J.L.ボルヘス『伝奇集』(岩波文庫)
Jorge Luis Borges FICCIONES
本書が文庫本で読める初めてのボルヘスということで買って読んでみました。なかなかのものでした。
どこか懐かしい味わいがある。ほかで読んだ覚えがあるような話もある。それこそが寓話の味なのだろうか。
例えば「バベルの図書館」。六角形の部屋が無限に連なる大図書館。二十五個の記号の可能な組み合わせ全てで記されたあらゆる本がそこには所蔵されている。司書達はさまよう。永遠の真実が記された鍵となる一冊を求めて。だが、人間というはかない存在は図書館の広大さにただ打ち据えられるばかり。
これと全く同じネタのSF短編を僕は読んだことがあります。ハヤカワSF全集の<世界のSF 古典編>にあった。でも、それがこんな哲学的幻想的な短編に昇華されてしまうとは。
「バベルの図書館」は『薔薇の名前』にももろに影響しているのがよくわかる。『薔薇の名前』の闇の図書館長こそホイヘ・ボルヘスの戯画なのだ。
書物幻想はとっても多いがその中で特に探偵趣味も横溢している。名前を挙げられた作家は、ウイルキー・コリンズ,アガサ・クリスティー夫人,チェスタートン,ドロシー・L・セイヤーズ,エラリィ・クイーン。
「死とコンパス」は狭義の意味でもミステリーの範疇に収まる。ただ、この事件の犯人は憎むべき悪党なのか、それとも神自身なのか。
ボルヘスにはなんと推理小説の長編もあるそうだ。どんな感じのものなのだろうか。ぜひ読んでみたい。