新作が出たようなのでずっと積ん読していたのを読んでみる。作者は『青春デンデケデケデケ』で直木賞受賞。本書の原本は文藝春秋1996年4月だが、創元推理文庫に実に収まりがいい本である。
語り手はあまり売れていない作家。八王子の辺鄙なところで同じ香川県出身の妻と二人で暮らしている。ゆったりと時が流れる平穏無事な生活。
ところが彼の友だちが相談ごとを持ち込むと、話を聞いた妻はおいしい料理を出しながら、たちまちのうちに真相を見抜いてしまう。事件は大小さまざま。奥さんの家出から、友人の刑事が持ち込む殺人事件まで。彼女には謎を解き明かす不思議な力があるのか。庭に生えているオリーブの木に来るミミズクにえさをあげる彼女がいつしか知恵の女神アテナのようにも見える。
奥さんの本名がわからないところは安楽椅子探偵としての系譜に則っている。
ミステリーとして格別優れているわけではないが独特の味がある。キャラクターがファンタジーぽいところがあるが、事件においてもそう。この書き方語り口でないとばらばらに壊れてしまいそうなものが見事なバランスで成立している。
ミステリーの本職の作家が書いたわけでないことも含めて、小沼丹のニシ・アズマ先生ものにちょっと似ているかも。