度劣化などへの配慮から、AWPAは、規格を化学組成スペックから性能規格へと変えた。AWPA規格C20-96によれば、構造材はAWPA規格C1の要求に合わせて防炎処理する。使用すべき防炎剤システムは、AWPA規格PXに記載されている。 屋内用の低温タイプ(LT)及び高温タイプ(HT)用材の両方に対して、ASTM D3201に準拠し92±2%の相対湿度で測定する場合、材料の平衡含水率は28%を越えてはならない。 屋根のトラスや枠材のような高温の用途に用いられる防炎剤処理木材は、ASTM規格D-5664又はこれと同等の方法で強度試験を行う。この場合、少なくとも1組のサンプルは、暴露時間を105日以上とする。 防炎処理木材は、(処理時に強度低下があり、)高温高湿に曝されると更に強度低下する可能性があるので、ユーザー及び仕様作成者は、最初の強度低下及び高温高湿度で長時間使用する場合の強度に対する適切な設計値修正ファクターを防炎剤メーカーから入手すべきである。また、防炎剤処理木材は、未処理材と異なる腐食性を示すことがあるので、防炎剤メーカーから推奨接合金具について情報を入手しておくべきである。 ベニアから成る合板の防炎剤処理は、AWPA規格C1に準拠して加圧注入する。性能規格、防炎剤組成、防炎剤処理の影響等は、製材の防炎剤処理と同様である(AWPA規格C27-96参照)。屋根野地板のように高温で使用される防炎剤処理合板の強度試験はは、ASTM規格D-5516又は同等の手法で行うこと。少なくとも1組の試験体は、最低75日の暴露を実施する。 防炎剤処理した木材を71℃以上の温度で再乾燥すると、かなりの強度低下があることが分かっている。 製材や合板の防炎剤処理による強度低下は、塩化亜鉛-クロムの場合が最も顕著である。他の防炎剤による 強度低下は、再乾燥を71℃以下で行う限り同程度である。 防炎剤処理は、炎が材表面を進む速度をドラスティックに低下させ、また燃焼潜熱を減少させる。しかし、処理材によっては、含水率の増加、強度低下、接合金具の腐食性増加というような好ましくない副次的な効果をもたらす。副次効果の度合いは使用した防炎剤に依存し、また、副次効果の重要性は、製品の用途によって異なる(資料14)。ホウ砂、ホウ酸は最小限の副次効果しか示さない。 防炎剤処理木材の劣化度合は、防炎剤の組成、暴露される温度、湿度に依存する。66℃での暴露の場合、一旦劣化が始まると、どの防炎薬剤も同じような速度での強度低下が見られた(資料15)。この理由は、高温で防炎剤薬剤に十分なエネルギーが供給され、薬剤が分解して酸性の官能基が出現すると、後は、防炎剤処理木材は同じような速度で強度低下が進行するためである。防炎剤間の本質的な差は、所定の温度で各々の化学種が分解し、酸性の官能基を生ずるために必要な時間とエネルギーである。 この項では木材の削り片、フレーク、チップ、繊維等の粒子が尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒドのような熱硬化型の接着剤で結合されたような、種々の樹脂結合複合ボードを扱う。これまで、チップボードの生産量は他のボードに比較して圧倒的に多かったが、最近、中密度ファイバーボード(MDF)の世界の生産能力が急速に増加している。 今日生産されるボードのうち、防炎剤処理されるのは、極めて僅かな部分である。防炎剤処理ボードに対するニーズは法規制に大きく左右される。すなわち、局所的である。 殆どのパーティクルボードの生産は、尿素ホルムアルデヒド接着剤を用いるが、これらは酸硬化性である。アルカリ性のホウ酸ナトリウム類は、硬化反応を低下させるため、この種のボードの防炎処理には、主としてホウ酸が使用される(資料16/17)。世界諸国の防炎試験規格の多くを満足するには、乾燥状態のボード重量に対し、典型的には、15%のホウ酸を添加すればよい。最も広く利用される方法は、パーティクルの流れに、接着剤添加前に、ホウ酸を加えることである。ホウ酸ナトリウムを使用したいときは、アルカリ性の薬剤と相性のよいフェノールホルムアルデヒド接着剤を使用する。 ファイバーボードの製造工程は製紙工程に似ており、大量の水を必要とする。水溶性の防炎剤を添加する場合は、防炎剤の一部が廃水とともに失われるのを防ぐため、水の再循環が必要になる。この問題は、形を整えた、濡れたファイバー層を真空ボックス上を通過させ、通過直前に八ホウ酸二ナトリウム四水和物(DOT)水溶液を添加することで解決した(資料18)。真空でファイバー層の水が吸い取られるはずみに、DOT溶液はファイバー層に吸い込まれる。必要ならば、製造ラインは真空ボックス以降をクローズドシステムとし、ファイバー層を通り抜けたDOT溶液をリサイクルできる。ファイバーボードに適切な防炎性能を持たせるには、ボードの重量に対し、約15%のDOTを添加するとよい。 商業的に、中密度ファイバーボードあるいはMDBと呼ばれる、レジン接着したファイバーボードの生産・消費が急速に伸びている。MDFの生産では、多くの場合、ホルムアルデヒドベースの接着剤が使用されているので、相性の点からホウ酸が使用される。しかし、このような接着剤と相性のよい防炎剤も開発され使用されている。
1973年12月に米国商務省の燃焼性規格FF4-72が採択された。この法律では、すべてのマットレスは、くすぶり燃焼性を見るためのシガレット試験に合格することを要求されたため、試験に合格する材料探しが必死に行われた。この結果、木綿の成形わたにホウ酸を添加するのは、非常に効果的であることが判明した。この結論は、今でも正しい。 ホウ酸塩は、ユーザーの判断で、綿を層状に成形する反毛工程で添加される。綿を薄層化するガーネット反毛工程の直後に添加する例もある。この場合は、反毛わたの各層がホウ酸を含むことになる。開毛除塵機(Willow)の第2ステージで添加することもある。 自動車や飛行機の中で使用される布団または柔らかい備品は、米国交通省の法規により防炎処理が義務付けられている。しかし、家具に用いられる綿の防炎剤処理を要求する連邦法規は存在しない。しかし、カリフォルニア州で1977年3月に採択された規格では、家具は「マットレスに適用されたと類似のタバコによる着火試験」と詰め物を対象とした「垂直火炎試験」の両方に合格することを求めている。更に、合成詰め物は、「66℃で熱処理した後の垂直火炎試験」をパスする必要がある。熱処理した綿は最後の要求を満足しなくてよいが、理由は満足しないことが明白なためである。ホウ酸処理した綿は、気相拡散により熱処理法に合格する可能性がある。 布張り/革張りの家具や寝具を製造、卸売り、小売する者は、法律により販売する州ごとに免許を受けねばならない。大略40の州が、マットレスや布団などの特定の家庭備品に関し免許あるいは登録を義務付けている。カリフォルニア州の消費者問題局内の家庭内装及び断熱庁は、家庭内装と断熱とに関するビジネスを認可あるいは管理する責任を持ている。布張り/布張り家具のすべてが、4種類の燃焼性を表すラベルのいずれかをつけていなければならない。国際寝具協会(ISPA)は、50州のすべてに対し、家庭用家具の満たすべき要件を発行している。また、州ごとにコンタクトすべき人間または組織の名称、アドレス、電話番号を記載している。 織物の防炎処理は、基本的には綿やその他のセルロース材料に推奨されるが、ある種の合成繊維、特にレーヨンにも適用される。防炎性能の要求される材料としては、ある種の衣類、ドレープ、ラグ、アイロン台カバー、ストーブや暖炉の熱反射板用の布、火消し用キャンバス、クリスマスツリー用の装飾品、などがある。綿ベースの織物に、一時的に防炎性を付与するには、ホウ砂/ホウ酸 = 5/3または3/2の混合物がよい(3/2はTimborと同じ)。一時的というのは、水溶性のため、防炎性能は洗濯すると失われ、再度処理する必要がある、という意味である。したがって、この処理は、あまり洗濯する機会のない織物に限定されよう。このような防炎処理には、ホウ砂/ホウ酸、ホウ酸/燐酸アンモニア、またはホウ砂/ホウ酸/燐酸ナトリウムの処方が水洗できる。 簡単な処方例では、ホウ砂7部、ホウ酸3部、水60部がある。この場合、溶液強度(濃度)は約15%である。他の例は、ホウ砂7部、ホウ酸3部、塩化マグネシウム6水塩または尿素5部、水60部である。この場合の溶液強度は25%である。塩化マグネシウムを採用する場合は、水温は38℃以下にする。 上記推奨濃度は、過去の経験から、セルロース系の織物を処理する場合、保持される水の量は、織物の重量の約75%であることに基づく。正確を期すためには、織物を濡らす前後の重量を測定し、75%を確認する。かなりぶれるような場合は、濃度を補正する必要がある。塩化マグネシウムと尿素の両方を加えると、織物の引っ張り強度が低下するので注意する。処理による強度低下を抑えるためには、尿素の代わりに塩化マグネシウムを使用すべきである。 布地に防炎剤溶液を直接スプレーしたり、布地を溶液に浸漬して防炎処理するのは問題ない。布地が十分に濡れている場合は、布地に防炎剤溶液を振り掛けてもよい。当然ながら、処理する織物の染料は、耐水性でなければならない。サイジングされた織物を処理するには、処理液に少量の石鹸か界面活性剤を加えるとよい。 未処理状態でアイロンを掛けても問題ない織物なら、処理した織物にアイロンをかけても、防炎性能は失われないし、織物をいためることもない。アイロンをかける前に、織物を完全に乾燥すればべストである。 紙製品に難燃性を持たせるには、@八ホウ酸二ナトリウム、あるいはAホウ砂/ホウ酸/他のホウ酸塩の混合物、に他の化学薬品を加えたもので処理する。 満足な結果をもたらす第二の組成は、ホウ砂、ホウ酸、尿素を7/3/4に混合したものである。この濃度を実現するには、ホウ砂5%、ホウ酸2.1%、尿素2.9%を水に溶解し、溶液強度を10%にするのがよい。 ホウ砂、ホウ酸、尿素、塩化マグネシウムの成分をすべて含む、優れた防炎剤も得られている。塩化マグネシウムだけ含み尿素を含まない防炎剤に比較して、4成分を含む利点は、この溶液からはホウ酸マグネシウムが沈殿しにくいことである。溶液強度12%が推奨できる。この溶液を調製するには、ホウ砂5.6%、ホウ酸2.4%、尿素2.4%、塩化マグネシウム六水塩1.6%を水に溶解する。 これら3組成での塩化マグネシウムの沈殿は非常に少ないが、注意は必要である。Timborやホウ酸/ホウ砂混合物は、いかなる温度で水に溶解してもよいが、塩化マグネシウムは、38℃以上の水に溶解してはならない。同様に、完成した防炎剤溶液を連続して38℃以上に加熱してはならない。
以上
参考資料
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