会員の私が言うのもなんだが、「SR」のベストはえらく順当だと思う(別表参照)。海外の方はよくわからんからおいとくとしても、国内、乱歩賞の『エノケン』、土屋隆夫の新作、みんな低い。有名OB(現役会員?)の紀田先生の作品も38位とまあそこそこの位置です(<クイーンダム>編集長S氏曰く「酷使官、小説書いたらただの人」)。
「SRの会」で人気のある作家というと、国内では泡坂妻夫、岡嶋二人、東野圭吾、それに故・天藤真といったところですか。それから「SR」だけで人気のある作家としては中町信がいて最近の乱作振りがギャグのネタになっています。海外ではJ・ディクスン・カー、この人に尽きる。私は<探偵小説>6号つくる際にカーを20冊読んどいてほんとに良かったと思います。
え−、去年の国内ベスト10の内訳は、東京創元社4冊、早川書房2冊というわけで、平成元年は創元と早川の年だったのだ。
1位 山口雅也『生ける屍の死』
そんなに凄い傑作という気はしなかったけどなあ。<マンスリー>の前の号に、本書は『黒死館殺人事件』『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』に続く第四の奇書だ!という内容の檄文が載ったけど、そのためかもしれない。
2位 風間一輝『男たちは北へ』
作者の正体はあのアル中イラストレーターの桜井一。内容はアル中気味の中年男が自転車にのってひたすら北へ向かうというだけの冒険小説だそうだ。これは凄い評判が良かったので去年のうちに読んどくべきだったなあ。
3位 原寮、5位 佐々木譲は守備範囲外なのでパス。
4位 北村薫『空飛ぶ馬』
これもそんなに凄いとは思わなかったけど。今年の『夜の蝉』と通しで私が一番面白かったのは(ミステリ的に)最初の「織部の霊」。円紫さんの推理が最も卓抜。加茂先生の本の扱いやら、解決に古書目録が一役かうとこもよい。それ以降はどうということのない話ばかり、という気もしないことはない。人気が出たのはやはり文体の魅力だろうか。それとも主人公が可愛いからか。三人組の中では正ちゃんに人気が集まったようだが。新井素子がSF界に現れたときのようなものか、などと言ったら、ミステリファンから石ぶつけられるか。
本の名前がいっぱい出てくるのはよい。なんか、ミステリばかりでなく、まともな本が読みたくなってくる。これに影響されたためではないけど、私は日本の反自然主義文学を少しずつ読み始めました。それから主人公があんどーさんと知り合う切掛けになったソログープ、どっかで聞いた名だと思ったら、中井英夫<とらんぷ譚>のジョーカー「影の狩人」(『真珠母の匣』(講)収録)に言及がありました。
『夜の蝉』は何というか、理解を越えた。私は一人っ子なので兄弟姉妹というものにあこがれを持っていた。もし兄弟があったら、もっと社交的な性格になったんじゃないかと思わないでもない。しかし、姉妹というのもたいへんなものかもしれない。確かに一生切れない関係なんだから。
宮部みゆきはベストテンに6位『魔術はささやく』(新)、9位『パーフェクト・ブルー』(創)と二作が入っています。『魔術は−』は、少年期の純粋さ、危うさが瑞々しく書かれていることに感動、と同時にそれに感動した自分が年食ったなあと思ってしまった。トリックはめちゃめちゃ古く、主人公が錠前破りの特技を持ってるとこなど少年探偵団みたいだが、読ませる。それにしても『魔術は−』の冒頭の女性二人の死にざまやら『パーフェクト−』の少年が焼き捨てられる場面とか、女性ながら(女性だから?)陰惨な描写のできる人だ。なお、東京創元社のMさんは『魔術は−』を隅から隅まで探したけど、『パーフェクト−』のことを一言も触れていないのでひどく怒ったそうです。
8位 有栖川有栖『狐島パズル』
8点つけた3作のうちでどれか、と言われたらやっぱりこれですね。犯人が割と簡単にわかるきらいはあるが。有馬麻里亜嬢はSR大賞助演女優賞獲得。
13位 島田荘司『奇想、天を動かす』
ベストテンに入って欲しかったけどまあしょうがないか。いちおう私のレビュウが<SR MONTHLY>249号に載っています。時期外しちゃったし、浮いてるような気もしないではないが。「SR」へ入ってから、何か文章が書きにくくなった。今まで<探偵小説>等に書いてきた文章は、何も知らん人に語りかける文章で、何でも知ってる人達向けに書こうとするとペンが疎むんです。まあ、毎号短いのを書いて少しずつ慣れていこうとは思っていますが。
『幽体離脱殺人事件』はワースト1の63位。まあ当然ね。
20位 法月綸太郎『誰彼』は前回書いたとおり。坂中君はこの作を非常に買っているそうだ。彼は綾辻の初期三作も面白いと言っている。
21位 折原一『倒錯のロンド』
面白いことは面白いけど、前作『死角』同様、登場人物が全員アレというのはちょっとね。特に結末でお母さんがアレしちゃうというのはそっくりじゃないか。(例会で本当にこういう会話して意志の疎通ができた)なお、この倒錯三部作(まだ一作書かれてない)には共通する人物、場所が登場するそうだ。あのアパートがそれじゃないかと思うんですが。
まだネタはあるんですけどさすがにくたびれたのでこの辺にしときます。この文筆のタイトル「SRの宮沢です」というのはどうでしょうか。これは勿論、岸田森の名セリフ(?)「SRIの牧です」に由来します。ところで<霧笛>の由来はどこからでしょうか。