泡坂妻夫直木賞受賞記念レビュウ

泡坂妻夫直木賞受賞記念レビュウ


 では、早速いってみましょう。今回はネタが三本です。

【1】泡坂妻夫直木賞受賞記念レビュウ

 泡坂さんは侯補になること五回目にしてついに今年度の第103回直木賞を受賞されました。受賞作は『蔭桔梗』(新)。まだ読んでいません。
 今年はもう珍しくも氏の本が三冊も出ています。一つは『黒き舞楽』(白水社・<物語の王国>!?)。これは評判がかなり悪かったけど、私には面白かった。テーマは人形。私は人形が好きなんだよ、ガジェットとして。一種の名状しがたい雰囲気に人形はぴたりとはまる。「人でなしの恋」『睡り人形』といった過去の名作を連想させるとこもよい。それにしても二十三才で三人も奥さんをもらった主人公ときたひにゃ……。
 もう一つは『毒薬の輪舞』(講)。これもまだですが、シリーズ前作『死者の輪舞』(講)を上回るというので期待しています。

 最近文庫化された二冊について。『妖盗S79号」(文)。怪盗ものの連作です。いかに盗むかのテクニックもよいが、私は二宮刑事のファンになってしまいました。S79号を追っかける東郷鬼警部と相続税とに悩まされながらも結構如才ない人物。彼のとぼけた味わいと作者らしい超論理が抜群な「檜毛寺の観音像」がベスト。
 『猫女』(双)。化猫物。泡坂としては凡作。だが、数年前、福田君Gの実家に二時間ドラマのロケ隊がやってきて、窯にまぎれこんだ猫が焼死する場面を撮っていったと聞いたが、これが原作だろう。彼の家は何屋だ!

 折角ですから私の泡坂ベスト5を挙げてみましょう。
 @<亜愛一郎>シリーズ(角)
 <幻影城>に始まるこのシリーズは日本のチェスタトンの面目躍如。亜のキャラクターも素敵。一時期、亜のマネで白目を剥き出すのが癖になってしまった。
 A『湖底のまつり』(角、双)
 文学的香気溢れる騙し絵小説。ラヴストーリィとしても読める。そう読んでいいかどうかは知らないが。
 B『煙の殺意』(講)
 「椛山訪雪図」、「紳士の園」など驚愕の珠玉短編集。80年代は泡坂・連城の強力な短編集が読めて楽しかったなあ。90年代には北村薫がいるか!?
 C『妖女のねむり』(新)
 ここに提出されたのは並の犯罪など足元にも寄せつけぬ輪廻転生の壮大な謎。幕切れも哀切きわまりない。後でよく考えたらカーの某傑作そっくりなことに気づいたが、好きなものは好きなのだ。
 D『しあわせの書』(新)
 <ヨギ・ガンジー>シリーズ二作目の初長編。話としては並だが、趣向にはまいった。こんなこと、考えた人はいても、やった人はなかったろうな。それを敢えてやっちゃう作者が好きだ。おかげでこの本は『ドグラ・マグラ』に負けず劣らずの奇書となった。

 自宅に押しかけた某大学ミス研メンバーに得意の奇術を披露されながらの泡坂先生、問題発言。「直木賞取ったら君達なんかポイだよ、もう会ってあげないよ」(<EQ>'90.1)そんなことおっしやらずにこれからも楽しい作品をお願いします。



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