ベロウ,N『魔王の足跡』

ベロウ,N『魔王の足跡』


 本邦初紹介の不可能犯罪派。イギリス人で生涯の大部分をオーストラリアやニュージーランドで過ごし、詳しい経歴も知られていない。生涯で残した21冊の長編の多くで密室殺人や人間消失といった不可能犯罪を扱っているという。
 本書はこんな話だ。

 ある雪の朝、ウィンチ州の田舎町ウィンチャムで奇怪な事件が起こる。雪の上に突然現れた蹄を持つ足跡は街中を奇怪に跳ね回っていた。体重がないかのように生垣の上に形跡を残し、丘の上の屋敷の屋根で何かの儀式のように円形に歩き回る。その傍若無人の振る舞いはまるで悪魔が地上に降臨したかのように見えた。 警察とともに多くの野次馬がその足跡を追跡したが、 野原の真ん中のオークの木で切れていた。そこでは評判の悪い実業家が首を吊っていて、雪の状況からは彼は奇怪な足跡の持ち主に追われて命を絶ったかのようにも思えた。

 事件の不可能性は文句のつけようがない。心霊学的な解釈がなされ、さらにその一世紀前にあった実例が「タイムズ」の引用で示される。そして第二の事件へ。あまりにも状況が奇怪なので背中を振り向きたくなるような怖さがある。
 ただ大風呂敷を広げて見せてくれただけに、畳まれるといくら畳み方が見事であってもどうしてもがっかりしてしまう。
 犯人の設定もそこそこは意外。でもシリーズキャラクターを含めて登場人物にあまり個性を感じないので、だから何という感じが付きまとう。

 あまりにも手品に偏っているので、古典としてはいいが、現代の目で読むとつらい。


→冒頭
→ベロウ,N目次
→読書日記
→表紙