国書刊行会の世界探偵小説全集も完結まで残り僅か。
本書はイギリス女流作家マージェリー・アリンガムの紳士探偵アルバート・キャンピオンものの中期の作。
キャンピオンの妹ヴァルはファッション・デザイナーとして一流だが、顧客の舞台女優ジョージア・ウェルズに恋人の航空機会社社長アラン・デルを奪われようとしていた。キャンピオンはジョージアの以前の婚約者の三年前の失踪事件を調査していたが、ちょうどその男の自殺と思われる白骨死体を発見したところだった。
シーザーズ・コートという上流階級の娯楽施設のオープンに伴っていろいろな出来事が水面下で起こってざわついている状況で、キャンピオンは万一の場合のお目付け役として雇われる。
果たしてジョージアの現在の夫であるレイモンド・ラミリーズがアフリカへの飛行壮行式典の最中に変死した。
なかなか目に見える事件が起こらない。上記の事件もキャンピオンの当惑をよそに自然死と診断される。
キャンピオンはこの死を事件として問題にしようとするが、その瞬間どうあがいてもそれが事件にならないように状況が仕向けられていること、何よりも彼自身がそのために雇われていることを悟って愕然とする。
真犯人の方法とはそれぞれの人間が持っている強みと弱みとを利用するものと説明されている。一種の操りである。難しいテーマであるが、ある程度その描写に成功している。ただ操りを行なうためには綿密に人間関係を設定しないといけないが、そのために長くなって、しかも明確な事件が中々起こらないというのが作品としての弱点と言える。
アリンガムは、以前読んだ数作からして普通の本格派じゃないだろうと思っていたが、こういうネタを扱っていてもやっぱりそうだった。
かなりいいと思うのだが、もっとわかりやすいはったりがあった方が作品全体が映えたと思う。