もう相づちさえ打たない妻への独り言
なあ、洋子。空の上から見えるか? 君の繁殖犬がやっとファンシーの表紙を飾ったよ。SEA
& RIVER 犬舎が母娘三代続いている正真正銘、君の自家繁殖犬だ。表紙犬として見劣りがする犬だってことは十分わかっているよ。でもな、君がコリークラブに生き、そして燃え尽きた事を、多くの会員に時々思い出してもらうために掲載をお願いしたんだよ。いつものようにシルちゃんと呼んでくれ。きっと他の犬と一緒に空を見てしっぽ振るよ。あ、お母さんの声だ。今どこにいるの?って。
君が倒れた後、長崎支部の外科医下田先生と眼科医今村先生がすぐに心臓マッサージと人工呼吸を一生懸命やって下さったのだよ。私は展覧会は絶対に続けて下さいとお願いして救急車に乗ったよ。まさか君が死ぬとは考えもしたかったからな。お通夜や葬式には遠方から大勢の会員が駆けつけてくれたよ。お花や電報等もたくさん頂いたよ。悲しい中にも人の心の温かさが嬉しかったよ。コリークラブに入って本当に良かったよな。楽しかったよな。友達もたくさんできたよな。来世で再び巡り会えたら、また結婚しコリークラブに入って楽しもうな。
私が君にしてやれる支部長として最後の仕事がある。支部の皆んなが君の追悼大会を兼ねた展覧会をやってくれるらしい。ありがたい事だね。数は少ないとは思うが、集まってくれる人や犬達に感謝しような。今まではクラブのためと頑張ってきたが、今回だけは君のために頑張るよ。君の供養のため、我が犬舎から出せる犬はすべて出すよ。君が命を与えた子供達だからね。
今、私は人生のかど番を迎えている。今後どうなるかは自分にもわからない。ただコリークラブだけは今までどおりに続けるよ。時々ブレーキをかけながら空から見守ってくれな。
君と知り合って29年間、本当にお世話にたった。私みたいなわがままな男に尽くしてくれてありがとう。息子を素直な優しい青年に育ててくれてありがとう。君に迷惑ばっかり掛けたが私の涙で許してもらいたい。君には悪いが私はこの世でやりたい事がまだまだいっぱいあるんだ。しばらくはそちらに行けないので、君が育て愛し、そして先に見送った犬たちとゆっくり遊びながら気長に待っててくれ。もう、私の面倒は見たくていいから。もう苦労したくていいから。合掌
BREEDER 荒川洋子 享年49歳 (夫
荒川喜英 記)
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