『ローラ殺人事件』を読んでいないので、著者のものはこれが初めて。
喉頭癌の手術を受け声を失った実業家は全ての事業から手を引いて、西海岸の別荘地にこもりきりになった。年若い妻は今の状況にやりきれない気持ちを持ちながらも夫を愛し、それでも当地で知り合った若い医師に惹かれる。長期の休暇と称してやってきた前妻の娘は実父に何かと精力的だった昔を思い出させて苛立たせる。その夫の弁護士は失業状態で、いい職を望みながらもどうにも実現しそうもない。
これだけの登場人物の感情と行動がみっちりと書き込まれていく。焦点となるのは実業家の記す日記。いつしか内容は愛している妻に対する罵詈雑言となっていく。
事件が起こるのはやっと中盤。そのあとも坦々とした描写は変わらない。
文章といい内容といい、じめじめした状態が続く。ミステリを読むのはカタルシスを求めて。途中がどんなであれ、最後には何かがあると期待して。それがポジティブなものだろうとネガティブなものだろうと。
だがこの作ではそれが全然得られなかった。やっぱりじめじめしたままで終わってしまう。
普通小説とわきまえて読めばよかったのかもしれない。まあ、私には合わなかったということで。