バークリー,A『レイトン・コートの謎』

バークリー,A『レイトン・コートの謎』


 ついに四分の三世紀もたって日本でもようやく刊行された鬼才バークリーの処女長編。彼の探偵役ロジャー・シェリンガムの初登場作でもある。
 バークリーがミステリーを書くようになった切っ掛けは、探偵小説好きなお父さんに奇矯な人物でない普通の人間が登場し、なおかつフェアプレイを心がけた作品を読ませたいということだそうで、その献辞も収録されている。なかなか殊勝な心がけである。しかし、これを読んだお父さんがなんと思ったか今に伝わっていないのは実に残念。結論から言えば、バークリーは初めからバークリーであった。

 ある夏の朝、レイトン・コートの主人スタンワース氏の頭を打ち抜かれた死体が書斎で発見された。状況から警察はこれを自殺と判断したようだった。だが居合わせた作家のロジャー・シェリンガムはこの事件を殺人だと見做し、友人アレック・グリアスンをワトスン役に任命して自らが名探偵役をかって出る。
 何かと空想力をフル回転させ暴走しがちなシェリンガム。その彼を通常のワトスン役のように誉めそやすことなどせず、ひたすら水をかける側に回りつづけるアレック。当時としては異色のコンビであったろう。
 失敗する探偵というロジャー・シェリンガムの宿命は出発点から定まっていたようで、本書でも何度も滑稽な思い違いをして笑わせてくれる。

 だが、確かに本作はユーモアに包まれているが、後年の苦さの片鱗もある。 最後で明かされた犯人の設定がまずそれ。 そしてこの話が初っ端を切ったわけだが、*有益な殺人というものがありうるか*という命題はこれ以後何度でも繰り返されていく。
 よいものを読ませてもらった。バークリーがこれだけ読めるようになって本当に嬉しい。


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