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先日唐突に決定した花見。 いきなり決まっただけあって参加メンバーは例によっていつもの4人である。 とは言っても密は「密ちゃん」のままなのだが。 地上に花見に行く予定だったのだがなかなか日が取れず、もたもたしているうちに地上の桜は葉桜となってしまった。 北の方に行けばまだあっただろうが余計な遠出を嫌った巽により冥府での花見となった。 見慣れた桜。 亘理に言いくるめられたとはいえ巽は内心この花見には反対していた。 そうは言っても巽は弁当作りに素晴らしく気合を入れていたのだが。 弁当作りを手伝うと言った都筑の意見は満場一致で却下され、都筑は花見の場所取をする羽目になったのだった。 そして花見の日。 都筑は気合を入れて5時に起き、場所とりに行ったのだが・・・・・。 「誰もいないしさ・・・・。」 考えてみれば当然の事である。 桜など見慣れている冥府の住人にとっては花見など暇つぶし以外の何ものでもない。 わざわざ早起きして場所をとりに行かなくともがらがらなのである。 巽は知っていたに違いない。 都筑に弁当作りをさせないためにこの役目を言いつけたのだろう。 だがこの場合は気付かない都筑の方がどうかしている。 少し考えればわかりそうなものなのだ。 花見開始の集合時間は9時。 夜桜は密のことを考えてやめにして昼間のうちに花見をすることにしたのだ。 今の密が夜桜を怖がるのかはわからない。 だが万が一のことを考えての都筑の提案だった。 巽と亘理に反対する理由は無い。 とはいえ・・・・・。現在の時刻は5時40分である。 9時・・・・少なくとも8時30分くらいにならないと誰もこないだろう。 それまで都筑は一人でする事も無くここにいなければならない。 「・・・・・ヒマ。」 ぼんやりと空を見上げながら都筑は呟いた。 今日も天気がいい。 澄み切った青い空。 「密」と初めて会った日と同じだ。 「・・・密、どうしてるんだろう。」 この呟きは自分のパートナーである黒崎密に向けてのもの。 名前が同じなので都筑は「密」と「密ちゃん」で区別している。 ちなみに巽は「黒崎君」と「密さん」。 亘理は「坊」と「譲ちゃん」とで区別している。 密の様子がおかしくなって。 探しに行ったら密はいなくて。 俺たちの前に現れた密と名乗る女性。 密ちゃん・・・・・。 その二人は同じ身体にいる別々の人物。 同じ名前を持つ二人。 性別なんかが違うから呼び分ければ区別はできる。 でも・・・・。 密という名の持ち主は誰なんだろう・・・・・。 都筑は桜の舞う春の青い空を仰いだ。 「都筑さん・・・・?」 突然声をかけられて都筑は不意をつかれた。 慌てて視線をそちらに向けるとそこには「密」がいた。 閻魔庁にある洋服店で買った女性物の服を着て。 淡い桜色のシンプルなワンピース。 弓真さやがこの場にいたらどうなっていただろう。 「密ちゃん・・・。」 その光景にしばし見とれていたが都筑は何とか声を出すことができた。 「何でここに?集合は9時だっただろう?」 「うん・・・・どうしても桜が見たくなったの。綺麗よね・・・桜って。」 そう言うと風に舞う花びらのうちの一枚を手のひらの上に乗せて握り締めた。 「青い空に降る薄紅色の雪みたい。暖かな風に舞ってひらひらと・・・・どうしてこんなに綺麗なのかな。」 桜の花びらの舞う中でそんなことを言う密ちゃんのほうがよっぽど綺麗だよという言葉は飲み込んだ。 「桜ってね・・・なんだか落ち着くの。まるで私と桜は同じものみたいに。」 そういう密の瞳は儚げで服の色と同じ桜の中に混じって消えてしまいそうだった。 消えないで。 俺の元からいなくならないで。 ずっとずっと側にいて。 「大丈夫、消えないわよ。」 密が言った。 いつのまにか都筑の隣に腰掛けていた。 どちらの密にも備わっている精神感応能力。 その力によって都筑の不安を読み取ったのだろう。 密は都筑に向かって優しく微笑んだ。 「あれ、密さんもう来てたんですか?」 8時45分。巽と亘理が二人してやってきた。 巽の手には弁当、亘理の手には酒がある。 「ええ、目が覚めてしまったので早めに来たんです。」 「ね〜巽、おなか減ったよぉお弁当〜〜。」 「都筑さん今何時だと思ってるんですか。」 「だって俺朝ごはん食べてないもん。」 「自業自得です。」 「あの・・・・巽さん、私も食べてなくて・・・・。」 「おやそうだったんですか。ではもうお弁当にしましょうかね。たくさん作ってきたのでどんどん食べてください。」 「・・・・・巽?」 自分とは明らかに違う巽の態度に都筑は不満そうだった。 せっかくの花見に都筑の愚痴を聞かされては大変と亘理も酒を勧めた。 かくして花見は始まったのだった。 それからは花見と言うより飲み会。 当然と言えば当然なのだが。 都筑は酒をがばがば飲んで弁当をつまんで。 巽はそんな都筑の世話で大変そうである。 そんな中一人桜を見上げている密に亘理が声をかけた。 「盛りあがっとるか嬢ちゃん。あ、酒は飲めへんのか。すまんなぁ〜持ってくるんやなかったかな?」 「いっいえそんなことないです。楽しんでますよ。こういうのって初めてなので。」 密は慌てて否定した。 こんなに楽しいことは初めて。 密は確かに全身でそう言っている。 「ほんならええんやけどな。嬢ちゃん、桜は好きなんか?」 「ええ大好きです。桜って私自身のような気がするんですよね。変ですけど・・・綺麗で儚くって本当に。」 「そっか、ほんまに桜が好きなんやな。なんか思い出とかあるんか?」 「いえ・・・・そういうのは・・・・・。私あんまり記憶がないんで。いくつか記憶はありますけどいずれも桜とは関係ありませんから。」 「なるほど・・・・な。」 「・・・・?」 「あ、なんでもないんや。気にせんといて。さあ!盛り上がろうで〜〜!!!」 それからしばらく花見ならぬ桜の下での宴会は続いた。 都筑はひとしきり騒いでばててしまい亘理も飲みすぎでダウン。 巽と密の二人で片付けをする羽目になった。 「すみませんね密さん。」 「いえ、いいんです。お花見がしたいって言ったのは私ですし。」 密はてきぱきと散らかったものを集めていた。 巽は亘理に近づくと耳元で囁いた。 「亘理さん・・・・知りたいことがある・・・・と言っていましたよね?これだけの騒ぎで収穫ゼロというのは許しませんよ。」 「なんやぁ?巽もうるさいなぁ。安心しーちゃあんと収穫はあったで。」 「本当ですか?」 「ああ、でも明日な。今日はもう楽しかったからええやろ。明日召喚課でじっくり話すさかい。」 そう言うと亘理はさっきまでの酔っ払いの顔から真面目な顔に変わった。 「嬢ちゃんに関すること・・・・いくつかわかったことがあるからな。」 亘理が見上げた空には相変わらず桜が風に乗って舞っていた。 戻る 次へ |