前回の拾遺を。
泡坂さんが直木賞をとったのは候補になること六回目にしてでした。どーもすみません。
泡坂先生の直木賞受賞作『蔭桔梗』(新)は少々期待はずれでした。職人の世界の抒情も悪くはないけど、どちらかというと連城三紀彦の味に近いみたい。結末が超自然的な話が二つもあるのは推理作家としての堕落である。あれほど異様でないにしろ連城の『少女』(光)を思わせる。直木賞受賞して流行作家となった最近の連城ときたら短編には昔ほどのキレはないし、長編は元来さほど得手ではない。こないだ文庫化された『花堕ちる』(上・下)(角)はただ長いだけなのでまいった。泡坂さんにはこうなって欲しくないものである。
『毒薬の輪舞』(講)は『死者の輪舞』に続く海方惣内刑事の功名談。泡坂の探偵として警察官は海方しかいないが、有能さも随一である。下品な外見と口から出任せでごまかしながら難事件を解決していくその手腕。私にとっては円環殺人リレーという大業の『死老の−』の方が面白かったが、『毒薬の−』は章題全てが毒薬の名前なので薬学部出身者にお勧め、かもしれない。