オール・タイム・ベスト書評
鮎川哲也
(14)『黒いトランク』
東京と北九州の間を死体詰めのトランクが行き来する。クロフツの『樽』を思わされる話ですが、こちらの方が数段勝っております。
この謎に挑戦するのは鬼貫(おにつら)警部(別に鬼警部ではありません)。この人がなかなか渋いんですよね。これもクロフツの比ではありません。
堅実でけれん味のない作風は好感が持てないこともないのですが……。四枚の時刻表をじいっと眺めていたら、トリックの七割方が簡単にわかってしまいました。やはりけれん味大好きの私としてはあまり高くは買えません。よく組み立てられてはいるんだがなあ。
65点。但し容疑者の少なさ85点。
たった二人。あと三人も増やしてみんな九州旅行させたらごちゃごちゃで絶対わからなくなるだろうな。
(22)『リラ荘殺人事件』
鮎川哲也というと、アリバイ崩しの専門家、鬼貫警部が有名ですが、もう一人忘れちゃいけないのが、この作品でも活躍する密室破りの天才、星影竜三です。
私は時刻表物は嫌いです。なぜならメイン・トリックは単純明快、これに限るからです。真相を知りあらゆる疑問が氷解してゆくカタルシス。こういう感動が煩雑なアリバイトリックで味わえますか。そりゃあ、よう考えついたなと感心はするかもしれないけど。それに私には時刻表をじっくり読む根気なぞありません。
というわけで私にとっては、名作と言われる『黒いトランク』よりこちらの方がずっと気に入りました。
大学寮 −川渡セミナーセンターみたいな所で連続殺人事件が起こるという話です(生憎酒壜での撲殺はありません)。こういうパターンの話では、当然ながら最後まで生き残ったものの内に犯人がいるわけですが、なかなか趣向が効いていて、一筋縄ではいきません。余計な飾りは削り落として堂々と読者に挑んできます。
78点。但しゲーム性86点。
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