芦原すなお『嫁洗い池』

芦原すなお『嫁洗い池』



 元版は1998年、文藝春秋より。『ミミズクとオリーブ』に次ぐ一風変った安楽椅子探偵譚第二弾。

 語り手は売れない作家。香川県出身の彼は八王子郊外に同郷出身の奥さんとともに隠棲している。その奥さんが実に料理が上手だが、その他にも不可解な謎を解くという特技を持つ。これも同郷出身の悪友の河田は現職の刑事だが、手に余る事件があると奥さんの意見を聞くために手土産を持って尋ねてくる。 奥さんは自分では血生臭い現場など見たくないので、主人公を代わりに使いに寄越して現場や関係者の様子を見聞きさせ、その話を聞いて最終的な解決に持ち込む。こういう基本設定。
 奥さんのつくる美味しそうな郷土料理とか、主人公と河田の漫才のような掛け合いとかが読みどころである。

 何と言うか、不思議な作風である。ミステリーとして見ると粗が多いのだがそれでも成り立っている。
 いくつかの作品の犯人は、犯行が見破られてもいいとの開き直りの上で行動しているが、彼らの置かれた状況だとそれもありだろうという説得力も感じられる。

 事件の構図が奇妙な形を成すこともある。「ホームカミング」で、屋敷の主人の急死に河田が不審を感じた理由の一つに、発見したお手伝いさんが誰かの視線を感じたからだというのがあるが、真相が割れるとかなり驚かされる。
 「シンデレラの花」では、失踪した男の解決に途方もない手段を持ち出すが、まさかこれはというのを抜け抜けとやってしまい、それなのに何となく納得させられてしまう。

 表題作「嫁洗い池」では、ずっと自分が人を殺すのでないかと恐れていた男が、実の弟を殺したと言って自殺を図った。妄想の描写として、幼い頃に嫁洗い池という場所で見た光景が陰惨な印象を与えるが、事件自体が解決してもこのことは解決しない。 真相はこんなのありかというものであり、それも相まって肝心なところを外されて妙に落ち着きが悪い。

 どうも形容しがたいが、作風自体が奇妙な味になりかかっている感もある。


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