バークリーの第四長編。
バークリーのロジャー・シェリンガムを探偵役とする作品群は、まず中期の傑作(『毒入りチョコレート事件』(1929)、『第二の銃声』(1930))から紹介が始まって、最終作 Panic Party を残して、デビュー作から初期三作(『レイトン・コートの謎』(1925)、『ウイッチフォード毒殺事件』(1926)、『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』(1927))がこのたび翻訳された。本作は初期のユーモア味がある作品と、中期のミステリー史に残る超傑作との間をつなぐものである。
例によって探偵の手腕を発揮してみたいと思ってたロジャーの元に読者から手紙が届く。ロンドンで消息を絶った娘の行方を探してほしいというものだったが、少し調べるとコーラスガールになっていたその娘は、自分の絹のストッキングで首を吊って死んでいたことがわかった。ところが、ロジャーは同じような事件がいくつも続いたことに気づく。これは殺人に違いない。多くの女性の死の裏には憎むべき連続殺人犯が存在するのだ。
事件の性質が陰惨で深刻なものであるため、ロジャーの行動にも前三作のような軽々しいものは見られない。モーズビー警部をはじめとする警察にも協力し、被害者の親族でチームをつくり、あらゆる手段で犯人に迫ろうとする。
これまた非常に書評が書きにくい作品である。何を書いてもネタバレになりかねない。
姿なき殺人犯が跳梁して被害者が無差別に殺されていく筋立てはミステリーの一大テーマであるが、バークリーも手掛けていたとは知らなかった。しかもかなり初期の作例となる。
物語の後半でシェリンガムは抜き差しならぬ羽目に陥ってしまう。どうしても犯人とは思われない人物を警察が逮捕する前にその潔白を証明しなければならなくなるのだ。彼の嵌った立場はあまりにも危うく、真犯人を見つけるしか助ける手立てはないのだが、その見当をつけることもできない。
そこで乾坤一擲の大芝居。なかなか驚かされた。犯人の正体については、*クリスティ『ABC殺人事件』*(1935)の前にこれをやっていたとは、脱帽するしかない。
ただ、犯人の正体を暴くための罠についてはあまり感心しない。著者の力量ならもっとスマートなこともできたのでは。
ロジャー・シェリンガム登場作もあと一作まで漕ぎつけたとは感慨深いものがある。いつか全作品を通しで読んでみたいものだ。
[2004.06.07]
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