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日が完全に姿を隠すと赤く染まった空が漆黒の闇に包まれた。 ぽつぽつと外灯に明かりがついていく。 夜になっても街中はまだ明るかった。 賑わいを見せる町の一角に都筑と密はいた。 これからあかりのいる病院に行ってあかりの召喚をするのだ。 二人の表情はどこか暗かった。 夜でも明るい町の中、暗い路地に座り込んでいる。 霊体になっているので道行く人々も二人には気付かない。 魂の召喚に行くのはいつも気分のよいものではない。 だが今回はかなり気分が悪かった。 あかりは自分が既に死んだ存在だと知っている。 だからこそ花占いであんな事を占っていたのだから。 もしかしたら都筑と密が迎えに来た事すら気付いているのかもしれない。 召喚自体はやりやすくなる。 だが自分の死に気付いてまであかりがこの世に残っている理由がさっぱりわからない。 なぜあかりはこの世にとどまっているのか。 そして気になるのはあかりの夢。 よく当たると言っていた。 事実あかりは夢で自分の死を知ったという。 その夢であかりが自分の死を見たというのならそれはもう正夢ではない。 完全なる予知夢である。 そしてあかりが話してくれたあの少女の夢・・・・。 都筑は様々な疑問が浮かぶ中、時計を見た。 「そろそろ行こうか。」 密にそう言って都筑は立ち上がり、歩き始めた。 まっすぐあかりの病院に向かって・・・・。 定時を過ぎた召喚課にはもうほとんど人気がなかった。 だが相変わらず課長室の明かりは点いたままだった。 そして相変わらずそこには二人の姿があった。 二人ともほとんど今日は自分の仕事をせずにここにこもって話し込んでいた。 今では課長室に重い沈黙が流れている。 二人の出した結論、「密ちゃん」の正体。もちろんそれは仮説ではある。 だがあれからどんなに考えをめぐらせてもその仮説以上につじつまのあう話は思いつかなかった。 だからこれが一日かけて出した二人の結論。 密ちゃん=密の姉。 密は姉がいるなんて一言もいっていなかった。 もちろん、密は自分からそんなことを話すようなことはしない。 死神になったときの密のデータの中にもそんな記述はない。 だがそれも二人の出した仮説ならば全てつじつまが合う。 密の姉が社会的に存在していなければ。 「これからどうするんや?巽。」 亘理が長く続いた沈黙を破った。 視線の先の巽はずっと俯いている。 だが亘理の声に顔をゆっくりと上げた。 「どうする・・・とは?」 「せやから嬢ちゃんのことや。これからどうするんや?」 「続けてもらうつもりですよ。このまま都筑さんのパートナーをね。」 「本気か?」 「もちろんです。」 巽ははっきりとした口調で言った。 「密さんの正体が何であれ、仕事にはなるべく支障をきたしてはいけません。もちろん黒崎君にちゃんと戻れるように対策は練るつもりです。でもかなり時間がかかるでしょう。その間セカンドを都筑さん一人に任せるわけには行きませんし、セカンドの仕事を断るわけにもいきませんから。」 巽の返答は鬼の課長秘書ならではだった。 確かに現状維持しか手はないだろう。 対策を練るにしても不確定要素がありすぎてなかなか実行に移すまでにはいたりそうもない。 今のままでいるしか方法はない。 何もできることはない。 二人の仮説通りであるのなら、密の身体には二つの魂がある。 今までは密の魂しか表に出てこなかったが何かのきっかけでもう一つの密の姉の魂が出てきてしまった。 亘理はその原因を突き止めようと思った。 原因がわかれば何か突破口が見つかるかもしれない。 そしてそれと同時に調べなければならないこともある。 密の姉の存在の事だ。 二人の考えは現状から見た単なる仮説に過ぎない。 だから密の姉が本当に存在していたのか調べる必要がある。 だが一体どうやって調べたらいいのかがわからない。 鬼籍に名が載らなかったことから閻魔庁でいくら調べてもわからないだろうことは予想がつく。 ということは現地調査しか手はない。 そう、密の実家に行って調べるしかないのだ。 だが今すぐには無理だった。 いずれ行かなければならないだろうがもしかしたら密の事は一時的なものかもしれないのでしばらく様子を見ようと決めていた。 いつまで経っても解決しない場合の最終手段としてこれはとっておかなくてはならない。 「坊・・・・はよ帰ってきてくれや・・・。」 亘理の呟きが部屋の中に響いた。 あかりは病室のベッドにいた。 夜だというのに明かりも点けていない。 個室なので誰にも迷惑はかからない。 窓から見つめる世界には病院の中庭があるが今は暗くて何も見えない。 向こう側の建物のほとんどの部屋には明かりが点いていた。 その光を見つめたままあかりは待っていた。 確証はなかったが誰かが来る事がわかっていた。 するとドアは動いていないのに誰かが部屋に入ってくる気配がした。 「やっぱりお姉ちゃんたちだったんだね。」 あかりはそう言って振り向いた。 そこには都筑と密が立っている。 「私のお迎えに来たんでしょ?いいよ、もうわかってるから。早く行こう?」 「あかりちゃん・・・その前に少し話があるんだけどいいかな?」 「え・・・?」 都筑の言葉にあかりだけでなく密も驚いた。 あかりの召喚に来ただけだからそんな必要はない。 密はあかりを召喚してすぐに帰るものだと思っていたのだった。 「君の夢についてなんだけど。」 都筑は自分自身どうしてこの話をしようと思ったのかよくわからなかった。 だが召喚する前にどうしても聞いておかなくてはならないと思っていた。 「さっきさ、女の子の夢の話してくれたよね。」 「あの水辺の女の子?」 「そう、その夢について聞きたいんだ。」 都筑の瞳があかりを見て、あかりの瞳も都筑を見た。 あかりの夢の話など知らない密は驚き、困惑して二人を見ていた。 そして都筑が口を開いた。 「あかりちゃんが夢で見た女の子ってさ・・・この密ちゃんじゃないかな?」 あかりも密も驚いて都筑を見た。 その言葉の意味が理解できていなかった。 だがその言葉に一番驚いていたのは都筑自身だった。 どうしてそんなことを言ったのか自分にもわからなかった。 沈黙と漆黒の闇が三人を包んでいた。 一人の少女と一人の少年。 生まれ持った二人の運命。 声なき声を聞いたとき、 運命は動き出す。 誰にも届かない少女の声を 少年が聞いた日に。 めぐりめぐる花の季節。 花びらが空を舞う。 戻る 次へ |