芦辺拓『赤死病の館の殺人』

芦辺拓『赤死病の館の殺人』



 表題作の中編はポオの「赤死病の仮面」に触発されたもの。七つの色に内装された部屋を持つ城で酒宴に耽るプロスペロ公とその一統はどこからともなく現れ出でた不吉な仮装の男のために赤死病に魅入られる。 これを現代ミステリーに移植しようという試みで、 作中にはなんと江戸川乱歩による訳文が挿入されている。

 やりたいことはわかるし、赤死病を現代のとあるものになぞらえる着想はよいとは思う。 だが、私はこの話はどうも気に入らない。
 (以下、*の間をネタばれ防止のため反転)
 この作者のものにわりと多いのだが、*犯人側を集団にしてしまうことがある。*私はこれには拒否感が強い。
 なぜなら殺人というのは*個人対個人のある種の究極的な人間関係だと思うからだ。敵方が集団だとその凄みが薄れ、一番大事なミステリーの寓話性*が低下してしまう。
 もうひとつこの手のものだと*相手が数にまかせて何でもできるので安易な感じがつきまとうということもあるが、*こちらはどちらかというと付属的な理由である。
 ただ、ミステリーの可能性を探る試みとしての否定まではしない。 例えば、泡坂妻夫の*「紳士の園」*なんて超絶の傑作に仕上がっているのだから。
 芦辺拓がなおもこういう趣向に拘るのなら私をも有無を言わさずねじ伏せるものを見せてほしい。

 その他三編はよくまとまった本格短編。 「密室の鬼」は、被害者の博士のそばにロボットがいたという奇妙な密室の状況をうまく処理していて感心させられる。



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